またもやのIF
「宗一君! 陽夜見ちゃん! わたし……あなたたちの息子と結婚するよ!」
マイクを片手に世理架は感極まった様子でそう宣言する。
辺りを見渡せば、ここは結婚式場。
当然だ、俺は世理架と結婚する。思えば、竜王である俺にはこの人しか結ばれる相手などいなかったのだろう。
ぶっちゃけ歳の差結婚ではある。だいたい百歳差ぐらいはあるが、そんなことは関係ない。
ウェディングドレスを着た世理架の姿は正直言って神々しかった。俺と同じ種族だからこそ、異性としてとても意識できる。今の彼女の姿に、とても見惚れている。
「ほら、漆紀君もコメントを」
世理架が俺にマイクを渡してくる。俺はマイクを手にして、一言出した。
「ありがとう!」
視界に映る景色が変わる。
俺は世理架と佐渡流竜理教の信者達と共に炊き出しをやっていた。
炊き出しは素朴な料理がよくある炊き出しだが、ウチの炊き出しは違う。
炊き出しの料理を受ける人達にだって、出来るだけ旨いメシを届けたい。
そう思ったのは俺だ。俺が世理架にそう相談すると、彼女はそれを実現する方法を考えてくれた。
それで予算的に炊き出しで作ることが可能なグルメをいくつかリストアップして、信者達とも相談して実現した。
今日のメニューはタコライスだ。タコライスに使う挽き肉は安いし、タコライスに使うソースもそれほど高くなく安価に買える。ごはんの上にタコスミートを乗せ、野菜を乗せればタコライスの完成だ。これに具だくさんのスープも付ける炊き出しだ。
ホームレスの人達や生活困窮者の人達は炊き出しの料理を満足そうに食べている。
「まだまだ食事はあるからな。みんな一人一食は守ってくれよ」
「竜王様、まだまだ人が来ます!」
ボランティアの竜理教信者の一人がそう言って来る。
「大丈夫だ慌てるな!」
世理架が冷静に食事の用意を何度も何度も繰り返す。
また場面が変わる。
俺は山中に来て猟銃を手にしていた。
父さんと同じく、俺も猟銃免許を取った。便利屋として、害獣駆除をしている。
(そこ!)
俺は害鳥を捉え、撃った。
害鳥は力なく木から落ちて地べたに衝突する。
「見事なものだな旦那様」
「だろ?」
「宗一君の腕前にはまだ届かないがな」
世理架が俺の銃の腕に関して父さんにはまだ及ばないと批判するが、俺は口をむっと閉じて立ち上がる。
「あの獲物を取ろう。今日はチキンだ」
「旨そうだな」
俺は害鳥の首根っこを掴んで持ち上げる。
「ところで……今夜はどうする?」
「今聞くかそれ。俺は狩りの時は疲れるしやりたくない」
「残念だ。趣向を変えてみようと思ったのに、たまには私が下に」
「獲物の前でシモの話はやめろ。性と生は違う。命の前に失礼じゃねえか」
「……それもそうだな。無粋だった」
俺は害鳥の頭を注視する。
「まだギリ生きてるな。特定外来生物の生きたままの運搬は禁じられてる。シメるしかない」
村雨を久しぶりに取り出すと、俺は害鳥の首を一刀のもとに斬り落として絶命させる。
「よし、これで運べる。世理架、袋を出してくれ」
「これだね。しかし手慣れたものだね。君が狩りをしているのはなんだか新鮮だよ」
「まあ、炊き出しが非番の日はこんなもんだ。別に面白くないだろ」
「料理は何を考えてる?」
「無難に唐揚げか、焼き肉だな」
俺は害鳥の死体を袋に入れてリュックに詰める。
「さて、首はちゃんと埋めるだろう?」
「ああ」
俺は害鳥の首を地面に埋めると、元来た道を戻る。
「なあ、わたしと結婚して毎日どうだ?」
「楽しいぜ。学徒会に居た頃みたいに戦ってばかりの日々は疲れるからな……俺が求めてたのは、こういう平穏で、けどちゃんと仕事もしてるマトモな大人の日々なのかもしれない」
「そうか……わたしも幸せだよ。でも、彩那ちゃん……今でも気にしてるんだろう?」
「そりゃあ……気にしない日はない。でも今じゃアイツは佐渡流竜理教の司教として働いてる。アイツはアレでいいんだ」
俺はそう結論付けると、世理架は笑顔で「そっか」と返す。
「帰ろう、世理架。迎えの時間もあるだろ?」
「ああ。遅れたら、養子だからないがしろにしてるんじゃないかとか、邪推されかねないからな。行こうか」
俺と世理架は同じ歩幅で山中を歩き続けた。




