こんこん
「あの、さ」
一応、やっぱり伝えておくべきだよね。
「次、破れても、もう直してあげれない」
「え?なんで?」
金貨押し付けてくるのやめようか。
「うんとね、冬が終わったら違うところに行くから」
当然、押し返しましたよ。
「どこに?」
「さあ?そろそろどこかに行きたいから」
「わかった。じゃあ次破れたら、違うとこに行く……嫌だけど」
「大丈夫?」
大丈夫じゃないって言われても困るくせに思わず聞いちゃった。
「なくなることはよくあるから、違うとこ探すの」
「うん、そうだね」
「お城があるところはたまにしかなくならないから、そこ行けば大丈夫なの」
城下なら潰れていても違う店があるだろうしね。
「でも馬車乗らないとすごく遠い」
この村からでも随分遠いもんね。歩きだと君にはきついかな。何十日、曇りが続いちゃうだろうね。
「次服屋さんに行ったら、たくさん買っておけば?」
「すぐ大きくなって着れなくなっちゃうから三枚ずつ買うんだって」
「……もう成長しないんじゃないかなぁ」
わからないよ?わからないけどたぶん、年齢的に。
いや、ものすごくデ――太ましくなるかもだけど。
「ならない?」
「たぶん」
「じゃあ、たくさん買う」
「うん、これと同じような感じなら金貨一枚で五枚は買えるからさ、お店の人に相談してみたらいいよ」
ワンピースをちょっとだけ摘まむ。
「わかった」
「あ、でもたくさん買うと荷物になるな……もしかしてだけど、マジックバッグとかあったりする?」
夢の無限バッグ。荷物入れ放題!今まで見たことないけど、今まで天気を変えられる人だって出会ったことないからね!
「まじっくばっぐ?」
「そう!容量無制限に荷物を入れられるバッグ!」
「そんなのあるの!?え?どうやって?質量が変化するってこと?すごい!」
「……ごめん。ない。残念ながらないんだ」
本当に残念。
「持てるだけ買うんだよ」
「わかった」
「それと、人の家の扉を開けるときは、ノックしようね」
「こんこん?」
「こんこん」
ノックのしぐさをして、見せる。
……インターホンはないけど、ノッカーがあったらどうしよう。いやでもそんな家滅多にないし、たぶんきっと、そんなところには行かないはず。それに絶対ノッカー使わないといけない決まりなんてないからね。
「なんで?」
「いきなりドアが開いたら、君もびっくりするでしょ?」
「開かないよ。死んじゃうから」
「……そうだったね」
あのビリビリ乗り越えて扉までたどり着くのは難しいね。
「えっとね、今日、ボクはびっくりしたんだ」
「どうして?」
「それは君が急に来て、ドアを開けようとしたから」
「開けてないよ?」
「でも、ガタガタさせたでしょ?あれだけでもびっくりしちゃうんだ」
「そうなの?」
「そうなの」
まあまあ、マジもんで驚いたからね。
「だからコンコンして、中の人から返事が来てから開けるんだ。驚かせないためにね」
「返事がなかったら?」
「留守だから、出直そう」
「留守じゃない。いた」
「……服屋?」
「そう。生体反応あったもん」
本当に鍵かかっててよかった。
「寝てたのかも。どうしても手の離せない用事をしてたのかもしれない。中に人がいても、必ず答えてくれるわけじゃないけど、ノックして、返事を待とう?」
「めんどう」
「そうだね。でもいきなり開けて、嫌な思いしたことない?怒鳴られたりさ」
「……ある」
ああ、思い出させてごめんね。結構な嫌な目にあったみたいだね、その顔は。
「ノックして、返事を待つだけで、中の人はびっくりしないし、君も嫌な思いしないで済むようになるよ」
「…………わかった。こんこんする」
えらいねぇ。また撫でそうになっちゃった。ちゃんと自制した。




