表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/62

母の思い、あるいは

☆☆☆


「復讐心でしょうか」と、罪園つみぞのは問いかけた。


フライトユニットから魔力を噴出しながら、罪園はアークザインを追う。


ミハルとのダンジョン攻略バトル、続けて涼――イモータル・リュウとのバトルを経てMPの損耗が激しく、それに加えてのアークザインのダンジョン攻略阻止という強行軍……本来の実力を発揮するには程遠いコンディション……それでも、泣き言は言っていられない。


本来、セプテントリオンには最低でもS級冒険者「3人」以上を含むパーティで対処するというのが事前の規定である。


ここにいるS級は罪園 リアムただ一人だけ。

否――新たなS級候補が罪園の手を握っていた。


罪園よりも小柄な身体をしていながらも、芯の強い目でその人は言う。


「復讐……? そんなこと、考えてもみなかったわ」


星羽ミハル――以東 春子は罪園の問いに答えた。


「10年前のあの惨劇を、絶対に繰り返さない。私が考えてるのはそれだけ」


春子は階下の穴を見下ろした。

視線の先の闇の向こうには、第十九層に置いてきた息子の顔が浮かんでいるのだろう。


「こんなこと言ったら、あの子に怒られるかもしれないけど。リョウちゃんが脱落してくれて、ホッとしている自分がいるの。リョウちゃんが死ぬことなんて――私、絶対に考えたくないから」


罪園は春子の言葉に頷く。


「……お義母かあさまも巻き込みたくありません、本音を言えば。ですが、現在の弊社の実力ではアークザインを単独で撃破することは困難と判断しました。ご協力に感謝しています」


「いいのよ、私だって冒険者なんだし。経験だけで言えばリアムちゃんよりもベテラン、巻き込まれたなんてとんでもない……もっと、お母さんを頼っていいのよ?」


罪園は「その……」と言いづらそうに口にする。


「……弊社は嫌われていると思っていました、春子さんに。視界に入るだけで嫌になる、おジャマ虫かと」


「えっ、どうして?」



「お義母かあさまは以東くんを愛していますよね?」



「…………ッ!」


「…………(じーっ)」


「…………(あ、あはは)」


「…………(じーっ)」


「…………(目を泳がせる)」


「…………(じーっ)」


「…………(ふぅ、とため息をつく)」


観念したかのように春子は呟く。


「愛、ね。……わからないわ、正直」


「意外です。自覚が無かったのですか、あれだけベタベタしていて」


「自覚なら、あるわよぉ……でも、リョウちゃんは息子なんだし。お母さんである私が大事に思ったり、守りたいって思うのは当然のことでしょ? それは愛かもしれないけど、男女のそれとは別だと思うわ」


「否定します。子供を愛するかどうかは別問題です、母親であるからといって」


罪園は自身の母親――遺伝子提供者という名の「怪物」を思い浮かべた。

とはいえ、自分と彼女の関係は置いておいて。

一般論として「母性」というものがある以上、母が子を愛する本能は存在する。


春子の息子に対する思いの正体――



----------------------------------

「初めてお兄さんに助けられたときに、パパにダンジョンに助けられたときのことを思い出したの。パパみたいにカッコよくなったなって――リョウちゃんはパパの息子なんだから、当たり前なのにね?」

----------------------------------



「似ているのですか? 以東くんと、お義父とうさまは」


「似ている、と思いたかったのかも。

 それなら、私の心に言い訳がつくから」


春子はいじらしく、目線を逸らした。

その様子を見て罪園は内心で微笑む。


「……可愛いです、お義母かあさま」


「ちょっと、おばさんをからかわないでっ!」


「否定します。お義母かあさまは可愛いです、年齢など関係なく。つまり、弊社にとっては最大の脅威、強力なライヴァルということです――」


ライヴァル、と口にした罪園の目。

言葉とは裏腹に、そこには一切の敵意は無かった。


――それはまるで、秘密を共有した共犯者のようで。


春子はくすり、と笑みを漏らす。


「さっき、話したこと。

 リョウちゃんには内緒にしてね?」


「承知しました。

 続きは戦いの後にしましょう」


フライトユニットを加速させる。

アークザインが引き起こす破砕音が近づく――決戦は間近。


「お義母かあさまをこんなところでは死なせません。

 やっちまいましょう、徹底的に」


「でも、アークザインに有効な攻撃は限られているわ。スキルによる魔法攻撃は無効――私の物理攻撃なら、ステータスに任せた単純暴力だから通りは良いと思うけど」


「……以東くんを一撃で瀕死に追い込んだ様子を見るかぎりでは、至近距離での戦闘はリスクが大きいです。お義母かあさまによる近接攻撃は最終手段として」


S級冒険者と、準S級冒険者の二人――

即席パーティは互いの力を活かした連携について話し合う。


「弊社に、考えがあります」


☆☆☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ