↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死ねない二人は今日も死なない  作者: 松倉夜海
出会い編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/32

三度目まして

「あ」

「あ」


同時に声を上げていた。


「なんでいるの?」

「なんでいるの?」


これまた同時に。

ここは森じゃない。村、だ。そんなとこで彼女を見かけたら驚くでしょ。


「買い出し」


なるほど。冬が近づいているもんね。

……ここ最近曇りだったのは偶然だよね?


「おまえは?」

「ご飯食べに行ってる」

「……はい、あげる」

「……ありがとう」


かばんにダイレクトに入れてるんだね。

飯屋に行く必要がなくなったので、なんとなく彼女と一緒に歩きだす。ぼりぼりともらった完全食をかじりながら。よかった飲み込めるタイプだ。


「たくさん買うでしょ?持てる?」

「たくさん?買わない」

「冬前の買い出しじゃないの?」

「なに、それ」


この辺りは豪雪地帯じゃないけど、冬はほどほどに寒いって聞いたんだけど。雪も降ったり降らなかったりするって。


「あ、そうか。完全食があるもんね」

「意味わかんない」

「えっとね、冬になると食べるものなくなるでしょ?だからみんな食糧なんかを買い込んで備えるんだよ」

「へー」


あ、興味ないこと言ってごめんね。


「じゃあなにを買いに来たの?」

「服」


あまりファッションに興味なさそうなのに。たまたまかな?いつも同じ服着てるよね?女の人の服はわからないから違うかもしれないけど。


「破れた」

「あ、うん。見せなくていいから」


右手を挙げて脇を見せてくるから、そっと手を添えて降ろしてあげる。


「破れたから買いに来たの?」

「うん。最後の一枚だから」

「あれぐらいなら繕えばまだ着れるよ」

「? 破れた服は着ない決まりなの」


ほんのちょっぴりのほつれだったんだけど。まじまじ見たわけじゃないけど見えちゃったの。


「この村って服屋さんあったっけ?」

「あった」

「そう? あれからずっとここにいるけど、見た記憶ないんだけどなぁ」

「あるの。こっち」


ずんずん歩いていく彼女のちょっと後ろについていく。しっかりとした足取りだ。うん? なんでキョロキョロしてるのかな?


「……ない」

「ないの?」

「あったの」

「ないよね」


呆然と立ち尽くしている目の前の家は、どう見ても民家。これが服屋なら知る人ぞ知る隠れ家すぎる。


「本当にあったの。だって、これ作ってもらったもん」

「場所間違えてるんじゃ」

「間違えない。ちゃんと覚えられるの」

「でも……あ、ちょっと!」


いきなりドアハンドル引っ張る?鍵かかっててよかったよ。


「まずノックしようね」

「ここの人に作ってもらったの」

「うん。だからまず、ここをコンコンってしようよ」


首をかしげてるから、かわりにノックする。二度三度してしばらく待つ。

お留守のようだ。


「いないみたいよ」

「あったもん」

「そうだね。あ、すみません。ここ服屋があったと思うんだけど」


仕方がないので通りすがりのおばさんに聞いてあげよう。


「ああ、あったね。何年か前に娘さんの嫁入りについていっちゃった。いい腕してたのに、残念よね。古着もいいの扱ってたし」

「そうなんですね。あ、じゃあ他に仕立て屋ってどこにあるのかな?」

「ないのよ。不便でまいるわぁ」


お礼を言って彼女を見る。なんだその顔は。


「ね? あったでしょ」


ドヤ顔してる場合じゃないでしょ。


「服屋さんないって」

「あ……どうしよう」


そうだよ。君は服買いに来たんでしょ。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。