プロローグ
本編に戻りました。
竜の住む谷も、噂だけだった。
もう随分と見かけてないから、久しぶりに見れるかと楽しみだったんだけどね。
そういえば、竜だけじゃない。他の不思議生き物たちも、あまり見かけなくなったな。昔に比べて人の住む場所が増えたもんね。仕方ないのかも。強い不思議生き物たちが、追われた自然の中より食べ放題の人里にくるようになるのは、まあどこでも同じだよね。
アーバンベアならぬ、アーバンモンスター。
「どういうことかな?」
「ですから、支払わないと言っているわけではありません。ただ、少々お時間をいただきたいと」
「うん、それでひと月銀貨一枚ずつ払うって?」
「……はい」
「それ、いつまでかかるかわかってる?」
歩いてたら牛がいた。野良牛かなと思ったけど、やけに人馴れしてるから脱走牛と当たりを付けた。よく今まで無事だったね。ラッキー牛だ。
急ぐ旅路でもないし、牛さんに縄をかけてのんびり散歩しながら村探ししよう。
それで見つけた村は宿屋もない小さな村。
飼い主に引き渡して、すぐに旅立つ予定だったけど、日暮れだったせいか引き留められた。
村長さんの家に泊めてもらって、元脱走牛の乳も飲ませてもらった。
『お一人で旅をされているということは、かなり腕に自信がおありになるのでしょうね』
『そうだね。ほどほどにね』
『大変ぶしつけなのですが――』
世間話のさなかに急に襟を正して頭を下げてきたくせに。
「あれが家畜を襲うから駆除してくれって。金貨五枚でって」
「そうですが……うちみたいな村では、なかなかそこまでの硬貨は……」
「そっちから言い出したことなのに? そもそも五枚じゃ破格なのわかってる?」
泊めてもらったし、感謝のしるしと精いっぱいのおもてなしをしてくれたから、請け負ったのにさ。
あのでっかい猪みたいな奴は肉も食えるし、皮も使える。だから本来なら倍はもらえるのに。
「では……銀貨二枚。いや三枚なら何とかお支払いできますから」
「いや、だからいつまでかかるんだよ。えっと、一年以上かかるじゃないか」
「もちろんその間は私の家に泊まっていただいて構いませんので。食事もご用意させていただきますから、どうか……どうかお願いします」
まあ肉は今日、手に入ったけど、他人に食事分け与えれるほどの余裕はないじゃん、ここ。
「ああ、なるほど? 次あんなのが出ても俺は倒さないよ」
「そんなっ!わたくし共だけでは魔物を討伐するなんて――」
「それはそっちの都合でしょ? だって、いつまでたっても終わらないじゃん」
駆除→分割→減る→駆除→増える。エンドレス。
「肉も皮も全部あのまま置いて行ってあげるから今すぐ払えるだけ払って」
「銀貨……ごまい、なら」
「うん、もうそれでいいよ」
「よろしいのですか?」
「ないんでしょ?しかたないじゃん」
あんなワンボックスカーぐらいある獲物を持ち歩くなんて邪魔だし。
「このご恩は必ず」
「いい、いい。あ、そうだ。今解体してるよね?」
血の匂いがここまで漂ってる。
「さっさと済ませた方がいいよ。あれ、まだ子供だから」
「それは……どういうことでしょう?」
「匂いたどって親が来るかもしれないからね」
まあ来る確率は半々。いやもっと低いかな?
親はマイクロバスほどの大きさだけど、ラッキー牛がいるから大丈夫でしょ。




