第13話 見えない取引
調査を続けるうちに、悠真は一つの共通点に気づいた。
問題の会社へ送金していた企業は、どれも直接的な取引関係を公表していない。
それなのに、毎月ほぼ同じ時期に資金が動いていた。
悠真は送金日を一覧にまとめた。
「この日付……」
ある月だけ、送金が一斉に止まっている。
そして、その翌月から別の会社を経由して、同じような資金の流れが再開していた。
「水原さん、確認してもらえますか?」
「どうしました?」
「送金先が変わった時期が、ほぼ同じなんです」
水原は画面を見つめた。
「本当ですね。会社が変わっているのに、送金の周期は変わっていない」
「偶然でしょうか?」
「可能性はあります。ただ、これだけでは判断できません」
水原は別の資料を開いた。
「この取引に関係する企業の一部は、すでに事業を停止しています」
「それなのに、送金記録が残っているんですか?」
「そうです。しかも、停止する直前まで資金が動いています」
悠真は不思議に思った。
会社がなくなる前に、別の会社へ資金の流れを移しているようにも見える。
「何かを隠しているんでしょうか」
水原はすぐには答えなかった。
「可能性はあります。けれど、今は推測でしかありません」
彼女は確認した内容を記録し、久世へ報告した。
⸻
その夜。
久世は榊と真壁に調査結果を共有していた。
「送金の周期が一致している。会社を変えながら、同じ流れを維持しているように見える」
真壁が資料をめくる。
「資金洗浄か?」
「その可能性もある。ただ、まだ断定できない」
榊は静かに尋ねた。
「資金の行き先は?」
「追跡中です。複数の経路に分かれているため、簡単には特定できません」
「急ぐな。相手が意図的に痕跡を消しているなら、こちらの動きに気づかれる可能性がある」
久世は頷いた。
そのとき、真壁が一枚の資料を指差した。
「この会社、以前に俺たちが接触した人物の関係先だ」
「誰だ?」
「まだ確認が必要だ。だが、裏社会の資金に関わっていた男だ」
榊の表情がわずかに変わった。
「ならば、慎重に進めろ」
⸻
翌朝。
悠真は出勤すると、机の上に新しい資料が置かれていることに気づいた。
付箋には、水原の字で短く書かれていた。
『昨日の確認、助かりました。続きもお願いします』
悠真は少しだけ笑った。
自分の見つけた小さな違和感が、組織の調査につながっている。
まだ何も解決していない。
それでも、昨日より少しだけ、自分の仕事に意味を感じていた。




