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死ねない二人は今日も死なない  作者: 松倉夜海
領都編

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23/32

いっしょ

予約していた時間も過ぎちゃったし、押し問答を続けている暇はない。

なにがなんでも絶対風呂に入りたい。




「ここがお風呂です」


正確にはまだ脱衣所だけどね。そうだよね、貸し切りだもんね、男女で別れたりしてないよね。


「まず、ここで服を脱ぎます」

「服屋じゃないのに?」

「お風呂はいいの」


本来ならいいんだよ、本来なら。今の状況がアウトなだけで。


「それで大切な話があります」


真剣な顔で彼女が頷く。


「本当は女の人以外がいるお風呂には、入ってはダメです」

「おまえ、女だった?」

「男だよ。今日は特別!初めてだから教えないといけないでしょ?」


混浴のところもあるからね。蒸し風呂でも混浴って言うのかな?

まあでも混浴のところはさすがに着衣だけどね。

いや同性だけのとこでも着衣のところあったな。


「そして、今日は下着を着たまま入るけど、お風呂屋さんによっては全部脱ぐところもあります。店の人に聞いてね」

「村ではお風呂屋いかない」

「そう。じゃあいいや」


だって言葉だけでお風呂の入り方を教えるなんて無理なんだもん。


「脱いでいい?」


えらいね、確認できるようになった。

うなずいて自分も脱ぐ。もちろん下着履いてるからね!


「ここで、かけ湯……この桶でお湯をすくって、体にかけて」


桶を手渡し、お湯を張っている湯舟を指す。


「……俺にじゃなくてね……いい、貸して」


君にお湯をぶつけられるのは久しぶりだね。うん、乾かしてくれなくていいからね。


「こうやって、優しく自分にかけるんだ」


肩からゆっくりお湯をかけてあげる。


「熱くない?」

「大丈夫。もっと熱くてもいい」


なかなか通ですなぁ。熱めが好みですか。

自分にもかけ湯して、先に湯舟に入る。


「おいで。ゆっくり滑らないように気を付けてね」


立ったまま、彼女の手を取り湯舟へ誘う。


「そーとね、座って。こっち向かないで。大丈夫だから向う向いたままで!」


足を折って、体を沈めていく。


不安げに体ごと俺の方に向けてくるから、慌てて向きを直す。

いくら下着着てるって、下着なんだよ!薄いんだよ!濡れたらどうなると思ってるんだ!


「肩までつかってね」


気持ちよくなったのか、背中を俺の体にもたれさせてきた。

こっちはなるべく触らないように、見ないようにしてるというのに!


「気持ちいい?」

「きもちいぃ」


声ものんびりと間延びしている。


「こんな風にお湯を張っているお風呂には、まずお湯をかけて体をきれいにしてから、静かに入るんだよ?」

「かけなくても綺麗にしてる」

「それでもお湯をかけてから入る決まりなんだ」


ぶっちゃけ君に洗ってもらった方が汚れは落ちてるよ。


「蒸し風呂っていうのはね、お湯はないんだけど、熱い湯気で温まるんだ」

「水蒸気?」

「そう。俺はあんまり入らないかな。やっぱりお風呂と言ったらこれでしょ」


サウナじゃ入った気にならないんだよね。外行って、川を少し堰き止めてそこに火魔法ぶち込んで、簡易風呂入るしかないんだよね。夏場は面倒だから水浴びで済ますけど。全部の村にこのタイプの風呂できないかな。


髪も体も洗わなくて大丈夫でしょ。ぴかぴかだし。


「ぬるくなったね、もう少し熱くする?」

「うん」


火の玉を出して、体に絶対当たらないところへ落とす。


「なにしてるの?」

「お湯を温めてるんだよ」

「? こうすればいいよ」


お?徐々にあったかくなってる!なんで?


「水の中の粒を震わせて、摩擦熱を発生させるの」


あ!電子レンジか!

目からうろこだね。すごく無駄な方法取ってたんだね、俺は。


…………試したけど、できなかったよ!



少し熱めになったけど、いいねぇ。癒されるね。



「気に入った?」

「うん」


それはなにより。


「帰ったら家にお風呂作る」


なんですと!?







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