晴れたら困る
「馬車嫌いなのに」
唇を尖らせている姿は少し幼く見えるね。
この村以外だと、近くに服を売ってるような村ないもんね、仕方がないよ。
「えっとさ……直してあげようか?」
「?」
「だから、さ。その破れたところ縫ってあげようか?」
「そんなことできるの?」
「まあ、うん」
あのね、今ここで破れたところ見せられてもなにもできないからね。
「まず糸買いに行こうね」
また腕を降ろしてあげる。
針は持ってるからね。
「俺はこんな色の糸しか持ってないからさ」
シャツを掴んで生成りの生地を見せる。
「駄目なの?」
「君の服は紺色でしょ?」
「うん。濃い色は色々目立たないからおすすめなんだよ」
ほら、と俺の胸元を指さす。
すぐに洗ったけど、シミになっちゃったんだよ。
「糸が目立たないようにできるほどは上手に縫えないから」
「駄目なの」
「目立っちゃうでしょ?」
もう一度おんなじ言葉を言われた。
「破れたところは直るんでしょ?」
「君がいいならいい……やっぱり買いに行こう」
見ることはなくても女性の脇に白い線が入るのはいただけないでしょ。
納得いってない彼女を連れ立って雑貨屋に向かった。
早く早くと急かす彼女をなだめながら糸を選んだ。
言っておくけど君の為なんだからね?まあ、本人はまるで気にしてないけど。
「じゃあ俺が泊まってる宿屋に――」
あ、まずいかな。
「……もうちょっと歩くけど、大丈夫?」
雑貨屋から出たら驚くほどいい天気。さっきまで隠れてた太陽が堂々と現れてる。
「無理」
だろうね。庇から絶対出ないという断固たる覚悟を感じるよ。
日傘なんて貴族の女性しか差してないけど、ちょうど雑貨屋だし買おうかな。いやでもこんな村にそんな高尚なもの売ってるかな? 悩んでる間に彼女は自分で解決したみたいだ。
耳にしたことのない言葉を小さく呟く。
「これで大丈夫」
「……くもりになったねぇ」
あんなにいい天気だったのにね。不自然に厚い雲に覆われたね、不思議だね?
「嫌いなの。疲れるから」
そこまで強い日差しじゃなかったと思うけど。まあ、嫌いならしょうがないね。
「じゃあ、行こうか」
「うん」




