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ミュゼリアはもう戻れない  作者: ぱんどーる


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5/8

5 ロイエル

貴族である俺達の安全の為と言って、自由がなく監獄にいるようだった学園生活がやっと終わり、すぐさまミュゼリアに会う為にオリヴァーを連れて転移魔法を使った。


俺の姿を見た途端、ポカンと口をあけたマヌケ顔のミュゼリア。俺を認識したら、今度はこれでもかと目を見開いて驚いた顔をしたミュゼリア。次はへにょりと眉を下げて泣きそうな顔をしたミュゼリア。これぞ感動の再会だな?なんて思っていたら、貴族らしからぬ猛ダッシュで、貴族らしからぬ満面の笑みで俺に飛びついてきたミュゼリア。

はは、見事な百面相だったな。


しっかりと受け止めて、俺もぎゅうぎゅうに抱きしめる。


「あー、会いたかった。ミュゼリア」

「うん、うん、私も会いたかった。卒業おめでとう」


背が伸びたな。ん? なんか体つきが女になったな。抱きしめながらあちこち手を移動させ、成長したミュゼリアを堪能する。


「ちょ、ちょっとロイエル・・・」

「んー?」


恥じらうミュゼリアも可愛いが、まだ確認中なんだからじっとしていてくれ。もう一度強く抱きしめる。ほう、胸も育ってきたな。


あー、育つ課程をこの目で見たかった。

あー、服の上からで我慢するからこの手で触りたい。


「いい加減にしてくれないかな、本当に変態が板についてきてるぞ。キモっ」


冷めた目のオリヴァーが、俺とミュゼリアを引き離す。


ちっ、まだ確認作業中だったのに。なんて思っていたら、突然俺だけを狙う的確な風魔法で吹っ飛ばされた。


「痛ってえ・・・」


こちらに人が近づいてくる気配を感じ、尻もちをついたまま上半身だけ起こすと、そこには見知った二人が呆れた顔をして俺を見下ろしていた。


「いくら婚約者でも、あれはありえないわよ? バカ息子。ここは外なのよ? 通報されて捕まっても文句が言えない見事な変質者ぶりだったわ。でも貴方に常識があるお友達がいたみたいで安心したわ」


「久しぶりだな、ロイエル。元気そうでなによりだが、稀少な聖獣持ち仲間で、私の教え子ミュゼリアに対して、欲望が全開すぎるぞ。 まあ、ミュゼリアは可愛いからな。気持ちはわからなくもないがな」


俺の母と祖母だった。


祖母はこの国に住んでいるから納得できるけど、なんで母までいるんだよ。まさか、父も来ているのか?


「はは。とりあえず私の屋敷に移動してゆっくり話をしよう」





さっきのオリヴァーのように冷めた目で俺を見る聖獣ノアは、俺がいない寂しさから暴走しそうになったミュゼリアを助けてくれた。助けてくれたのはありがたいが、人型になるとやはり男だったのが気にくわない。銀髪碧眼で整った容姿になるのも気にくわない。もう人型にはなるな。


百年以上ひっそりと暮らしていたノアに動きがあったと祖母と契約している虎の聖獣が反応した。たまにはノアの様子を見に行くかと出掛けた先で、祖母とミュゼリアは出会った。マジックバッグ、指輪、ネックレスから俺の魔力を感じ、俺の執着心も悟ったらしい。


連れて帰ると手紙にあった魔道具師エスティアは、物作りに夢中なだけあって容姿には無頓着な平民だった。着飾ればそこそこに見えそうなのに、本人はそんなことに時間をかける暇はないと言っている。才能を嫉妬され、努力をバカにされ、その上成果を横取りされた。商会はエスティアの話より、男爵家の女の話を信じ、ユニオン商会をクビになった。これからは今まで商会が用意してくれた素材を自分で調達しなくてはならなくなったからと、戦闘経験もないくせに、冒険者ランクB以上でないと危険だと言われている場所へ、装備も調えずに素材を探しに行って、案の定、魔物に襲われた。たまたま通りがかったミュゼリアが助けたのが二人の出会い。

魔道具師ってそんなに無謀なのか? 素材の為ならどこへでも行くのか?

アホすぎる。


母は、祖母が定期的に主催するお茶会で、一度顔合わせで息子から紹介されたミュゼリアがしれっと参加していた事に驚かされた。ドッキリが成功した時の祖母のしたり顔は忘れられないそうだ。

母はしばらく祖母の屋敷に滞在する事に決めて、ミュゼリアに淑女教育、公爵家で必要な教育も行った。時には厳しく指導する事もあったが、へこたれずにどんどん吸収して覚えが良く、努力するミュゼリアを気に入り、今ではミュゼリアの実の母より、母と娘になっている。

仲良くなっていて安心した。


さすがに父はこの場にいなかったが、

「いつものお茶会に行ってくるわね」と言ってから、半年以上屋敷に帰って来ない母を心配した父は、馬車を使い十日もかけて隣国に迎えに来たのに、一日滞在しただけで母に転移で屋敷に戻されてしまった。そして家令や使用人達に指示をするために数時間滞在した後、すがる父を振り切って祖母の家に転移で戻った。

ウチの両親の仲は、良いはずだったよな?

これはさすがに父が不憫すぎると思った。

俺ならそんな仕打ち、絶対に耐えられない。


ミュゼリアの話を一通り聞き終えたところで祖母が、


「ロイエルがミュゼリアに夢中だと思っていたが、ミュゼリアもロイエルにベッタリだな」


たしかに再会してからの俺とミュゼリアは密着している。立っている時は俺がミュゼリアを後ろから抱きしめるのがデフォルト。座っている時は食事以外、俺の膝にミュゼリアを乗せているのがデフォルト。ミュゼリアも嫌がる素振りはなく、俺に寄りかかり、ふにゃけた顔をしている。

あー、可愛い。


祖母はラブラブだなと楽しそうに笑っているが、母とオリヴァー、二匹の聖獣は呆れた顔をしている。


「ミュゼリア。二年ぶりだから今日は目をつむるけど、公爵家の嫁がそんなのではダメよ」


「ミュゼリア。 まだ婚約者なんだから、ちゃんと節度を保ってね」


やれやれ。

母とオリヴァーは、ここに来てから文句ばかりだ。


「ミュゼリアは、大賢者と言われる私の血を受け継いだ娘と孫より才能や技術は劣るかもしれないが、属性は二人よりも一つ多い。とても素晴らしい事だ。この世界で十人といないからな。素晴らしいのだが、まだまだ私を超える者が出てくる気配はない。ぐはは、私はすごいだろう」


酒を飲んでるわけでもなく、紅茶を飲んでるはずだが? シラフなのに急に立ち上がって自画自賛をしはじめた祖母。ミュゼリアは笑顔でパチパチと拍手を送って祖母を絶賛しているが、他の皆は祖母に呆れた顔をしている。ミュゼリアにも残念な子を見るような視線が送られていた。


魔法を使うことがあたり前の国グレイウッドだが、使える属性は一人一属性と言われている。複数持てば、就職試験をパスして望む部署に所属できるし、給料も高い。


そんな中で祖母は全属性をまんべんなく使いこなす化け物だ。母と俺はそれぞれ得意不得意はあるが、光属性と闇属性以外を使える。ミュゼリアは闇属性以外は使えるそうだ。俺が使えない光属性魔法は祖母が教えた。

その時に祖母は剣の基本も一緒に教えた。剣の方はほぼ才能がなかったらしいが、万が一魔法が通用しない相手に遭遇した時の保険で習得させたとの事。

剣は危ないから使わせたくない。

そこまでの状況に絶対にさせない。



これからひと月の間は、俺とオリヴァーが祖母の屋敷に滞在する事が許された。その後はラルクロッドに帰って、オリヴァーは婿入りの準備、俺は公爵家を継ぐ準備と魔法局での仕事がある。


学園生活からやっと解放されたのに、やらなくてはいけない事がびっしりと詰まっていてげんなりするが、このひと月は俺もオリヴァーも全てを頭の隅に追いやって、ミュゼリアと目一杯楽しむことにした。



毎日を楽しんでいるようでいて、ふとした時に思案げな顔をみせるミュゼリア。今日は皆がそれぞれ出払っているから、聞き出すにはちょうどいいかもしれない。


「ミュゼリア」

「ん?」

「なんか不安な事でもあるのか?」

「・・・」


ミュゼリアは口を開けたり閉じたりするが、なかなか言葉は出てこない。それでもミュゼリアの顔を観察しながら、じっと待つ。


ふぅーと息を吐いてから、困ったように眉を下げ、困ったように笑いながら、俺に両手を伸ばしてきたミュゼリア。甘えたいだけではなさそうだな。ミュゼリアの手をとりを抱っこして立ち上がる。子供もあやすように背中をポンポンしながら左右に揺らすと、俺の首に両腕を回して、ぎゅっと抱きついてきた。


「・・・ロイエルは優しいね。 大好き」

「惚れた女限定だけどな」

「ふふ。皆に優しいよ」

「ククっ。優しいなんて人生で初めて言われたわ」


そろそろ話してくれるか?

ソファに移動して、いつものように膝に乗せる。


「んで、何がミュゼリアを悩ませている? 解決してやるから言ってみろ」


上目遣いで俺を見上げるミュゼリア。


「・・・ロイエルのギフトを使えば簡単だよ?」

「バーカ。時間がかかってもミュゼリアが言うまで待つ」

「ふふ。やっぱりロイエルは優しい」


目に涙をためて、今にも溢れそうだ。

頬をなで、こめかみにキスをするとふにゃけた顔をするミュゼリア。


「なんて言えばいいんだろう・・・。 私ね、ロイエルに出会ってからすごく幸せなの。大好きだし、婚約者になれてすごく嬉しい。オリヴァー兄様も優しいし、ロイエルのお母様と師匠もね、子供の頃に読んで憧れていた絵本のお母さんみたいなの。ダメな事はしっかりと叱って、悲しい時は抱きしめてくれる。困った時は手を差し伸べてくれて、嬉しい時は一緒に喜んでくれる。絵本の中の子供がうらやましかったし、私と実母の関係では叶わないと諦めていた事だったから、現実になって本当に幸せなの」


ミュゼリアの環境を俺から家族に話した事はない。

祖母と母には感謝だな。


「・・・幸せをこんなにもらっているのに、守ってももらっているのは甘えすぎかもしれない。このままだとお前は幸せになりすぎだと、突然明日から五歳の頃の環境に戻されてしまうかもしれない。でもこの幸せを知ってしまった私は、きっと耐えられない。もう一度乗り越える事はできない」


そうとう溜め込んで病んでやがる。考えすぎだ。


もっともっとと欲深くなって増長し、高慢になる奴の方が多いだろうに。祖母と母はそんな奴はすぐ見切るし、甘い人間ではない。

ミュゼリアだから、ノアも契約したはずだ。

血の繋がりが全くないのに、兄であり続けるオリヴァーだってミュゼリアだからなんだぞ。


「アホだな。 ミュゼリアが好きだから、皆勝手にやってるんだ。ミュゼリアには俺だけでいいのに、俺はいつも嫉妬してるんだからな。過去に戻るなんてことはありえないが、戻ったなら俺がまたミュゼリアを見つけてやる。逃げてもぜーったいに捕まえる」


ミュゼリアをぎゅうっと抱きしめる。

俺の方がお前がいない人生なんて耐えられない。


「愛してる、ミュゼリア」


ミュゼリアもしがみついてくる。

あーあ、泣かしちまった。


「ぐすっ、私も大好き、ロイエル」

「ああ。知ってる」


その後もたくさん話をして、思いを吐き出させた。


泣いて、笑って、たくさんのキスで恥じらうミュゼリアがあまりにもそそる顔をするから、このままベッドで抱いてしまおうとしたら・・・・



・・・・・ミュゼリアは寝た。



まっ、

最初から今日じゃないと思ってはいたが・・・。

添い寝ぐらいで我慢してやるかと思ってはいたが・・・。



なーんか納得できないが、とりあえず寝室に運んで寝かせたままにしてやる。

次は覚悟しとけよ?


今日の話をオリヴァー、祖母、母と共有しようと思う。


情けないが、一人では手が足りない。


あーあ、五人くらいに分身できればいいのにな。









認証メールはなかなかこないし、きても間違ってますと言われ、めっちゃ焦りました。

ちゃんとログインできたので続けられそうです。

(^∀^笑)

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