高額買取り
おいしいもの食べに行こう。
素朴なやつじゃなくて、滅茶苦茶手が込んでスタイリッシュなもの食べよう。
あ、そうだ!贅沢ついでに、お風呂がついてる宿に泊まっちゃおうかな。
うん、そうしよう。
贅沢するには懐が心もとないかも。
したい贅沢するためには都会行かないとダメだよなぁ。さすがに都会の近くには稼げそうな不思議生物はあんまりいないんだよね。
仕方がない、道中で狩るか。なにがいいかな。あんまり物理的に大きい奴は面倒くさいな。重いし、なにより悪目立ちしちゃうからね。
どこがいいかな?
領都もピンキリだからね。いっそ、王都行こうかな。……やっぱりやめよう。あんまり大都会過ぎても、居心地悪いもんね。
海が近くにあるあそこにしようかな? 新鮮な海鮮。いいね! うーん、でもかなり遠いなぁ。今はなるはやで、癒されたいなぁ。一番近くはどこだろう……まあ、可もなく、不可もなくかな。そこでいいや。
よし、じゃあ、まず資金作りしますかね。
領都の良いところは、領主がいるだけあって、ちゃんと組織があることだよね。
職業斡旋所も買取屋もあるもんね。
まだ代官を派遣しているような村ならあるけど、代官屋敷すらもない村じゃ、村にお金すらないこともあるよね。
そうだよなぁ、あんな村に現金置いてるわけないって気づかなきゃいけなかったね。何日も牛舎の前で張りこみまでしてさ。まあ牛さんたちが可愛かったからいいけど、牛乳もおいしかったしね。
「買取お願いしたいんだけど」
「かしこまりました。こちらでよろしいですか?大物ですと裏口に回っていただくことになりますが」
「うん。ここでいいよ」
大物は諦めて、なるべく小型で珍しいものを選んだからね。
手提げ袋を受け付け台に置く。
「拝見しますね。……これはっ」
どう?珍しいでしょ。
「たしか高額買取だよね、このきれいなチョウチョ」
「もちろんです。こんな完全な姿なんて、運よく死んでいるのを見つけるぐらいでしか手に入らないんですよ。それが四匹も」
すごいでしょ?
「よろしければ、討伐方法をお教えいただけませんか?もちろん対価はお支払いいたします」
「気づかれないように近づいて、網で捕獲して水の中に入れて死ぬのを待つだけ」
「……そうですか。いえ、こちらが不躾でした。そうですよね、教えていただけませんよね」
本当のこと言ったんだけど。
まあずっとこの蝶は致死量の毒をまき散らしてるもんね、風で吹き飛ばしたら、羽根がすぐとれちゃうからね。完全な形でゲットするには毒を我慢して捕まえるしかないよね。苦しいけど、なんとか我慢できるよ。
「では査定いたしますので、身分証をご提示ください」
町の入り口でもらった紙を渡す。
「特別通行証……こちらですと買取額が一段低くなりますけど」
「いいよ。旅人だからね、身分証持ってないから」
おかげで毎回高い高い入場税と保証金取られてる。
「よろしかったら領都民になるためのご案内をいたしますが」
「いらないよ。都民になるためには色々しなきゃいけないでしょ?」
身分証なんてどうせ作ってもすぐ使えなくなるし。
「高位の魔物を狩れる方なら、都民になれる可能性は高いと思いますが」
「うーんと……同じところに、ずっといるの無理なんだよね」
「力のある請負人ほど、そういう気質の方が多いように思います」
「請負人なんていい加減だからね。まともな人は、ちゃんとまともな職につくよ」
ぶっちゃけ請負人なんて、日雇い労働者だからね。昔は格好良く冒険者とか呼ばれてたっけ。冒険なんてしないから廃れたけど。
さあ懐も温かくなったどころか、熱々になったので、贅沢しますか!
買取所を出ようとして扉に手をかけたら、向こうからノックされた。
「…………はい、どうぞ?」
自分の家じゃないけど、返事した。




