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ガンギマリズムV バケ~ション!!  作者: 九空のべる(旧:ジョブfree)
第五章「ステップ5 旅館ではアレに気をつけろ」
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夕食後、夜巳とのチェス

漆紀は宴会場で夕食を食べていた。

旅館の夕食は豪華なもので、何品も小鉢に皿が並んでいた。

琵琶湖の魚料理に、山菜の料理にジビエ料理、これを豪華と言わずになんというか。

隣の席には小太郎と彩那、向かいの席には吉果、ブライアン、舞香が居た。

「これ結構多くて食べきれるか怪しいですね竜王様」

「旅館の飯ってこんだけいっぱい出るもんだよな……これ本当に凄い量だな」

「ああ、食べきれなかったら拙者が食べるでござるよ」

「ああ、お前結構食える方だったもんな」

漆紀は猪のチョップ肉を箸で摘まんで齧る。

「猪のこういう肉は柔らかいもんなんだよな」

「これおいひいれすね竜王様」

漆紀がジビエ肉に対する反応が薄い事に舞香は首を傾げる。

「辰上君、ジビエ肉だなんて珍しいのに反応が薄いわね。慣れているの?」

「ああ先輩、ウチの父さんが便利屋の依頼で害獣駆除とかやってたからさ、ジビエ自体はよく食ってたんだよ」

「なるほど……便利屋って大型害獣の駆除もやるのね」

「それはウチぐらいの話だな」

ブライアンは漆紀の話に興味を持ち、質問を投げる。

「なるほど、便利屋か。なあ、お前害獣駆除やったことがあるのか?」

ブライアンの質問に漆紀は首を横に振る。

「俺は猟銃免許がまだ取れないし、害獣駆除はやってない」

「そうか……Huntingの感想を聞こうと思ったんだけどナ」

「逆にブライアンは銃とか撃ったことないのかよ」

「ないぜ。アメリカって銃社会って言ってるが、全員が発砲経験あるわけじゃない」

「意外だな……」

「オレはそんなもんだ。そうだ、なあ陽本。お前はなんか特別な経験とかないか?」

「ふひっ!? じ、自分? えぇ……東京スカイツリーの頂上からジャンプした経験とか……」

吉果の能力、瞬間移動を使えば高い所からの命綱無しのダイビングが可能である。地べたに衝突する前に瞬間移動すれば、それまでの勢いが消えてそのまま別の場所に着地出来るのだ。

「それは……ぞわっとする話ね。まあ、陽本さんの能力ならそれが可能なのはわかるけど」

舞香は理解こそ示すが、東京スカイツリーからダイブするという光景に鳥肌を立てて少し身をブルっと震わす。

「レグナといい陽本といい、なんで飛び降りがシュミのやつが居るんだよ。そりゃアドレナリンとかドバドバ出そうなもんだけど肝が冷えるだろ」

「ふへへ……やって見るとハマるよ。ジェットコースターなんかより浮遊感が凄いから」

「絶対やんねー、サウナより脳に悪そうだ」

「私も反対です。脳内麻薬を無理矢理出すのってどうかと」

「拙者は、本人が自己責任でやる分にはいいかと」

「オレは命綱無しってのがブルっちまうぜ」

「私もいくら能力があっても怖いわ。ジェットコースターですらレールから外れるのではっていつも恐れながら乗ってるし」

小太郎だけは吉果に賛成だった。

それだけ話すと漆紀は話題に悩む。場が止まってしまった。

漆紀は料理を口に運びながらも、何か突飛なものでもいいから話題はないかと考える。

すると、不意に話題が頭に舞い降りて来る。

「じゃあ、俺だけが知ってる秘密でも話そうか?」

漆紀がそう言い出すと、五人は何を話し出すのかと待ちわびる。

「実はな、俺は未来の夢をみることがある。ありうる可能性の未来なんだが、その中で確定情報なんかもあったりする……例えば月守先輩」

漆紀は舞香へ人差し指を向けると、漆紀と舞香以外の四人は舞香の方を見る。

「月守先輩はヤクザの娘だって言ったら信じるか?」

漆紀がそう言った瞬間、舞香は目を点にして固まり、料理を取る手を止める。

「月守嬢がヤクザ?」

「えぇ?」

「ふひっ? や、ヤクザ?」

「Oh……ジャパニーズヤクザ?」

舞香は首を横に振り「何を言っているの!」と漆紀に疑念を抱く。

「ってのはただの冗談だ。月守先輩みたいな人がヤクザの娘なワケないだろ? だが、そうだな……」

漆紀は吉果の方へと指を向ける。

「陽本、お前は将来酒浸りになる」

「じ、自分が?」

「ああ、酒カスと化したお前を夢で見た」

漆紀が酒カスと形容すると、吉果は信じられない様子で首を横に振る。

「まあそんなところだ。って、話題こんだけなもんだな……」

「無理に話さなくても良いわよ辰上君。無言で料理を楽しむのも良いんじゃない?」

「つってもこれ交流会だし、交流しないとな……まあ、いいか」

それから六人は話題が思い浮かばず、料理を口にしていく。

六人とも、この料理の数々については小さく「旨い」と零していた。

そうして特に話題が各々思いつかないまま食事を終えると、それぞれ解散する。

漆紀は部屋に戻ると、もう一度温泉にでも入るかと考え、再度大浴場へと向かう。

その道中、大浴場の前の卓球台で、夜巳と陽菜が卓球をしていた。

(ああ、温泉とか銭湯って謎の卓球設備があるよな……ちょっと見守るか)

漆紀は夜巳と陽菜の卓球を見守る。

お互いリズムよく球を打ち合い、拮抗している。

夜巳は人間離れしたスピードで対応して打つが、心が読める陽菜はそれを先読みして移動して打ち返している。

「スピードは速いけど、わたしは心が読めるからね! 負けないよぉ~!」

「埒が明かないわね。仕方ない……光陰矢の如し」

夜巳が光陰矢の如しと唱えた瞬間、夜巳の速度が更に加速し対応できない速度になる。

漆紀は知っている、その力が辰上家の固有魔法・理論武装の言技ことわざによる加速であると。魔法による加速を得た夜巳は凄まじい速度で撃ち返し、陽菜は心が読めてもその速度に対応出来ず打ち漏らしてしまう。

「ふう、私の勝ちね。魔法を使ってしまえばこんなものかしら」

「え~っ、ちょっとずるいぃ!」

「あなた、心が読めると言っていたじゃない。それを鑑みればこれくらいハンデよ……ん?」

夜巳は漆紀の存在に気が付き、彼の方を見る。

「どうしたの漆紀?」

「いや、温泉に入ろうと思ったけど夜巳さんが目に付いてな。なんか、夜巳さんが卓球やってるの凄い意外というか似合わないというか……お嬢様っぽくないなって」

「あ~辰上君。君のお姉さんの魔法強くない? ちょっと速すぎると思うんだけど」

「石火矢さん、この人は姉じゃなくて従姉だ」

「でも実質姉みたいなものでしょ漆紀」

「ほんとブレないなあんた。ま、いいや。夜巳さんが活き活きしててなによりだ。俺はもう一回温泉入るから」

「ちょっと待って。漆紀も卓球していかない?」

「いや、俺は」

「折角だし! ねえ、私とやってくれない?」

「……魔法はナシだぜ。俺、球技は苦手なんだけどな」

渋々漆紀は夜巳との卓球に応じることにした。

「じゃあ、やるか」

「ええ!」


三十分後


「なあもういいか夜巳さん。俺温泉に入りたいんだけど」

「もうちょっと、もうちょっとお姉ちゃんと遊んでくれないかしら?」

「もういいだろ。俺、温泉入りたい」

「ぶ~……仕方ないわね。じゃあ、あとで私の部屋に来て。ボードゲームしましょう」

「まあいいけどよ……俺、退屈しのぎも兼ねて温泉はいるしちょっと遅くなるぞ」

「いいわ。じゃあ石火矢さん、これにてお開きということで」

「うん、楽しかったよ辰上さん。じゃあ」

陽菜は立ち去り、部屋へと戻っていく。

「じゃあ俺、温泉入ってくるから」

漆紀はそう言い残して大浴場の暖簾を潜っていく。


更に三十分後


漆紀は大浴場から出て、夜巳の部屋へと移動する。

扉を軽くノックすると、中から「入って良いわよー」と返答が聞こえる。鍵は開いており、漆紀は入り口の扉を開けて部屋に入る。

部屋には窓際の椅子に座って本を読む夜巳の姿があった。

「来たわね。雑談でもしながらチェスをしましょう。小さいポータブルチェスを持って来たから」

そう言って夜巳は荷物から百円ショップで売ってそうな安いチェスセットを取り出す。

「天音もそうだったけど、夜巳さんもチェス好きなのか?」

「好きって言うか、吸血鬼がやってそうなボードゲーム感があるじゃない」

確かに西洋のボードゲームであり、チェスという響きは吸血鬼との相性が良い様に漆紀も思えた。

「なるほど、確かに」

「さて、あとは冷蔵庫からアレを取り出して……」

夜巳は立ち上がると、冷蔵庫から買っておいたぶどうサワーを取り出す。

「さて、やろうかしら漆紀」

「酒飲みながらやるのか? 判断力鈍らないか?」

「雑談しながらやるんだし、ガチじゃないわよ。面白おかしくいきましょう」

「まあ、いいか。いいぜ、やろうか」

そうして漆紀は夜巳の向かい側の席に着き、テーブルの上に夜巳がチェス盤を開いて駒を置くと、漆紀と夜巳はチェスを始めた。

「まず聞くわ。学徒会の人達とは仲良くなれた?」

「まあ、それなりにって感じか。月守先輩はそれなりだけど、レグナがちょっとダメそうだな。あいつ、未だに俺をファッキンジャップって言うからな」

「はしたない子ね。まあ、色んな人がいるし仕方ないわ。他のメンバーは?」

「まあまあだなブライアンとは男同士だし案外距離は最初から近いけど、陽本はヤバい、あいつ俺が空飛べるってわかるなり部屋に来るなり迫ってきた」

「モテるじゃない、良かったわね」

「そりゃいいんだけど、今の俺には迷惑だって話だよ」

二人とも交互にあまり深く考えずに駒を動かしていく。

「他のメンバーは?」

「石火矢さんとはまだわからないな。一昨日のキャンプで売店で肉が無いってんで俺が田んぼでウシガエルを釣って料理したんだけど」

「料理!?」

夜巳はガタっとテーブルに足をぶつけながらも思わず立ち上がる。

「えっ……いや、俺だって料理ぐらいする。便利屋の駆除の仕事で慣れてたから、ウシガエルの肉を使って料理したんだよ。それなりに良い声が聞けたぜ」

「なんで……」

「あっ」

「なんでお姉ちゃんを呼ばないかなぁ。弟の料理とか、食べたいに決まってるじゃない」

「ああ、まあ……ほら、今度埼玉の屋敷に行ったときに同じウシガエル料理作ってやるよ。あの辺田舎だし田んぼも近くにあるだろ? 夕方辺りにでも釣りに出ればウシガエルは釣れるからさ」

「む~……まあいいわ。みんなに料理を振る舞ったのね、良い事よ」

「ま、そんな感じだ。ああそうだ、会長帰っちまったけど、竜理教を潰す作戦とか聞きたいんだったな」

「ああ、それなら彼からバーで聞いたわよ」

「え? 会長と酒飲みに行ってたの?」

「彦根でね……その時に聞いたわ。話しましょうか?」

「ああ、聞かせてくれ」

そして漆紀は夜巳から輝雷刀の考えている計画を聞いた。

竜理市に攻め入り、竜王を降し、人間宣言をさせることで信者達に今の宗教形態を崩壊させる価値観を与えるという作戦である。

「竜理教を崩壊させるには、竜王が神なんかじゃないって言わなきゃだめなのよ。どう?」

「アリだと思う。でも、竜理市にいる徳叉迦竜王を倒したとして、そいつがこちらの要求を飲んで人間宣言してくれるかどうか怪しいぞ」

「それは尤もよ。だからこそ、会長は悩んでいるわ」

「うーん……あっ」

いるではないか。漆紀の知っている身近な竜王が、一人。

そう、新南部世理架である。

彼女もかつて竜王と呼ばれ竜理教で崇められた存在だ。彼女に人間宣言をさせれば良いかもしれないが、それでも不安は残る。やはりどの道、日本の竜理教を崩すには徳叉迦竜王を降すのは必須であるなと漆紀は結論付ける。

「いや、どのみち徳叉迦竜王は倒さないといけないな」

「何か案が?」

「ああ。ただそうだな……徳叉迦竜王を倒すだけか、それとも息の根を止めるかでも違ってくると思う」

「どういうこと?」

「実はさ……彦根で、竜理教の特別顧問を名乗る信者が接触してきてな。そいつは今の竜理教の体制が不健全だから変えたいって言ってたんだ。そのためには、徳叉迦竜王を殺して俺に竜王としてその座につき、内部から竜理教を一度崩壊させて変えるってプランだ」

「特別顧問……もしかして、精鋭部隊の竜宮の遣いの?」

「そうだ」

竜理教の精鋭部隊・竜宮の遣い。その特別顧問であるマリーシャ・シャロランテの提案も一考すべきものだと漆紀は考えていた。

「徳叉迦竜王を殺すのは案の一つね。でもまあ、そもそも竜王自体が強いから殺すのも倒すのも苦難だとは思うけれどね」

「だと思ったよ。なんにせよ、その辺は折り合いってヤツだな」

「そうね。はい、チェックメイト」

「え? うわっ、早すぎ!」

「あなたが弱いだけじゃないの漆紀」

「ええ……まあいいや。夜はまだ長いし、色々話そうか。そうだ、妹の真紀について話したいんだけどいいかな」

「ええ、構わないわ」

夜巳はぶどうサワーを一口飲むと、漆紀の話に耳を傾けた。

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