チャーハンはパラパラに限る
漆紀達は一通りビーチバレーを楽しむとコテージに戻った。四人は水着から私服に着替え、時間を確認すると、時刻は午後一時であった。
着替えるなり漆紀達は売店に行き食材を買うと、コテージに再度戻って調理を始める。
眼鏡を再びかけた小太郎が材料をテーブルに並べる。
「さぁーて、何を作りますかな?」
「色々材料買ったしなんでも作れそうだな。小太郎、言い出しっぺだしなんか案はあるか?」
「うーん……チャーハン」
「まあ、レンジでチンするタイプの米もあるしチャーハンぐらいできるけど、どうするかな……彩那は?」
「私はブロック肉を切らずに煮込んでチャーシューみたいな感じにしようかなって」
「石火矢さんは?」
「ニンニクを使ったガーリックソースを使った肉料理を考えてるけど」
「俺はシンプルに肉野菜炒めだぜみんな……へへ、割れたな」
料理の案が割れて、一行は考え込む。
「とりあえず、全員考えてる料理の分の材料はありますし全部作りますか」
「よし、じゃあ早速始めようぜ。まずは俺からだ」
コテージには調味料や食用油などは用意されている。漆紀はまな板の上に人参を乗せて包丁で短冊状に切ると、フライパンを取り出しガスコンロに乗せる。
ガスコンロの火をつけ、漆紀は食用油をフライパンの上に垂らすと、人参と袋に入ったモヤシを取り出して入れる。
菜箸で野菜を広げていき、同時に豚バラ肉を投入して炒めていく。
「炒め物は短時間で出来るから良い……オラっ! 塩コショウ投下!」
漆紀は塩とコショウを振り、更に醤油を少々かけて味付けしていく。
そのまま数分炒めると火を止めて漆紀は更に肉野菜炒めを盛る。
「っし、俺のは完成! 片付けしたら、次は誰がやる?」
「私のチャーシュー案は時間かかりそうなので後でいいです」
彩那がそう言って遠慮すると、小太郎が手を上げる。
「では、拙者がやりまする!」
次は小太郎の番になった。漆紀が後片付けを終えた後、小太郎のターンが始まる。
小太郎は調理開幕早々、おもむろにベーコンを取り出す。そして、ベーコンを細かく切っていく。ゴロッとした、けれど決して小さすぎないサイズにベーコンを切ると、卵を割って小さいボウルの中に落とし、菜箸でかき混ぜる。
卵をかき混ぜ終えると、今度はレンジでチンするタイプのご飯を電子レンジに入れて次々に加熱していく。そうして四つのご飯パックを温め終えると、小太郎はフライパンをガスコンロに乗せて着火する。
フライパンの上に食用油を垂らし、少しずつ熱していく。
そして頃合いを見てかき混ぜていた卵を投入し、ヘラで動かしながら炒めていく。
次にご飯を投入していき、フライパンの中は八分目まで埋まる。
ご飯も卵と同様にヘラで動かしてÞ炒めていく。そして数分すると今度はベーコンを投入し、チャーハンの具材が揃う。
そうして小太郎は炒めていき、最後に味付けとして掟破りの焼肉のタレを投下する!!
チャーハンはある程度味があればそれで良いと言う小太郎の暴論の表れ、まさに暴挙!
そして小太郎は全体に焼肉のタレが染みわたったかと判断すると、今度は塩コショウを振っていく。
そして小太郎のチャーハンが完成し、彼は大きな皿にドカッとチャーハンを注いでいく。
「よし、拙者のチャーハンは出来上がりでござる。次は……」
「わたしだね! じゃあやってくよ!」
小太郎が片付けをしたのち、今度は陽菜のターンとなる。
陽菜は真っ先にニンニクを掴み、頭の部分を包丁で切ると、皮をむいてニンニクの中身を取り出す。ニンニクを取り出すと、ボウルに入れてすり棒ですり潰していく。
そしてすり潰したニンニクへと焼肉のタレを少量、醤油を多めに入れて陽菜なりにガーリックソースを作っていく。
ソースが出来ると、陽菜はブロック肉をビニール袋から取り出し、牛のブロック肉を包む網を切る。
そしてフライパンをガスコンロに置き、着火する。油を少量垂らし、加熱するとブロック肉をフライパンへと投入し、焼き目をつけていく。縦、横、前、後ろと焼き目が付くと、陽菜は火を止めてブロック肉をトングで掴んで一時的に皿へと避難させる。
漆紀達は何をする気だ? と首を傾げるが、陽菜はキッチンペーパーを手に取った!
そして、それを三回ほど折ってフライパンに乗せた! そうしてキッチンペーパーを何枚か使ってフライパンに乗せると、その上に先程のブロック肉を乗せてガスコンロを着火する。
そしてフライパンのフタを乗せて、陽菜はただ待つ。
そう、大学一年生に当たる石火矢陽菜、彼女はブロック肉をローストしているのである!!
その様子を見て彩那が「それ時間かかるじゃないですか」と要らぬツッコミを入れるが、陽菜は「チャーシューよりはかからないよ」と返す。
そうして蒸し焼く事十分。陽菜はスマホを見て暇つぶしをしつつも、時折フライパンの方をチラと見ていた。
漆紀達は完全に暇つぶしモードに入っており、陽菜を置いて漆紀、彩那、小太郎の三人で雑談に入っていた。
そして陽菜は頃合いと見たのかフライパンのフタを開けて、ブロック肉をひっくり返す。そして再びフタを置く。
再び待つこと十分。
陽菜はブロック肉をトングで掴み、まな板の上に置く。
「良し、ローストビーフ完成。まだ熱いしあとで切るからね~……ってアレ?」
陽菜は後ろを見るが、すぐ近くに三人の姿はなく、奥のテーブルで三人が雑談しているのが見える。
「あちゃちゃ。それじゃ、片付けしてあの子にバトンを渡すか」
陽菜は静かに後片付けをすると、彩那の方へ歩み寄る。
「わたしのは出来たよ。次は竜蛇ちゃんかな」
「あ、私のは長いですよ。何時間か煮込むので」
「好きにやって! ほら!」
彩那は椅子から立ち上がると、キッチンへと向かった。
彩那はレジ袋から陽菜とは別の豚のブロック肉を取り出す。
「じゃ、調理開始!」
彩那の調理が始まった。
彩那の調理は手際よく進み、あとは豚のブロック肉をひたすら煮込むだけであった。
豚のブロック肉は弱火でじっくり煮込み続ける。その間、四人は既に出来上がったものを食べていく。
「あのチャーシューは夕食だな」
「まあそうなっちゃいますね」
漆紀の言う通り、今煮込んでいる肉を食べるのは夕食時になりそうだ。
四人が料理を皿に分け、漆紀は小太郎のチャーハンを真っ先に食べるが。
「おい小太郎、これ! チャーハンパラパラじゃないじゃねえかよ! ありえねー!」
「でも味は良いでしょうが! 濃い目の味で塩分不足になりがちな夏ではいい味に……」
「馬鹿お前、食感も味の内に入るに決まってんだろ!」
「では食うなでござる! トラップカードオープン、ほならね理論!」
「フライ返ししないからパラパラにならないんだろうが! それでも油でべちゃべちゃじゃないだけ良いけどよ!」
「チャーハンにはフライ返しが必須ですよキモオタさん!」
彩那も漆紀同様に小太郎へと抗議する。
「拙者フライ返しなんて出来ないでござるよ! 米こぼしますぞ!」
「じゃあチャーハンやるなよ! 信じらんねー!」
「石火矢殿! 石火矢殿はどう思うでござるか? べちゃべちゃしてなければ良いでござるよねえ? ねぇ!?」
「うーん……ちょっと、これ嫌かも」
「うぼぁー!」
小太郎は強いショックを受けて白目を剥いている!
漆紀は自分で作った肉野菜炒めを箸で摘まみ、口に放る。
「ん……やっぱ俺は可もなく不可もなく出来たな。炒め物って大体上手く仕上がるよな」
「おいしいですよ竜王様!」
「ま、ちょっと油が多い気もするかなー……でも良いんじゃない?」
陽菜はどこか余裕そうにそう呟く。漆紀の料理を大したことがなさそうな態度をとることにどこか不満を覚えたのか、彩那は陽菜の作ったローストビーフに箸を伸ばす。
ローストビーフは一口分に刺身みたく切られており、そこにガーリックソースが懸かっていった。
彩那はローストビーフをそのまま口に放り込み、味わう。
「……悔しいですが美味しいですね、それなりに」
「いいでしょー。料理系の動画チャンネルのレシピでやったからねえ。チャンネル登録者数六十万人越えの動画は伊達じゃないね!」
漆紀もローストビーフを箸で摘まみ、そのまま口に放る。
「おっ、これは……おいしいな。動画見ただけでこんなもん作れるなら俺も料理系の動画見ようかな」
「いや、竜王様スマホ持ってないから見れないじゃないですか」
「そうだったわ……あ、いや、ノートパソコンが部屋にある! 学徒会の寮はWifiあるし見れるぞ!」
「じゃあ今度私に何か作ってくださいよぉ。竜王様の手料理……はぁ~……」
彩那はどこか恍惚とした表情を浮かべるが漆紀は冷静に「前にも何度か俺が料理して食べさせてるだろ」とツッコみを入れる。
「あとは彩那嬢のチャーシューだけですな。しかしまあ暇ですな。えー、現在時刻は」
小太郎はコテージ内の壁に引っ掛けられてる時計を見ると、午後二時半を指していた。
「おお……夕方までは適当にコテージ内で過ごしますかな」
「そうだな」
漆紀は小太郎に同意を示すと、小太郎の作ったパサパサしてないもっさりしたチャーハンを再び口に運んだ。




