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死ねない二人は今日も死なない  作者: 松倉夜海
領都編

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18/31

クッキー

なぜか向かいあって、お茶を飲んでる。


だって、待つっていうんだもん。帰り損ねちゃったよ。


いつまでも受付前にいるわけにもいかず、どうしたものかと思ってたら、ちゃんと個室に案内してくれた。ふかふかのソファに、お茶にお茶菓子まで出してくれるなんて、滅茶苦茶VIP待遇じゃない?こんな部屋、俺、入ったことないよ?あるのも知らなかったよ。


本当にあの草なんなの?





「……なに?」


すっげー見てくるんだけど、まさに凝視。


「それ」

「……これ?」


口に運ぼうとしていた茶菓子を少し前に差し出す。


「もしかしてクッキー?」

「そうだね」


こんなふうにさらっと出してもらえるようなものじゃないのにね。それも付き添いの俺にまでなんて。本当に君はVIPなんだね。


「すばらしい、たべもの」

「ん?」

「クッキーは人類の英知の詰まった素晴らしい食べ物」


この子はなにを言ってるのかな?


「ずっと、ずっと食べたかった」

「ええぇ……」

「どこにあるかわからなくて」


たしかに高級品だけど、普通に売ってるでしょ。この規模の町なら、どこででも。


「こんなところで出会えるなんて……っ」


持っていたクッキーを右に動かす。彼女の顔がついてくる。左に動かす。やっぱり同じく。


まさに釘付けだね!


仕方がないな。少し開いている口に突っ込む。

遊んじゃったお詫びだ、もってけドロボー。


涙目になっていた目を大きく見開いて、それでも口をもぐもぐと動かしはじめた。


「やっぱり素晴らしい……クッキー……これが食べ物」


残っているクッキーも彼女にあげた。

これで自分で食べれるほど非道じゃないよ。

俺の分まで味わって食べたらいいよ、うん。


……チクショウ。







「そういえばさ」


未練がましく彼女の口に消えていくクッキーを見てしまうね。


「さっきの草さ、精製したらもたないの?」


「どういうこと?」

「精製ってことは草から、違うものになるんだよね?」

「そう。万能薬っていう薬になる」

「万能薬!?」


すげーな、あの草!そりゃVIP待遇だわ。


「すごくない。全然万能じゃない。嘘だもん」

「あ、嘘なんだ」

「ただ、万能に今のところ一番近づいている薬」


いや、十分すごいよ?


「未完成だもん」

「そっか」


譲れないらしい。


「まあ、その万能薬……もどき?にしたら日持ちしないの?」

「するよ。ちゃんと正しく保管したら一年はもつ」

「じゃあ、さ。次からは薬にしてから売った方がいいんじゃない?」


きっとその方が買取額も上がりそうだし。


「いつもはそうしてる」

「いつもって、あの村?」

「うん。馬車で移動したら割れちゃうからたくさんは運べない」

「ああ、なるほど」


そりゃそうか。本職が思いつかないわけないよね。

あの村、辺境の割に発展してると思ったら、万能薬仕入れているからか。


「特別な道具もいるだろうし、この町で万能薬は作れないよね?」

「むり」

「だよねぇ」

「万能薬はまだ作れない」

「……万能薬もどきは?」

「作れるよ」


うん、俺たちは今無駄な時間を過ごしてるね。




あ、君は無駄じゃなかったけどね!







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