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ミュゼリアはもう戻れない  作者: ぱんどーる


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3/8

3 ロイエル

ゾクリとするほど、とんでもなく大きな魔力が暴走しそうな気配を感知して、慌てて魔力を辿った先にいたのがミュゼリア。


これほどの魔力を持っているなら、教会から魔法局に必ず報告しなければならないのだが、連絡はなかったはずだ。記憶にない。


もしあのまま暴発していたら、この領地は吹っ飛んで更地になっていただろう。本当にギリギリで危なかったが、どうにか間に合ってホッとした。


魔力を打ち消す前に、落ち着かせようと抱きしめたら、なぜかすんなりと暴走はおさまった。

はぁ? あの大暴走を? こんなにあっさりと?

さっきからありえないことばかりで頭が混乱する。


本人から聞いた話にこれまた驚いた。


あの商会の娘がミュゼリア。没落した男爵家の次男の騒動は有名な話だが、正にその被害者だったミュゼリア。

しかもオリヴァーの妹になっていたのもミュゼリア。それなのに、一切の教育がされていない状態のミュゼリア。魔法も独学で習得したミュゼリア。しかも魔法が使えないオリヴァーが用意した魔法書は、超上級者用。

アホすぎる。


後でオリヴァーを説教してやる。こんな可愛い妹ができたら溺愛するのが普通だろうが。


ミュゼリアの話を聞いているうちに、今度は俺が暴走するくらいに怒りがわいた。


それからは俺の時間が空いている時に、魔法の使い方を基礎から順々に教え、レストランや食堂に連れて行ってはマナーを教えながら、食事も楽しんだ。会った時は必ず愛情に飢えているミュゼリアが満足するまで抱きしめてやった。




これを三年続けた結果・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・。



俺はミュゼリアに惚れた。




しかたねーよな?

外を歩く時は必ず手を握って、帰る時は可愛い女の子に離れたくないと涙目&上目遣いで、三年間懇願され続けてみろよ。ミュゼリアを三年間抱きしめ続けてみろよ。

堕ちない男はいない。


打ち明けてくれるまで時間はかかったが、魔力測定時にちょろまかした件も、ギフトを二つも持ちながらも見事に隠した件も聞いた。理由も聞いた。


ミュゼリアにも話してあるが、俺もギフト持ちで『自白』

俺がギフトを使うことなく、ミュゼリアの方から話してくれたことが嬉しかった。


まあ、それにしても一人で抱え込み過ぎだし、ぶっ飛んだ事をやったもんだ。そりゃ壊れるし、暴走するわな。


とにかく全部ひっくるめて、守ってやりたし、愛したい。


俺とオリヴァーは、これから貴族の義務で、二年間学園に行かなければならない。入学すれば今までのようには会えない。きっとミュゼリアは悲しむ。少しでも安心させてやりたい。


用意した魔法石付きのネックレスと指輪に、これでもかっていうくらいに俺の魔力を込めて、ミュゼリアに婚約を申し込んだ。紙っぺらの契約だが、俺がミュゼリアを愛していて、俺の手でお前を守ってやりたいと心から思っている気持ちを伝えた。



「ロイエル、ありがとう。私も大好き」



泣き笑いのミュゼリアからのキスには驚いた。

もちろん俺からも何度もキスをした。


「ローブは新調しないの? このぼろローブも欲しい。会えない間はこれがあれば我慢できる」


どうぞお納め下さいと脱ぎそうになったが、どうにか思いとどまる。ぼろだけど様々な術式が組み込まれてるから、見た目と違って高性能なんですよコレ。学園でもこのローブを制服の上から着用してれば、変な奴も寄ってこないだろうっていう目論見みもあるローブだから我慢してもらった。


「髪はボッサボサで、常にぼろローブを着ていて、気持ち悪いと言われるオッドアイの目で、人が近寄ってこない『自白』持ちの俺だけど本当にいいのか?」


「あはっ。今さら? 気にしてるように見えた? ロイエルが好きなの。 幸せな『記憶』は貴方といる時のものばかりなの。初めて忘れられないことに感謝したわ。それに私だって元平民で、おでこに傷があって、大商会の娘なのに利益になるものを何も出せなくて、放置されてる秘密持ちだよ? いいの?」


「ああ、全く問題ない。俺はそこそこの実力もあるし、使おうと思えば、それなりの権力も持っている。それに現況でまあまあな稼ぎもちゃんとある。商会の後ろ盾が欲しいんじゃない。伯爵家のご令嬢だからじゃない。ミュゼリア自身を愛している」


嬉しいと言いながら、泣きやまないミュゼリアの涙が止まるまで、抱きしめ、体を撫で、キスをした。


あー、このまま閉じ込めたい。




*****



「なあ、オリヴァー」

「ん?」

「俺、ミュゼリアと結婚するわ」

「ぶっほっ。 ゴホゴホっ。 はぁ?」


驚いて紅茶を思い切り吹き出したオリヴァー。


「きったねぇな・・・。 人払いしてあるんだから自分で掃除して、新しい茶も自分で淹れろよ?」


こいつ、私が口に含んだタイミングで言ったよな? わざとだよな? ロイエルを睨みながらもテキパキと片付けて新しい茶を用意するオリヴァー。


「ミュゼリアは了承したのか?」

「ああ。キスもした」

「ふごっ」


どうにか吹き出さずにこらえたオリヴァー。


「ミュゼリアはまだ子供だよ?」

「三年も待ったんだぞ? キスぐらいいーだろ、両想いなんだし」


ロリコンか? 変態か? キモっ。


「俺とお前が同時にミュゼリアのそばから離れるのが心配だから、俺の魔力を込めたネックレスと指輪を渡した。ちゃんと身につけていれば死ぬ事はない。それに俺が手取り足取り教育したからミュゼリア自身も強くなったし。んで、ついでにお前にも作っといた。持っとけ」


投げ渡された三つの袋の中にはたくさんの魔法石が入っていた。


「魔法が使えないお前には量で対策した」


ついでの量じゃないだろう。

これだけ用意するのは大変だったろうな。


「ありがとう。・・・使う日が来ないことを祈るよ」


「俺の願いはミュゼリアが笑っていられる日々が続く事。 そのためなら何があっても絶対に守る。お前だって同じ気持ちだろ?」


「私はあの子の兄だよ? 当たり前の事を聞かないでくれる?」


ミュゼリアに心配ばかりされている気もするけどね。


「なら、さっさとお前んちをどうにかしろよ。釣書を送ったら、すぐサインして送り返してきたぞ。たぶん中身なんか全く読んでない。うちの両親がめちゃくちゃ驚いてたぞ。俺としてはすんなり婚約できて良かったがな」


「・・・そうか。 今でも両親は新婚気分のままだ。もう私もミュゼリアもあの家は捨てていいのかなと思ってるよ。両親は二人の子供を後継に据えるつもりだしね。学園の卒業と同時にあの家からも卒業しようと動いてはいるよ」


ってことは、あと二年か。

オリヴァーは厳しく育てられただけあって非常に賢く、優秀。徹底的に教えこまれたマナーはスマートで優雅。それにあの家の教育を受け続けてきた我慢強さがある。

ミュゼリアは自身も言っていたように放置で間違いない。どちらかといえばオリヴァーの方が虐待されていたと言っていいくらいの過剰な教育を受けていた。

とにかく凄い男だから、何か考えがあるのなら俺から言うことはない。


「あー、それもいいかもな。手伝いが必要なら言ってくれ。ミュゼリアは身内の中でオリヴァーの事だけは心配してるし、ギフトの事も俺の判断で話していいと言った。俺とお前なら裏切られても後悔はないって笑ってたよ」


私の『犬』とは違い、(色々と芸はあるんだよ?)二人のギフトは国が近くにおきたいと思うギフトで貴重だ。

あー、でもロイエルの自白は必要な時だけになるか?自白はさせても、自分は自白したくないと言う人間は多そうだ。

ミュゼリアの方は、当時五歳の女の子が誰にも相談できずに苦しんで、悩んで出した結論だった。その頃なら私はすでにミュゼリアの兄になっていたのに、勉学に追われて気付かず、手を差し伸べる事ができなかったのが悔やしくて、申し訳ない気持ちになる。


「ミュゼリアにギフトを使って聞いたのか?」


「いいや、使ってない。俺は自白って言葉が嫌いでな。罪や悪さを吐かせる感じだろ? このギフトのせいで人は寄ってこないわ、右目の色は赤くなるわで気味が悪いと言われるし、本当に迷惑なギフトだよ。告白とかにしてくれりゃ、ちょっとした秘密を聞き出すって感じで、俺も使いやすいのにな」


「・・・だね。私もなかなか使い所がないギフトだ」

「ぶはっ。そうだったな」

「笑うな」

「悪い、くくっ」

「・・・。」


ロイエルは授かったギフトのせいで、傍にいた人は離れ、人が近寄らなくなった。

それでもロイエルのルックスと家柄の良さに諦めきれない女性達が、自白して困る隠し事はないと豪語する強気な女性達が、ロイエルに近づいてきては猛アピールをしていた。結局はギフトを使わなくても、前髪を上げたロイエルのオッドアイの目で見られた女性達は、悲鳴をあげ、恐怖し怯えて逃げて行った。

そんな理不尽な環境にロイエルは心底呆れ、あえて髪をモジャモジャのボサボサにして、ぼろローブを手放さず着用し続けている。そんな辛い思いをしてきたから、ミュゼリアの気持ちも理解できるんだろう。

悔しいが、私だけではミュゼリアを守りきれない事も理解している。


「ロイエル、ミュゼリアは私の大切な妹だ。ロイエルになら任せられる。頼むよ?」


家は公爵家で、ロイエルの親は王弟だ。

本気のロイエルがミュゼリアを囲うなら安全だ。

安心はあまりできないが・・・。

まあ、大丈夫だろう。


「ああ。 他の奴に渡すつもりもないし、ミュゼリアが逃げてもどこまでも追いかけて、絶対に捕まえて囲う」


・・・ほらね、安心はできないだろう?


「・・・遮断されないようにほどほどにね」


オリヴァーは俺が自白持ちと知っても離れることはなく、ギフトの影響でオッドアイになっても態度を変えることがなかった。赤くなった右目は発光することもある。それを見ると、怯える奴ばかりなのにオリヴァーは「あ! 今光ったね。それは自分から? それとも無意識?」なんて興味津々な様子だった。


ミュゼリアに心配されて、信頼されているのは、イラッとする時もあるが、オリヴァーがミュゼリアの兄になって良かった。

安心だ。


任せると言ってくれたオリヴァーの信頼にも応えてやらなくちゃな。


「な、オリヴァー義兄上」

「ぶっほ」

「くくっ、きったねぇな」

「・・・。」


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