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ガンギマリズムV バケ~ション!!  作者: 九空のべる(旧:ジョブfree)
第四章「ステップ4 キャンプには思わぬ落とし穴がある」
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漆紀の性癖は……

温泉街を行楽すると、既に時刻は午後四時を過ぎていた。

漆紀は旅館の部屋に戻り、着替えを取って旅館内の温泉へと向かう。

温泉は一階にあり、漆紀は暖簾を潜って更衣室に入る。

そこで服を脱ぎ、大浴場へと入って行く。

時間が早いからか、大浴場はほとんど誰も居なかった。漆紀は髪と体を洗い、内湯ではなく折角なので露天風呂の方へと出る。

露天風呂に出ると、見覚えがあまりない人物がいた。

「えーっと……あんたは、確か……」

「ああ、ボク? ボクは影が薄いですから。九十九統一郎つくも とういちろうですよ。ほら、メタモルフォーゼの能力の」

そう言って統一郎は立ち上がりながら変身する。変身したのは彩那の姿だった。

一糸纏わぬ彩那の裸体に、漆紀は一瞬目を点にして驚くが、興奮することはなく落ち着いた心で答える。

「悪戯が過ぎるな。俺は落ち着いてるぜ」

「つまらないですね」

彩那の声でそう言うと、統一郎は元の姿に戻った。統一郎の姿はごく平凡でなんの特徴もない、目立たない少年といった感じであった。まさに影が薄いとしか言いようのない、黒髪の凡庸な少年。

「俺も湯に浸からせて貰うぜ」

漆紀は統一郎の近くで湯に浸かる。

そうしてしばし無言が続くが、漆紀は何か話さねばいけない気がする。

(話したいけど、コイツとは一切関わったことがねえ。陽本以上に話し方がわからねえ! これどうすんだよ、どうすりゃいい……?)

漆紀が思い悩んでいると、統一郎の方から話題を振って来る。

「あの、なにか特殊な力があって会長に拾われたんですよね? どんな力か教えて貰えますか?」

「え? ああ……いや、そういうのはあまり大っぴらに話すことじゃないだろ」

「ボクの能力は知られてるのに、教えてくれないと?」

「じゃあ部分的に教えるぞ。俺の力は、水を操る」

漆紀はそう言うと、村雨を取り出し湯につける。そして湯を一気に押し上げ、湯柱を生み出す。

「こんな風に、水を操れる。どうだろう?」

「これが力の一部ですか。水で人が殺せるんですか?」

「十分やれるな。例えば」

漆紀は統一郎の顔面へと勢いよく水を放出する。そうすること約五秒、漆紀は水の放出を止める。

「ぷはっ、ゴホ、ごほっ!」

「こんな感じで、息継ぎできなくさせれるし、壁にそのまま叩き付ければ圧死させられる」

「きょ、強力ですね……しかし話は変わりますが、良い温泉ですね。温度も丁度いい」

統一郎は肩にお湯をかけながらそう零す。

「そうだな……あれこれ話すのも無粋かもな」

逃げた。漆紀は統一郎と会話することから逃げてしまった。どうにも共通の話題を見つけにくいし、話しづらいのもあるが、どこか統一郎には触れずらい空気感があった。

それは、人間とは違う何かにも思えた。

「……」

漆紀は内心で「気にしない気にしなーい」と言い聞かせ、湯にしっかり浸かって目を閉じてリラックスする。

そうして漆紀は黙々とおごと温泉に入浴すること十分。

そろそろ良いかと思って湯船から出て、内側に戻る。漆紀はそのまま更衣室に戻ろうかとも思ったが、不意に横に気になる文字が映る。

「蒸し風呂? サウナじゃなくてか……?」

サウナではない、蒸し風呂と言う物珍しい単語に目を引かれ、漆紀は蒸し風呂の室内に入って行く。

蒸し風呂は湿度が高く、体感的にほぼ湿度は百パーセントはあると思われた。

そしてサウナと比べると低温で、蒸し風呂という名の通り、蒸されて汗を掻く場所であった。

そして蒸し風呂の段にはブライアンがサングラスを外した素顔のままで座っていた。

「ぶ、ブライアン。お前……蒸し風呂なんて入るんだな」

「サウナは好きだしな……蒸し風呂はぬるいっちゃぬるいが、良い湿度なもんだYO」

「ぬるいか……隣に座るぞ」

漆紀はブライアンの隣に座り、両手を組んで座る。

「ブライアンは蒸し風呂について何か知ってるのか?」

「ふっ、知るワケないぜ。だが、日本におけるサウナみたいなもんだとは知ってるぜ。それにこの部屋、良い香りだぜ……ふううぅぅー……」

ブライアンはため息と共に汗を拭う。

「オマエ、気になる女子は居るか? ま、舞香のヤツは会長にゾッコンだから無理だが」

「ああ、そういう話か。言っておくけど俺普通の人間に興味ねえっていうか、興奮出来ないっていうか」

「え? インポ?」

「ち、違う! そういう事じゃない! なぜか女の子に裸で迫られても興奮出来ないというか、そういう気持ちになれないんだ!」

「それ心の病気なんじゃねえの? Sick?」

「いや違う。俺が人間じゃないからだ……その証拠を見せるよ。おいムラサメ」

漆紀は風呂場でもムラサメの鉄塊の首飾りは肌身離さず首に掛けていた。

漆紀の声にムラサメは答える。

『まさかこんなことの為に竜王化を?』

「一瞬だ。一瞬角を生やせば証明になる」

『ああ、一瞬。わかった』

ムラサメが答えた瞬間、漆紀の頭髪が伸び、背中には竜のたてがみが生え、そして頭には竜の角が生える。

それを見てブライアンは目を点にして口をポカンと開く。

「この通り、俺は竜、ドラゴンなんだ。人間じゃない」

「Oh……Jesus christ.ドラゴン? だから人間じゃ興奮しないって? そりゃあ……悲しいもんだなおい」

漆紀は元の人間の姿に戻り、ため息を吐いてからブライアンに告げる。

「まあ、そんなんだから俺は人間じゃ興奮できなくて……」

「じゃあ性癖はモンむすと見た!」

「……えっ?」

「オマエ、人間に興奮出来ないなら性癖はモン娘、Big Titsの猫っ娘やドラゴン娘を……」

ブライアンが全て言い切る前に、漆紀はブライアンの口を左手で塞ぎ、右手の人差し指を自分の口元へとやった。

「それは秘密な、ブライアン。わかったな?」

ブライアンは静かに頷くと、漆紀は左手を放す。

「まさか性癖を当てちまうとはな……今度良い画像送ってやるよ。あとでラインを」

「俺スマホ持ってないからメールアドレスでURL送ってくれ。助かる」

漆紀とブライアンの様子にムラサメは心中でため息を吐いて『馬鹿な野郎達』と呟く。

そうして漆紀とブライアンは蒸し風呂の中でくだらない話を続ける。

蒸し風呂はサウナと比べて温度が低いので長時間居られてしまう。十分、二十分と話し続けていると、流石にそろそろかと思った二人は蒸し風呂から出る。

蒸し風呂の部屋の隣には水風呂があり、温度は十八度と表記されていた。

漆紀とブライアンは水風呂に浸かる。キレのある冷たい水が漆紀とブライアンの体をキンキンと攻める。

数秒すると、体がその冷たさに慣れていく。

そうして水風呂に入ること二分。体の中がドクドクと振動する感覚を得ると、二人は水風呂から出て、近くにある椅子に座る。

サウナではないが、蒸し風呂でもいわゆるととのい体験が出来た。体がドクドクと脈打っている。恐らく血管が伸縮している音だろう。

「ぁぁあああ~……」

「Ohhhh~……」

二人ともクスリでもキメたかのような気持ちよさを得て、白目を剥く。

二人はしばし絶頂を感じていると、その前を統一郎が素通りして更衣室へと行くが、漆紀とブライアンはあまりの気持ちよさに気付かない。

そうして気持ちよくなること三分。

ようやく漆紀とブライアンは視線を前に戻し、正気に戻る。

「ふう……サウナに負けないもんだな、蒸し風呂。だな、ブライアン」

「Oh……思いの外いいもんだ。会長、誘いたかったぜ」

ブライアンは名残惜しそうにそう言う。ブライアンも他の学徒会メンバー同様に少なからず会長に想いがあるのだろう。

「まあ、今度関東のどっかの蒸し風呂に誘ったらどうだよブライアン。んじゃ、俺は戻るぜ。もうちょいととのってたらどうだ?」

「そうだナ……ああ、気持ちイイ……」

漆紀は大浴場から出て、更衣室に戻る。体を拭いて、着替えを着ると、部屋に戻っていった。

結局漆紀としては他人に性癖を悟られるだけのマイナスイベントで終わった。

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