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ガンギマリズムV バケ~ション!!  作者: 九空のべる(旧:ジョブfree)
第三章「ステップ3 街を廻ろう!」
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輝雷刀はまだ酒に弱い

その夜、輝雷刀と夜巳は彦根駅付近のバーに来ていた。店内にはカウンター席とテーブル席が設けられている。平日の夜だからか、客足は少なく、客は三人しかいなかった。

二人が隣り合ってカウンター席に座ると、メニュー表を見て今夜呑む酒を決める。

「マスター、私はエル・ディアブロを一つ、それとミックスナッツ一つ」

夜巳のオーダーをマスターは聞き入れる。

輝雷刀もメニューを見て、数秒考えた後に右手を上げてマスターへと注文を述べる。

「マスター、マティーニとミックスナッツ一つ」

輝雷刀の注文を聞き取り、マスターは忙しなく動く。

速やかに夜巳の注文したエル・ディアブロを作り上げると、ミックスナッツと共に夜巳の前に置く。

夜巳はエル・ディアブロを一口含むと、グラスをテーブルに置く。ゆっくりと飲み込み、エル・ディアブロを味わう。

「さて、何を話しましょうか会長さん。あなたの今の目標は、竜理教を排することよね?」

「そうだね。竜理教無きあとの信者達を救済するアフタープランも考えている」

「……いつ、竜理市に攻め入るの? 日本竜理教を解散させる手立ては?」

「竜理教は竜王を神として、御神体として崇めている。もし竜理教を廃するなら、神から人間に降ろすしかあるまい。かつての天皇陛下が、神から人に降ろされたように」

「竜王の人間宣言……それを皮切りに日本竜理教を解散させる、と?」

夜巳が問いかけると、輝雷刀は「ああ」と答え静かに頷く。その時、マスターがマティーニを作り上げてミックスナッツと一緒に輝雷刀の前に置く。

輝雷刀はマティーニを一口含むと、夜巳同様にゆっくり味わいながら飲み込む。そのパンチの効いた強いアルコールの味に一瞬輝雷刀は口を歪ませる。

少し落ち着いてから輝雷刀は改まった様子で夜巳に問う。

「どうかなお嬢様、人間宣言」

「アリね。竜王自身がそう認めれば、信者の彼らは戸惑うでしょうね」

「まあ、すぐには受け入れてくれないと思うが、やる価値はある。そのためには、竜理市に座す竜王をくだす必要がある」

「難しいものね……竜王は絶大な力を持っている。それを降すのは簡単な事ではないわ。それに、竜理市の竜宮には大勢の信者と精鋭部隊が居る」

夜巳はナッツを二つ口に含み、軽く噛み砕く。それからエル・ディアブロを二口飲んで再び輝雷刀の方を向く。

「厄介だね……でもやるんだ。作戦の草案は既にある」

輝雷刀は左手の人差し指で頭を軽くつつきながらそう言う。

「作戦があるならいいわ。一応聞いておこうかしら」

輝雷刀のいう作戦の内容を、夜巳は予め聞いておこうと思い問うてみる。

「学徒会は竜理教のように数の力がある。大勢の学徒達に呼びかけて、竜理市に押し入って竜宮を取り囲み抗議する。そうすれば嫌でも彼らは打って出る。そうすれば竜宮内は手薄になる。その手薄になった竜宮を叩く。竜宮の竜王殿という場所に竜王は居るという。そこに攻め込む」

「大変なことになるかもしれないわ。竜王がその力を振るえば、多くの人が巻き込まれることも……」

「それは厄介だな……僕が直接出向く必要があるのかもしれないね」

「あなたが?」

輝雷刀が直接出向くというと一瞬困惑を見せる夜巳だったが、そもそも福井県に世理架を救出しに行った際も輝雷刀は直接現場に出向いていたのでどこか納得する。

「竜理市の竜王を降すのは大前提だけど、本人に人間宣言させるのは無理があるかな……どこか、都合のいい竜王いないかな。傀儡に出来る都合の良い竜王……」

「傀儡って……うわぁー……」

「まあ、いないかそんなの。竜理教に於いてある程度立場のある竜王でないと人間宣言は効力を持たない。漆紀君も竜王だが、彼では十分な効果を期待出来ない」

「辛辣ね、私の弟が役立たずだと?」

「そうは言ってないよ。彼には竜理市に攻め入る時にも参加して貰いたいと思っている」

輝雷刀が漆紀についてどこか頼りにしている様子で語ると、夜巳は満足げにエル・ディアブロを一口含み、飲む。

「そう。その時は、私にも声をかけなさい。漆紀一人に任せておけないから、力になるわ」

夜巳は密かな期待を心に抱きつつ、柔らかな笑みを浮かべて輝雷刀へと右手を差し出す。

「ああ、頼りにさせて貰うよお嬢様」

輝雷刀は夜巳の右手を取り、確かな握手をする。

「ところで、話は変わるけど……随分とお酒を飲み慣れている様子だねお嬢様。お見受けしたところ、僕とさして変わらない年齢だと思うんだけど……僕は二十歳だ」

そう、輝雷刀は二十歳。四月生まれで酒もまだ飲み慣れてはいないが、嗜好品としてどんなものかと色々試している年齢だ。

対する夜巳はというと。

「ふふ、私も二十歳よ。五月に成人したのよ。そうね……私はお酒にかなり早く慣れて来てるのよね。それは全て、私の秘密のお陰だけれど」

「秘密ねぇ……そう簡単には聞き出せないのだろうね?」

「ええ、女の秘密を簡単に知れると思わない事よ」

「ふっ……どれほど飲めば喋ってくれるかな」

そう言って輝雷刀はマティーニを再び一口含むが、やはりパンチの効いたアルコールの強さに口を歪めてしまう。

「あなた、マティーニがどんなものか知ってて頼んだの?」

「はは……映画で見た酒だから注文しただけさ。確か、カクテルの王様と聞いたよ。だから注文したけど……思ったよりアルコール味が強いお酒だね。はは、どうも僕には過ぎた酒のようだな」

「完全に見誤ってるじゃない。マティーニというのはジンとベルモットを混ぜたお酒よ。ジンが大半を占めるから必然的にアルコール度数は高くなるわ」

「ジンのアルコール度数は確か平均的に四十度だったか。ははは、完全に見誤っているな。だが僕は九州の血を継ぐ者。酒には強い遺伝子だ、舐めて貰っては困る」

そう自嘲しつつ、輝雷刀はミックスナッツを三つ口に放り込むんで咀嚼し、飲み込むとマティーニをまた一口飲み込む。

「くっ……強い酒だね……これ、飲んでたら死ぬんじゃないか? って思うくらい強いよ」

「今度は私が頼んだエル・ディアブロを頼んでみると良いわ」

「そちらは度数が低そうだね。何を混ぜてるお酒なのかな?」

「カシスリキュールとライムジュースとジンジャーエールを混ぜたのがエル・ディアブロよ」

「ははは……カシスリキュールがよくわからない。なんだいそれ?」

輝雷刀は冷静に、かつ余裕そうな表情のまま無知を曝け出す。

「カシスリキュールはカシスというベリーを蒸留酒に漬けて砂糖などで甘みを加えたお酒のことよ。大体カクテルに使われるわ」

「そうか、カクテル用か……それなら飲めそうだ。注文した以上、これは飲み切ろう」

そう言って輝雷刀はまたマティーニを口に含み飲み込む。

「それにしても、知ったかぶりをしないのね」

「以前僕は嘘を披露したが、知ったかぶりはしないようにしている。それは学徒会会長として良くない行為だと考えている」

輝雷刀が学徒会会長、と身分を口にするがマスターは動じずにグラスを磨いている。

「素直なのは良い事だわ。でも、無知を晒して余裕そうなのはなぜ?」

「無知な事は変わりない場合、取り繕って格好を崩すよりも、潔く余裕を持って無知を晒した方が印象は良いはずだよ」

「そうね……良い性格してるじゃない。それは好きだわ」

夜巳は輝雷刀の姿勢に好印象を抱くと、輝雷刀は「そうかい?」と問いつつ、ミックスナッツを口に放り込む。

「学徒会会長は公人に近い立場よね。そういう姿勢が必要なのは理解出来るわ」

「まあ、みんなを纏め上げるのも日々悩みながらやっていることだけどね」

「ねえ、なぜあなたはこの国を変えようなんて考えているの? キッカケは?」

「キッカケは……そうだね、少し長くなるし今度語らせてもらうよ。今日はいい」

「そう、まあいいわ。あなたの大望、叶うといいわね」

「ふっ……叶えるさ」

そう強く答えて、輝雷刀はマティーニをまた一口飲んだ。

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