おまつり?
隣で女性が寝ている。ドキドキして眠れない。
――なんてことは全くなく、ぐっすり寝てました。
昨日の夜、風呂から出てからはちょっと平常心失くしちゃって、彼女に追い縋っていたけど。
「おねがい!たまに、たまにでいいから!家に遊びに行っていい?」
だってないんだもん!
湯船のある風呂のあるところがっ!王都はあるよ。領都もあるところはある。ただし、こういう高級宿だけ。公衆浴場は知っている限り、全部サウナなんだよ。
面倒なんだよ、高級宿に泊まるの。
本来なら旅姿まんまなんて、門前払い。貸服屋でまともな服借りるか、ちゃんと誂えるしかない。どうせいるものだしって誂えても、バッグにいれっぱにしてるからしわくちゃ。そうなるとお断りされることあるんだもん。
お風呂作るなんて聞いたら、絶対入りたいじゃん。
「お風呂入ったら、すぐ帰るから! お願い」
女性の家に風呂入りに行くって、どうなの?
わかってる。でもこの際常識は横に置いておこう。だって風呂だよ?
「……どうやって来るの?」
「あ」
そうだよね、迷いの森だったよね。
「……たどり着けることが出来たら、お風呂入らせて」
やだなー。ボクタチ仲良くやってきたじゃないか。
……そんな不審者を見る目で見ないで。
「クッキー。クッキーたくさん持っていくから」
「いいよ」
俺が言うのもなんだけど、もっと危機感もって?
そんな交渉を経て、ぐったりと疲れて爆睡ですよ。
「……おはよう」
動く気配を感じて目を開ければ、まだ夜も空けてないのに、全身洗浄(着衣状態)している彼女がいた。
「早いね」
「太陽出る前に綺麗になってないとダメだから」
超朝方だね。
「本当はもう会えないからしなくていいの」
「……そっか」
わかんないけど、あるよね、そういうこと。
意味はなくても、なんとなくやめられないこと。
とりあえず、まだレストランもどこも開いてない時間だから、彼女が万能薬もどきを作るとこを見物させてもらう。
一日一本ずつ作って渡すことで決まったよ。
テーブルに座って、草を丁寧に、丁寧に扱っている彼女の顔は、いつもより大人びて見える。
普段の顔も可愛いけど、こういう顔も素敵だね。とっても凛々しい。
うん、ちゃんと見てるから、いちいちこっち見なくていいよ。
というかドヤ顔されても、すごいかどうかわかんないんだよ。
「これで、後はしばらく置いておくの」
「しばらくって、どれぐらい?」
「今だと太陽が沈むくらいまで」
それはずっとは見てられないね。
「じゃあ、服買いに行く?」
「行く」
朝ごはんはどうしようかな。
朝から昨夜みたいなやつは重いし。あ、ちょうどいいね。
外に出たら人でにぎわっている。向うの方には露店も出てるのが見える。
「そういえば、今日お祭りだって」
「おまつり?」
「この町のなにかを町の人みんなでお祝いするんだ」
詳しいことは知らないよ。
「変わったもの売ってたり、いろんな芸を見せてくれたりするから行ってみようか?」
「……でも服屋」
「じゃあ服屋さん寄ってから、お祭り見ようね」
「うん!」




