ごはん
町から出て俺が野宿することもできるけど……。
でもなぁ、癒されに来たんだよ、俺は。
そのために毒で苦しみながら狩りしたのに。
「俺と一緒の部屋でいい?」
「いいよ」
直った服を着た彼女は即答だよ。
ちょっと面倒になって、部屋は出ないで後ろ向いてたら大丈夫ってことにした。彼女もズルしたし、いいよね。
「じゃあ、ご飯食べに行く?」
うん、わかってた。カバンからそれを出すのは。
「今日はご飯屋さんでご飯屋さんのご飯食べたいんだ」
「いらない?」
「ごめんね。君も一緒に行こうよ」
だっておいしいもの食べたいんだもん!
「なにが好き?嫌いな食べ物や、食べれないものある?」
「……わからない」
「そっか、じゃあおいしいもの食べて好きなものを探そうね」
「おいしい?ご飯においしさはいらないの。ご飯は効率だから」
なんという恐ろしいこと言ってるんだ。
「一番大事なものだよ、おいしさは」
「でも……栄養取らないと」
「いつも、あの栄養たっぷりの完全食食べてるんでしょ?」
自慢の一日一食の完全栄養食。
「じゃあ、旅の間ぐらいは、おいしいもの食べていいんじゃないかな」
「いい、の?」
「いいよ」
おいしいものが嫌いなわけじゃないんだね。すごくいい顔で笑ってる。
クッキー食べた時と同じ顔だ。
宿屋がしている結構洒落たレストラン。
旅姿まんまの俺と、着古したワンピースの君。
さすがに無理だと思って、貸服を借りようとしたけど、個室を用意してくれたんだってさ。
買取屋の口利きが効いてるね。そりゃ万能薬だもんね。あ、もどきだね。
「俺が勝手に頼んでいい?」
「うん」
なにが好きかわからないから、肉に魚に野菜。それぞれ頼もう。
あ、たくさんクッキー食べてたから、そんなに食べれないかな?
まあいい、無理だったら俺が食べればいいか。
白パンに感動して、野菜のグリルでこれは野菜じゃないと疑って。
お肉はジビエが好きみたい。こんなことなら倒した大猪の肉、少しもらっておけばよかったな。あ、腐るか。
魚はあまり食べなかったね。このあたりだと塩漬けばっかりだもんね。俺もあまり好きじゃない。たぶん君も、海の近くの新鮮な海鮮食べたら好きになるよ。
そしてシメはこれでしょう。
リンゴのタルト、です。
クッキーであれだけ感動したんだ。このガツンと甘くておいしいタルトを食べた君が楽しみだよ。
「――こ、れはっ」
一口食べてフォークを置き、目の前で指を組んだ。
「カリグス様。申し訳ありません。これはきっと神の食べ物です」
「……人間の食べ物だよ」
「こ、こんなに……こんなにおいしいのに?」
頷いて見せると、フォークを手に取り、恐る恐る口に運ぶ。
「……やっぱり、あれは食べ物への冒涜」
「……もしかして……完全食?」
「うん。飲み込むのが苦痛なのは食べ物じゃない」
その意見には完全同意だけど、作った本人が言うことじゃないだろ。
「俺のも食べる?」
「いいの?!」
食べたいけど、お腹いっぱいになっちゃったからね。
「もしや、あなたが神?」
「ちがう」




