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死ねない二人は今日も死なない  作者: 松倉夜海
出会い編

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8/32

どやぁ

何度も腕を上げて、直したところを見てる。

そこまで喜んでくれたら、直した甲斐があるよ。


「あ、これ」

「なに?」


差し出された握りこぶしに、反射的に手を出す。

いつもの完全食かな?いや、手に隠れるほど小さくなかったよね。コンパクトに改良したのかな?


「え、お金。なに?」

「服代」


手のひらにぽとりと落とされた。

驚きの金貨だよ!


「あ……こっちの分、持ってくるの忘れた」


前に繕った方を指さして、落ち込んじゃった。いやいや。


「いらないよ。あんなんでこんなにもらったらボッタクリにもほどがあるでしょ」

「ぼったくり?」

「もらいすぎってこと。君からしたら払い過ぎ」

「でも、いつも服一枚に金貨一枚だもん」

「ええっ!嘘でしょ?」


繕っただけで金貨一枚は当然ボッタクリだけど、材料をそろえて、一から作るにしてもボッタクリじゃね?俺の持っている一番高い厚手のコートと同じだよ?悪いけどこっちの方が比べ物にならないぐらい、いい生地使ってるからね?滅茶苦茶こだわって作ってもらったこのコートと、こんなどシンプルなワンピースが同じ?マジか。


「なに?もしかして特殊な服なの?」

「うん!」

「え、まじで?」


うそーん。どこが?俺にはわからない、隠れたおしゃれな何かがあるの?それともこんな田舎の村で、超有名な凄腕の職人いるとか?


「これね、強化してるの」

「きょうか?」

「そう!ただ保護するだけなら風魔法で、空気をなくせば保護できるのね? でもそれじゃ着れないでしょ?そのためにね、布って一本一本繊維を編んでるでしょ?その繊維って植物じゃない。だから植物魔法で、強化するの。でも根がないから弱っていっちゃうんだよね。これは今後の課題だね。それとも違う方向からアプローチした方が効率的かな?でも植物魔法って――」

「ストップ、ストップ!」


ご機嫌で話しているところを遮ってごめんね? でも早口でよくわかんなかったし、終わりそうになかったから。


「えーと……特殊なのは、君が魔法で強化したからだよね?」

「そう!あのね、植物魔法っていうのはね――」

「それは今度教えて」


不満そうにされても、興味ない……話が高尚過ぎてついていけないからね。


「じゃあ、作ってもらった時は普通の服?」

「そう」


へえ?

こんな普通のワンピースが金貨一枚、ね。


俺が着ているシャツとズボン10セット以上買える。


「それは……ちょっと、気分悪いね?」

「そうなの?薬飲む?私の作る薬、すごく効くんだよ」

「ちが…………いや、だいじょうぶ」


気が抜けちゃった。

きっと薬も自信作なんだろうけど、ちょっと遠慮したいかな。


「あ、ごめん」


ドヤ顔が可愛くて、思わず頭撫でちゃったよ。

大人の女性にすることじゃないね。


「おーい、大丈夫?」

「び、くりした」

「うん。ごめんね」


そんなに両手で頭をガードしなくても、もうしないってば。


「帰る」

「もう少し、あったまってから帰りなよ」


あんな生地で、上着も持ってないんだから。


「雪は降ってないけど、寒いでしょ?ほら……曇ってるから」


本当どうしてだろうね?


「寒くないよ?」

「そうなの?」

「うん、あったかくしてるから」


ん?どういうこと? 


「まずね風魔法で自分の周りを遮断するでしょ?でも完全にしちゃ駄目なの。空気の通り道を開けないと苦しいから。それから火魔法で――」

「魔法で温かくしてるんだね?」

「そう!」



いや、うん。これはドヤ顔してもいいと思うよ。





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