明日の予定
漆紀達はこの日泊まるホテルへと先んじて到着した。
エントランスは広くテーブルや椅子も置いてあるエリアがあったので、漆紀達はテーブルに着く。
すると舞香が一つの疑問を投げかけて来る。
「辰上君、あなたは竜理教が信仰している竜王という御神体なの?」
「こんな所で話す事ですかね。でもまあ、事実だぜ。俺にはあいつらに御神体として崇められるだけの力がある。が、そんなの普通は使わないです。というか、大災害並みの力なんて俺にはないはずなんですが」
「竜理教に狙われてるっていうのは?」
レグナが続いて質問を投げると、漆紀は視線をレグナに移して肩の力を抜いて答える。
「それは会長も了承済みの事。俺が竜理教に狙われてる事や関東の暴走族に暴力団とか反社に狙われていることは会長が俺を仲間にする上で飲んだことなんで」
「でも厄介よ。竜理教に狙われるなんて。こんな交流会なんてしている場合じゃ……」
「でも、レグナがぶっ飛ばしてくれるんだろ?」
漆紀がそう問うと、レグナは誇らしげに腕を組んで「そう」と肯定する。
「なら問題ねえだろ。流石にこういう建物の中までは竜理教信者も来ないみたいだし」
「……あなた、御神体なのでしょう? それなのになぜ竜理教に行かないの?」
「俺は……悪い、話したくない。こんな話よりもう少し楽しい話をしようぜ。明日はどうするか」
「明日も彦根じゃない。でもどうしましょうか」
「あー……佐和山城行こうぜ。彦根駅の東側、石田三成の城。彦根城と同じくらいデカイだろ。まあ登るのは大変だけど見応えはあるはずだぜ」
佐和山城。豊臣政権の懐刀である石田三成の居城であり、現存三十六天守の一つである。
豊臣政権の懐刀であった石田家の城であるため彦根城と同等に大きい城郭であり、一部の櫓などは第二次世界大戦時に焼失したが、現在では復元している。
また、石田三成の屋敷が城の入口付近にあり、当時の姿のまま保存されている。
とはいえ、石田家が佐和山城に居たのは1600年から1610年までであり、その後は藩制度により各地の豊臣家の大名は土地変えを余儀なくされていた。
「佐和山城ね。彦根城よりも登るのがハードだけれど」
「山登り……Shit」
レグナは否定的で、舞香はそれぐらいしか見所がないだろうと思い納得した様子である。
「じゃあ、話はもういいか?」
漆紀がそう言いつつ腕時計で時間を確認すると、時刻は午後五時を過ぎていた。
すると、ホテルに輝雷刀達がやって来る。
漆紀は椅子から立ち上がり、輝雷刀の隣にやって来る。
「やっと来たか、暇してたぜ会長」
「街を回らなくて良かったのかい?」
「竜理教の連中に狙われてな。まあ、レグナがぶっ飛ばしてくれるから無問題なんだけどな」
「竜理教か……それは厄介だね。というか、どうやって君の現在地を知ったのだろうか」
「探偵を尾行でつけてたらしい。じゃないと俺の位置はわからないだろ。多分このホテルにいることもバレてんだろうな」
「うん? それにしてはおかしいね。竜理教って頭のおかしいカルト宗教だろう? ホテルだろうが構わず侵入してくるはずじゃないのかい?」
そう、輝雷刀の言う通り竜理教は頭のネジが一本どころか何本も外れているカルト宗教なのである。そんな彼らがホテルに侵入して来ないのは不自然だと輝雷刀は語る。
「ま、それは今度竜理教の信者に会ったら尋問して聞いてみるさ。ま、襲ってくればの話だが。これからチェックインだろ? 頼むぜ会長」
「ああ。待っていたまえ」
しばらく待機すると、輝雷刀は大量のルームキーを持ってやって来る。
「好きな部屋を選ぶんだね」
「じゃあ俺はここでいいや」
漆紀はルームキーを一つ取り、舞香とレグナもルームキーを手に取る。
「食事は六時から九時半までだから、それほど待たずに食べれるよ。場所は二階の嵯峨っていうホールで提供されるから」
輝雷刀からそう夕食について聞くと、漆紀達はエレベーターで客室へと移動した。
漆紀は八階の一室に入り、ベッドに飛び込む。
「あ~……今日も動いたし疲れた……さて、シャワー浴びないとな……体がベタベタで気持ち悪い」
漆紀は服を脱いで浴室に移動すると、シャワーを浴びて髪と体をよく洗う。
シャワーから出ると、予備の着替えを着て漆紀はベッドに再び飛び込む。
ガラケーで時刻を確認すると、時刻は午後五時五十六分を示していた。
「……少し休んだら行くか」
そう言って漆紀は目を閉じた。脱力し、意識を深く落とした。




