匿名の告発
ちょうど青葉進学塾まであと少しというところで、美玲の鞄の中のスマホの通知音が聞こえた。メッセージが届いている。送り主は大沢だ。
<美玲先生。例の人の写真です。なんかめっちゃヤバイ人っぽいですよ>
<ありがとう。お礼がてら今度、一緒に飲もう>
<了解です>
美玲は添付された画像を確認する。
「いいね。いい仕事してくれたわ、大沢君」
美玲はスマホを鞄にしまうと、笑いそうになるのを必死でこらえながら歩いた。
美玲は、その日どの写真をどう使うかを考えながら、一日の授業をこなした。途中で綾乃と目が合うことはあったが、特に何かを話すわけでもなかった。ただ、いつも通り、それぞれの授業を続けた。
最後のコマが終わると、講師たちはその日の自分の授業のまとめを、室長に提出しなければならない。美玲も、塾から支給されたタブレットを使ってその作業をすませ、講師室を出た。
美玲は鞄の中から小さな袋を取り出すと、中から銀色の指輪をつまみ上げた。
それを、右手の人差し指にはめた。軽く指を動かして、具合を確かめる。
指輪が、光を小さく弾いた。
「お仕事モード終了!」
そうつぶやくと、サッと鞄を肩にかけ、塾を出た。
写真を使って匿名のメールを送る――それは前から考えていたことだった。
念のため、自宅からも塾からも離れたネットカフェを選び、電車で向かう。
受付を済ませると、個室のブースに入った。ここからメールを送ればいい。さすがに、自宅の回線やスマホを使う気にはなれなかった。
美玲はパソコンのメール送信画面を開いた。
アドレスは、先にnmailでとっておいた。
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<件名 講師の方について>
青葉進学塾 高島駅前教室 室長様
突然のメールを失礼いたします。
そちらの塾の講師と思われる方が、保護者と個人的に会ってお金を受け取っているのを見かけました。
塾に子供を預けている身といたしまして、大変心配に思っています。
他の保護者の方から声が上がるのも時間の問題ではないでしょうか。
一度、当該の講師の方にきちんと確認してください。
写真も添付しましたので、見れると思います。
保護者より
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美玲はメールを書き終えると、大沢が送ってくれた写真をスマホからパソコンに転送する。三枚の写真を添付すると、送信ボタンを押した。
美玲は満足げに一息つくと、大きく伸びをした。これでうまくいくはずだった。




