三度目まして
「あ」
「あ」
同時に声を上げていた。
「なんでいるの?」
「なんでいるの?」
これまた同時に。
ここは森じゃない。村、だ。そんなとこで彼女を見かけたら驚くでしょ。
「買い出し」
なるほど。冬が近づいているもんね。
……ここ最近曇りだったのは偶然だよね?
「おまえは?」
「ご飯食べに行ってる」
「……はい、あげる」
「……ありがとう」
かばんにダイレクトに入れてるんだね。
飯屋に行く必要がなくなったので、なんとなく彼女と一緒に歩きだす。ぼりぼりともらった完全食をかじりながら。よかった飲み込めるタイプだ。
「たくさん買うでしょ?持てる?」
「たくさん?買わない」
「冬前の買い出しじゃないの?」
「なに、それ」
この辺りは豪雪地帯じゃないけど、冬はほどほどに寒いって聞いたんだけど。雪も降ったり降らなかったりするって。
「あ、そうか。完全食があるもんね」
「意味わかんない」
「えっとね、冬になると食べるものなくなるでしょ?だからみんな食糧なんかを買い込んで備えるんだよ」
「へー」
あ、興味ないこと言ってごめんね。
「じゃあなにを買いに来たの?」
「服」
あまりファッションに興味なさそうなのに。たまたまかな?いつも同じ服着てるよね?女の人の服はわからないから違うかもしれないけど。
「破れた」
「あ、うん。見せなくていいから」
右手を挙げて脇を見せてくるから、そっと手を添えて降ろしてあげる。
「破れたから買いに来たの?」
「うん。最後の一枚だから」
「あれぐらいなら繕えばまだ着れるよ」
「? 破れた服は着ない決まりなの」
ほんのちょっぴりのほつれだったんだけど。まじまじ見たわけじゃないけど見えちゃったの。
「この村って服屋さんあったっけ?」
「あった」
「そう? あれからずっとここにいるけど、見た記憶ないんだけどなぁ」
「あるの。こっち」
ずんずん歩いていく彼女のちょっと後ろについていく。しっかりとした足取りだ。うん? なんでキョロキョロしてるのかな?
「……ない」
「ないの?」
「あったの」
「ないよね」
呆然と立ち尽くしている目の前の家は、どう見ても民家。これが服屋なら知る人ぞ知る隠れ家すぎる。
「本当にあったの。だって、これ作ってもらったもん」
「場所間違えてるんじゃ」
「間違えない。ちゃんと覚えられるの」
「でも……あ、ちょっと!」
いきなりドアハンドル引っ張る?鍵かかっててよかったよ。
「まずノックしようね」
「ここの人に作ってもらったの」
「うん。だからまず、ここをコンコンってしようよ」
首をかしげてるから、かわりにノックする。二度三度してしばらく待つ。
お留守のようだ。
「いないみたいよ」
「あったもん」
「そうだね。あ、すみません。ここ服屋があったと思うんだけど」
仕方がないので通りすがりのおばさんに聞いてあげよう。
「ああ、あったね。何年か前に娘さんの嫁入りについていっちゃった。いい腕してたのに、残念よね。古着もいいの扱ってたし」
「そうなんですね。あ、じゃあ他に仕立て屋ってどこにあるのかな?」
「ないのよ。不便でまいるわぁ」
お礼を言って彼女を見る。なんだその顔は。
「ね? あったでしょ」
ドヤ顔してる場合じゃないでしょ。
「服屋さんないって」
「あ……どうしよう」
そうだよ。君は服買いに来たんでしょ。




