おふろ
さて、と。
まず第一の目的は達成できた。
おいしくて、楽しいごはんだった。
次はお風呂。さすがに部屋にはついてない。いわば貸切風呂スタイル。
おなかも落ち着いたし、そろそろお目当ての風呂に行きたい。
「お風呂、行ってくるね」
「おふろ?」
「そう。ここのはあの村にある蒸し風呂じゃなくて、お湯の中に入るやつだよ」
公衆浴場はあるんだけど。風呂っていうくせにサウナなんだよね。
「おゆにはいる……?なんのために?」
「体を清潔にするため。蒸し風呂も悪くないけど、やっぱり風呂はお湯につからなきゃ」
「むしぶろ?蒸されるの?」
「え?」
まさか風呂を知らない?そんな馬鹿な。
だってこの子全然汚くないよ。なんだったら、俺の方が汚いよ。彼女はピカピカだよ?あれ?たしか君も町に着いて、一直線買取屋だよね?俺なんて三日に一度は水浴びしているけど、軽く臭いよ。
「なんでそんなにピカピカなの?」
「ぴかぴか?」
「汚れてないよね。そういえば服も綺麗だよね…………魔法?」
風呂と洗濯の魔法があるならぜひご教示いただきたい!
「そう!まずね水を出すでしょ」
彼女の前に水球が浮かぶ。
「これで体を覆うでしょ?あ、息ができるようにしてね」
いける。まだ、いける。たぶん。
「そして、水を細かく振動させるだけ」
滅茶苦茶細かい泡が出て、水が真っ白に見えますけど?
なんか、キーンと頭に響く音もしてるんだけど?
「……俺には無理っぽい」
一応水球を出して試してみたけど、波打つだけであんな泡なんて出ないもん。
「どうして?こう、だよ?」
全身水で覆われる。ちゃんと鼻と口のところは開いてるのがすごいね。
水っていうけどぬるま湯だね。お湯なんて出せませんけど?
パチパチと炭酸なのかなと思ったけど、ただの泡だね。前が全く見えないほど真っ白だよ。
「それで、これは汚れてるから捨てるんだけど」
部屋に捨てない常識を知っていて心底感心するよ。いや、マジありがたい。
「えっと……火で一瞬で消す、とかは?」
きっとこの子ならそれぐらいできるでしょ。
「いいけど、爆発するよ?」
「良くないね。やめよう。絶対しないでね」
なんだっけ?ああ、水蒸気爆発だ。あっぶねー。
「いつもはどうしてるの?」
「森に投げ捨ててる」
そうだよね、外なら問題ないよね。
「あ、じゃあ、ここから、あっちの方には投げれない?」
「できる」
さすがだよ!窓から見える城壁の向こう側の平原。
……かなり遠いけど、もう暗いし大丈夫でしょう。
「乾かす」
凄い、温かい。全身ドライヤーだ。
「これは風魔法と火魔法?」
「そう。直接火魔法を使うんじゃなくて、風に火の熱気だけを——」
彼女の解説を聞きながら、ドライヤーって作れたんだって、なんとなく思った。
「……じゃあ、お風呂行ってくる」
「きれいになってる」
なんか普段よりきれいになってる。髪も体も、来ている服までもピカピカだ。
「きれいにはなってるんだけどね、お風呂はそれだけじゃなくて、気持ちいいんだ」
やっぱり湯船に浸かって「あ゛あ゛~~」って唸りたい。
「きもちいい?」
「そう。俺はすごく好きなんだ」
滅多には入れないのが悩ましいところだよねぇ。
「私も行く」
「え?」
「お湯につかってみたい」
「え? ちょっ」
「気持ちいいんでしょ?」
それは、そう。




