いっしょ
予約していた時間も過ぎちゃったし、押し問答を続けている暇はない。
なにがなんでも絶対風呂に入りたい。
「ここがお風呂です」
正確にはまだ脱衣所だけどね。そうだよね、貸し切りだもんね、男女で別れたりしてないよね。
「まず、ここで服を脱ぎます」
「服屋じゃないのに?」
「お風呂はいいの」
本来ならいいんだよ、本来なら。今の状況がアウトなだけで。
「それで大切な話があります」
真剣な顔で彼女が頷く。
「本当は女の人以外がいるお風呂には、入ってはダメです」
「おまえ、女だった?」
「男だよ。今日は特別!初めてだから教えないといけないでしょ?」
混浴のところもあるからね。蒸し風呂でも混浴って言うのかな?
まあでも混浴のところはさすがに着衣だけどね。
いや同性だけのとこでも着衣のところあったな。
「そして、今日は下着を着たまま入るけど、お風呂屋さんによっては全部脱ぐところもあります。店の人に聞いてね」
「村ではお風呂屋いかない」
「そう。じゃあいいや」
だって言葉だけでお風呂の入り方を教えるなんて無理なんだもん。
「脱いでいい?」
えらいね、確認できるようになった。
うなずいて自分も脱ぐ。もちろん下着履いてるからね!
「ここで、かけ湯……この桶でお湯をすくって、体にかけて」
桶を手渡し、お湯を張っている湯舟を指す。
「……俺にじゃなくてね……いい、貸して」
君にお湯をぶつけられるのは久しぶりだね。うん、乾かしてくれなくていいからね。
「こうやって、優しく自分にかけるんだ」
肩からゆっくりお湯をかけてあげる。
「熱くない?」
「大丈夫。もっと熱くてもいい」
なかなか通ですなぁ。熱めが好みですか。
自分にもかけ湯して、先に湯舟に入る。
「おいで。ゆっくり滑らないように気を付けてね」
立ったまま、彼女の手を取り湯舟へ誘う。
「そーとね、座って。こっち向かないで。大丈夫だから向う向いたままで!」
足を折って、体を沈めていく。
不安げに体ごと俺の方に向けてくるから、慌てて向きを直す。
いくら下着着てるって、下着なんだよ!薄いんだよ!濡れたらどうなると思ってるんだ!
「肩までつかってね」
気持ちよくなったのか、背中を俺の体にもたれさせてきた。
こっちはなるべく触らないように、見ないようにしてるというのに!
「気持ちいい?」
「きもちいぃ」
声ものんびりと間延びしている。
「こんな風にお湯を張っているお風呂には、まずお湯をかけて体をきれいにしてから、静かに入るんだよ?」
「かけなくても綺麗にしてる」
「それでもお湯をかけてから入る決まりなんだ」
ぶっちゃけ君に洗ってもらった方が汚れは落ちてるよ。
「蒸し風呂っていうのはね、お湯はないんだけど、熱い湯気で温まるんだ」
「水蒸気?」
「そう。俺はあんまり入らないかな。やっぱりお風呂と言ったらこれでしょ」
サウナじゃ入った気にならないんだよね。外行って、川を少し堰き止めてそこに火魔法ぶち込んで、簡易風呂入るしかないんだよね。夏場は面倒だから水浴びで済ますけど。全部の村にこのタイプの風呂できないかな。
髪も体も洗わなくて大丈夫でしょ。ぴかぴかだし。
「ぬるくなったね、もう少し熱くする?」
「うん」
火の玉を出して、体に絶対当たらないところへ落とす。
「なにしてるの?」
「お湯を温めてるんだよ」
「? こうすればいいよ」
お?徐々にあったかくなってる!なんで?
「水の中の粒を震わせて、摩擦熱を発生させるの」
あ!電子レンジか!
目からうろこだね。すごく無駄な方法取ってたんだね、俺は。
…………試したけど、できなかったよ!
少し熱めになったけど、いいねぇ。癒されるね。
「気に入った?」
「うん」
それはなにより。
「帰ったら家にお風呂作る」
なんですと!?




