クッキー
なぜか向かいあって、お茶を飲んでる。
だって、待つっていうんだもん。帰り損ねちゃったよ。
いつまでも受付前にいるわけにもいかず、どうしたものかと思ってたら、ちゃんと個室に案内してくれた。ふかふかのソファに、お茶にお茶菓子まで出してくれるなんて、滅茶苦茶VIP待遇じゃない?こんな部屋、俺、入ったことないよ?あるのも知らなかったよ。
本当にあの草なんなの?
「……なに?」
すっげー見てくるんだけど、まさに凝視。
「それ」
「……これ?」
口に運ぼうとしていた茶菓子を少し前に差し出す。
「もしかしてクッキー?」
「そうだね」
こんなふうにさらっと出してもらえるようなものじゃないのにね。それも付き添いの俺にまでなんて。本当に君はVIPなんだね。
「すばらしい、たべもの」
「ん?」
「クッキーは人類の英知の詰まった素晴らしい食べ物」
この子はなにを言ってるのかな?
「ずっと、ずっと食べたかった」
「ええぇ……」
「どこにあるかわからなくて」
たしかに高級品だけど、普通に売ってるでしょ。この規模の町なら、どこででも。
「こんなところで出会えるなんて……っ」
持っていたクッキーを右に動かす。彼女の顔がついてくる。左に動かす。やっぱり同じく。
まさに釘付けだね!
仕方がないな。少し開いている口に突っ込む。
遊んじゃったお詫びだ、もってけドロボー。
涙目になっていた目を大きく見開いて、それでも口をもぐもぐと動かしはじめた。
「やっぱり素晴らしい……クッキー……これが食べ物」
残っているクッキーも彼女にあげた。
これで自分で食べれるほど非道じゃないよ。
俺の分まで味わって食べたらいいよ、うん。
……チクショウ。
「そういえばさ」
未練がましく彼女の口に消えていくクッキーを見てしまうね。
「さっきの草さ、精製したらもたないの?」
「どういうこと?」
「精製ってことは草から、違うものになるんだよね?」
「そう。万能薬っていう薬になる」
「万能薬!?」
すげーな、あの草!そりゃVIP待遇だわ。
「すごくない。全然万能じゃない。嘘だもん」
「あ、嘘なんだ」
「ただ、万能に今のところ一番近づいている薬」
いや、十分すごいよ?
「未完成だもん」
「そっか」
譲れないらしい。
「まあ、その万能薬……もどき?にしたら日持ちしないの?」
「するよ。ちゃんと正しく保管したら一年はもつ」
「じゃあ、さ。次からは薬にしてから売った方がいいんじゃない?」
きっとその方が買取額も上がりそうだし。
「いつもはそうしてる」
「いつもって、あの村?」
「うん。馬車で移動したら割れちゃうからたくさんは運べない」
「ああ、なるほど」
そりゃそうか。本職が思いつかないわけないよね。
あの村、辺境の割に発展してると思ったら、万能薬仕入れているからか。
「特別な道具もいるだろうし、この町で万能薬は作れないよね?」
「むり」
「だよねぇ」
「万能薬はまだ作れない」
「……万能薬もどきは?」
「作れるよ」
うん、俺たちは今無駄な時間を過ごしてるね。
あ、君は無駄じゃなかったけどね!




