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第一部:九度山の霧と火傷の女
関ヶ原の敗北後、紀州・九度山に幽閉された真田家。
偉大な父・幸村の影に押し潰されそうになりながら、ただ無為に日々を消費する「僕」(真田大助)。そこへ、父の命を受けた一人の抜け忍・霧隠才蔵が護衛として現れる。
右半分が焼け爛れ、左半分が絶世の美貌を持つその女は、暗殺者としての冷酷さと、僕に対する異常なまでの甘やかし(母性とも狂気ともつかない執着)、そして武術の師としての容赦のない厳しさを併せ持っていた。
閉鎖的な村の退屈な日常の中で、徳川の密偵との暗闘が静かに繰り広げられる。血と泥に塗れた実戦訓練、閉ざされた空間での異常な主従関係。その摩擦熱の中で、僕は次第に、恐るべき殺人機械である才蔵を「一人の牝」として強烈に意識し始める。
やがて時代が再び血を求め、豊臣と徳川の決裂が決定的となった時、二人は九度山の霧を抜け、死の匂いが充満する黄金の檻・大坂城へと足を踏み入れる。




