朝食
翌朝、漆紀は目を覚ます。
「また竜夢かよ。今度は陽本との竜夢……見境なしかよ竜夢」
漆紀は呆れかえりつつもベッドから起き上がり、携帯電話と財布を取る。
「朝食行くか」
漆紀は朝食を取るべく昨夜行った広間へと向かった。エレベーターで二階に降り、朝食会場へと出る。
朝食もバイキング形式で漆紀はプレートを取り、朝食をプレートに乗せていく。
漆紀は朝食をプレートに乗せ終えると無意識のうち、彩那の隣の席を取る。
彩那と顔を合わせて、漆紀は「おはよう」と言い合う。
「竜王様、寝癖酷いですよ」
「え? そうか? あとで直すか」
「ていうか、前髪の鬼の角作ってないんですね」
「え?」
漆紀はいつも鬼の角の様に纏めた前髪のあるところを触れる。そうだ、昨夜吉果と夜行飛行した時に竜王化した事で前髪をまとめるヘアゴムが解けてしまったのだ。
そのまま寝て起きたので、漆紀の前髪は下りていた。
「あー……恥ずかしいもんだな」
「いや、いつもの髪型の方が恥ずかしいんですが」
「おい」
漆紀は彩那の額にチョップを落とすと、彩那は頭を押さえる。
「今日は彦根に移動だな」
「ええ。彦根と言ったら、彦根城と佐和山城ですよね」
「彦根に二日間か……なんか、やることなくなりそうだよな。二日じゃなくて一日で足りる気がしてならないんだが」
「まあ……でも城下町が栄えてますし、お店巡りには飽きないんじゃないんですか」
漆紀は「そうかもな」と答えるとスクランブルエッグを掬って口に運ぶ。
「ま、楽しいならなによりだな。彦根の街ならどんな場所か……」
彦根は歴史的に見ると豊臣政権が傘下の徳川家から見出した井伊家が治めた土地であり、その城下町は大きく栄えていたという。
けれど第二次世界大戦の空爆によって城下町の大半は燃えた。
現在の城下町は戦後の復興で再興した新しい城下町なのである。
「とりあえず、朝食食べましょうよ竜王様。でも、この交流会中竜王様と行動出来ないのは残念です」
「まあ、お前とはある程度深い仲だしな。他の連中との絆を深めるのが交流会の目的なんだ。わかってくれ」
「それはわかってますけど……じゃあ、今日もまた月守先輩とレグナさんと一緒ですか」
「まあそうなるな」
「ふーん……まあ、頑張ってください。それこそ惚れさせる勢いで頑張ってください」
「お前それで良いのか?」
「それくらいやらないと絆は深まりませんよ?」
「わかった」
漆紀はそう頷くと、朝食のソーセージを口にした。




