どやぁ
何度も腕を上げて、直したところを見てる。
そこまで喜んでくれたら、直した甲斐があるよ。
「あ、これ」
「なに?」
差し出された握りこぶしに、反射的に手を出す。
いつもの完全食かな?いや、手に隠れるほど小さくなかったよね。コンパクトに改良したのかな?
「え、お金。なに?」
「服代」
手のひらにぽとりと落とされた。
驚きの金貨だよ!
「あ……こっちの分、持ってくるの忘れた」
前に繕った方を指さして、落ち込んじゃった。いやいや。
「いらないよ。あんなんでこんなにもらったらボッタクリにもほどがあるでしょ」
「ぼったくり?」
「もらいすぎってこと。君からしたら払い過ぎ」
「でも、いつも服一枚に金貨一枚だもん」
「ええっ!嘘でしょ?」
繕っただけで金貨一枚は当然ボッタクリだけど、材料をそろえて、一から作るにしてもボッタクリじゃね?俺の持っている一番高い厚手のコートと同じだよ?悪いけどこっちの方が比べ物にならないぐらい、いい生地使ってるからね?滅茶苦茶こだわって作ってもらったこのコートと、こんなどシンプルなワンピースが同じ?マジか。
「なに?もしかして特殊な服なの?」
「うん!」
「え、まじで?」
うそーん。どこが?俺にはわからない、隠れたおしゃれな何かがあるの?それともこんな田舎の村で、超有名な凄腕の職人いるとか?
「これね、強化してるの」
「きょうか?」
「そう!ただ保護するだけなら風魔法で、空気をなくせば保護できるのね? でもそれじゃ着れないでしょ?そのためにね、布って一本一本繊維を編んでるでしょ?その繊維って植物じゃない。だから植物魔法で、強化するの。でも根がないから弱っていっちゃうんだよね。これは今後の課題だね。それとも違う方向からアプローチした方が効率的かな?でも植物魔法って――」
「ストップ、ストップ!」
ご機嫌で話しているところを遮ってごめんね? でも早口でよくわかんなかったし、終わりそうになかったから。
「えーと……特殊なのは、君が魔法で強化したからだよね?」
「そう!あのね、植物魔法っていうのはね――」
「それは今度教えて」
不満そうにされても、興味ない……話が高尚過ぎてついていけないからね。
「じゃあ、作ってもらった時は普通の服?」
「そう」
へえ?
こんな普通のワンピースが金貨一枚、ね。
俺が着ているシャツとズボン10セット以上買える。
「それは……ちょっと、気分悪いね?」
「そうなの?薬飲む?私の作る薬、すごく効くんだよ」
「ちが…………いや、だいじょうぶ」
気が抜けちゃった。
きっと薬も自信作なんだろうけど、ちょっと遠慮したいかな。
「あ、ごめん」
ドヤ顔が可愛くて、思わず頭撫でちゃったよ。
大人の女性にすることじゃないね。
「おーい、大丈夫?」
「び、くりした」
「うん。ごめんね」
そんなに両手で頭をガードしなくても、もうしないってば。
「帰る」
「もう少し、あったまってから帰りなよ」
あんな生地で、上着も持ってないんだから。
「雪は降ってないけど、寒いでしょ?ほら……曇ってるから」
本当どうしてだろうね?
「寒くないよ?」
「そうなの?」
「うん、あったかくしてるから」
ん?どういうこと?
「まずね風魔法で自分の周りを遮断するでしょ?でも完全にしちゃ駄目なの。空気の通り道を開けないと苦しいから。それから火魔法で――」
「魔法で温かくしてるんだね?」
「そう!」
いや、うん。これはドヤ顔してもいいと思うよ。




