通訳
予定通り。うん、予定通り、問題なし。
贅沢にお風呂のある宿屋に泊まる。そう決めてたから、その通りなんだけど。
まさか同じ宿屋に泊まることになるとはね。
あの後は、本当に大変だったね。
一番のお偉いさんまで、出てきたもんね。
「本当ですか!?疑うわけではありませんが、一つ作ってみていただけないでしょうか?」
「嫌。今から作ってたら、服屋行けない」
「……はい?」
「夜は服屋開いてない」
「あー……作るのに時間かかるんだね?」
こくんと頷く彼女とは対照的に、買取屋の人たちは、だから?って顔してるね。
「そう。まず、外皮を剥ぐでしょ。茎だけじゃなくて葉もしないとダメ。それを純水の中でするのよ。空気に触れないほうが薬効が高くなるの。そして、それを細かく刻んでから――」
「そうなんだ。それでどのぐらいの時間、かかるの?」
「今なら半日で一本作れる」
ぽかん顔継続中の買取屋さんたちは放っておいて、胸を張ってる彼女の頭を撫でてあげる。
「すごいね。でもそれじゃ、たしかに服屋さん閉まっちゃうね。っていうか、服買いに来てたんだ」
「たくさん買う」
「持てるだけだよ?」
「うん」
最後の一枚って言ってたもんね。あれから何年だっけ?まあよくもったね。
「ということらしいので、明日来てもらうようにしたら?」
「もう帰っていい?」
「いいんじゃない」
なんとなくで一緒にいたけど、俺もそろそろ宿、探さないといけないしね。
「お待ちください!半日で?それよりジュンスイの中で、とは?そのようなこと今まで聞いたことない!薬効が違うなど……」
「本当だもん」
「ですが……」
「ほらっ!飲んで。他のとは絶対違うから」
カバンから瓶を出して、お偉いさんの胸に押し付けてる。
あったんだね、現物が。早く知りたかったな。
「……おいっ今すぐ調べてもらえ」
瓶を受け取って、すぐ横の人間に渡した。受け取ったそいつは慌てて部屋から出ていった。
「なんで持っていくの」
「もちろん、あちらも買取らせていただきますので。薬師に見てもらいますので、もうしばらくお待ちいただけますか」
「えー」
「……俺は、もう帰りますね」
もう俺がいなくて大丈夫でしょ。
「どこいくの?」
「宿屋」
「じゃあ私も服屋行く」
「先に宿屋決めた方がよくない?」
ここなら何軒もあるだろうけど、万が一満室だと困るもんね。
「お待ちください。お願いですからもう少々。もう少々だけ!」
「やだ。宿屋決めて、服屋行くの」
え?そんな縋るような目で見られても。
おじさんにそんなことされても嬉しくないんだけど。
そもそも俺、無関係だよ。
「当方でお部屋はお取りしますので。どうか」
「……俺は、いらないでしょ?」
「おまえ、帰るの?じゃあ、私も帰る」
だからそんな目で見ないでよ。
「…………もう少しここにいて欲しいんだって」
「宿屋は?」
「取ってくれるって」
「服屋は?」
「……今日は無理かな?」
だよねー。ご不満だよね。
俺もだよ。
「服買いに来たのに」
「そうだね」
いいおじさんが拝むんじゃない。
「……クッキー、くれるって」
「ホント!?」
ちらっと見る。
「はい!ご用意させていただきます!!」
「じゃあ、いてもいい」
今度は俺も食べれたよ。
えっと……なんで部屋がひとつなのかな?




