とんでもない戦力が追加されました。
「いひゃい」
「イドよ。汝にこの言葉を贈ろう。――『自業自得』」
「とりあえずロビン、僕の服は何処へ?」
「ジォス様の部屋のベッドの中にありましたので現在洗濯中です。なので代わりにコレを」
状況はかなり荒んでいた。
僕は知らんうちにジォスに脱がされて全裸状態。
キルエルは呼びかけても返事がない行方不明状態。
ジォスはビンタとストレートを喰らって頬をさすっている。
アンプログリッツは義手を腕から外して点検している。
ロビンドールは僕の全裸に顔を赤らめつつも、しっかりと衣服を僕に渡してくれた。・・・コレ、女物なんですが・・・・・。
少なくとも、コレが普通として受けきっているジォスとか中二病とかロビンが異常だと思うのだが、コイツ等あまりにも平然としているせいで僕の方がおかしいように感じてしまう。いやぁ、空気って怖いな。
なんにせよ、だ。
僕は少し真剣な顔をして、ジォスに話しかける。
「そもそもの話、僕は何で此処に居るんだ?僕はダンジョンに居たはずなんだが?」
「ひょわ?あー、ソレか。大体コイツのせいだ」
ジォスが親指で横に居るアンプログリッツを指し示す。当のアンプログリッツは「え、俺?」みたいな表情もせずに淡々と答える。
「まぁ、そうだな。撃滅命令が出たとは言えど、攻撃は我が行い、2次被害で長が巻き込まれた。少なくとも、保護対象に怪我を負わせた我には謝罪をする義務がある。すまない」
「『撃滅命令』?」
軽く、しかしソレでいて重い意志で謝罪をするアンプログリッツの発言に気になる単語があった。
ソレに対する返答はジォスによって行われた。
「なんかコイツが行動するための合言葉?戦闘全体をコイツに任せるときに言えばいーらしー」
「へぇ、中二病にしてはやけに凝ってるなぁ」
「我は中二病ではない。アングラ住まいの組織の一員『終末者』だ。故にその言葉も、合言葉とは言われるが重要な意味を持った単語でもある」
器用に左手を動かしながら義手の接続部分にネジや魔力を突っ込むアンプログリッツ。言葉から中二病でも自覚のない方だと分かるが、何にせよ、義手したいがために自分の腕を斬り飛ばした奴が言うと説得力が違う。・・・やっぱコイツも頭ヤバいんだよなぁ。
でも悲しいかな、頭がヤバい奴は総じて強いと言うのがこの世界の掟である。
僕が居た階層は3。少なくとも、ダンジョンごと破壊するような一撃をこのキチガイ中二病は放ったということになる。
超火力攻撃で尚且つ広範囲攻撃、『大魔導』を主流として戦うアンプログリッツの使いそうな技と言えば――――、アレだろうな。
僕は少し熟考した後、推理をする。
「―――なるほど。『魔隕』か」
「――!?」
「「うるかしぅん?」」
僕の呟きにアンプログリッツの作業の手がピクリと震えた。若干目を見開き、此方を横目で見る。
しかしロビンとジォスは何が何だか分かっていない顔だった。ロビンは仕方ない。でもジォスは知ってるだろ!?何で分からん?改訂版ゲームプレイヤーなら誰しも1度は見たことある奴だぞ?
僕は溜息交じりに、説明する口調で言う。
「『魔隕』。大魔導シリーズの中でもインターネット環境で使われるくらいには強い、屈指の攻撃技。その効果は戦闘開始のみに発動する代わりに、超広範囲に自分よりステータスが限りなく低い敵に『一撃必殺100%』の必中攻撃、―――『殲滅』を発動するモノで『身代わり人形』を消費させたり、バフ・デバフ要員を潰す用に使われることが多い。・・・ジォス、改訂版やってるのに知らなかったのかい?」
「・・・・・あっ!アレか!戦闘開始直後に急に消えたと思ったらドーンッ!!って敵陣にクレーター作る奴!!俺はアレの読みが面倒くせーからずっと隕石って呼んでたんだ。そーだそーだ!ソレだソレ!!」
本当に分かってんのか?と疑ってしまう程に、ジォスは冷や汗をかきながら掌を拳で打つ。多分完全に頭からすっぽ抜けてたなコイツ・・・。
僕はシーツを身体にくるみながら頭をすっぽりと覆う。コッチの方が素肌よりも防御力高いし、何ならこの部屋結構寒い。ホント、何故ジォスは僕を裸にしたんだ?変態の思考は分からん。
「へ~、ただの中二病なのかと思ってたらホントは凄い人なんだ~!」
ロビンが目を輝かせてアンプログリッツを見やる。アンプログリッツは「ふん」と鼻を鳴らすだけで、すぐに作業に戻った。だがその眼がこっそりと僕の方を向いている。好奇心、と言うよりかは疑心に近い視線だった。
そんな目が僕の脳裏に焼き付いたが、僕はとりあえずとして、第1の謎を解明したので次の話題に行く。
「僕が何故裸体なのかはもう「ジォスだから」ってことで納得することにして、――此処はジォスの家なんだろ?何でロビンが居るんだい?」
殴り飛ばした後に、ジォスに此処がどこかを聞いたら自分の家だと答えた。ロビンは女モノの服を持って再度部屋に入ってきた訳だが、未だに何故ジォスの家にいるのかは分かっていない。
ロビンの事なので不法侵入とか犯罪的な線は無いだろう。むしろジォスの方がやらかしてそうである。平気な顔して「お持ち帰り~」とか言ってロビンを持って帰りそうである。存在が犯罪的過ぎてソレくらいしか想像できない・・・・。青少年育成法をご存じないような顔面をしてやがる。
僕の『ジォス=性犯罪者』の視線にロビンが気づいたらしく、慌てて弁明する。
「決してジォス様にお持ち帰りされたとか、そんな不名誉の至りみたいなことではなくて、ただ単純にジォス様の家が広いから給料目当てで掃除とか手伝ってるだけです!!」
「そういう名目のお持ち帰り、・・・・・大丈夫かいロビン?僕の目の前で隠し事はやめた方が良い。ジォスの変態野生児にナニをされたんだい?」
「キルエルには俺はどう映ってるんだ・・・・」
「変態」
「」
一言言ったら一瞬で黙ったんだがこの男。好きな男子に変態呼ばわりされるのがそんな苦痛なのか?変態の癖に?・・・変わった生物だなぁ、変態って。
僕がしみじみとそんなことを思ってると、ロビンがやはり強くジォスとのそういう関係があることを否定した。
「ホントに!無いですから!!キルエル君相手ならボクも穴を差し出すのはやぶさかじゃないし、むしろどんと来いです!・・・でもジォス様とは無いです!あり得ない!お持ち帰りされたら首かっ切って死にます!!」
「俺そんなに嫌われてんのッ!!?」
ジォスが自分への評価の低さに愕然としているが、割と本当かもしれない。なんせロビンの眼がマジだ。完全に血走ってるし、手が首筋に伸びている。そんなに嫌かねジォスに持ち帰られるの。まぁ僕も嫌なんだけどね。
でもそうか。ジォス嫌われてんのか同性にも。分からんこともない。僕も例え旧知の中でも、油断した隙に人の象徴武器を触ろうとする奴とは仲良く出来ても、身体を許すか言われたら許さんな。
僕は「そうか」と頷き、眼が血走ってるロビンに頭を下げる。
「すまない。てっきりジォスが無理やり連れてきて、あんなことこんな事ラブラブチュッチュされているのかと・・・。そして案外本人も受け入れてるような感じの危ない関係だとばかりに。ホント、ジォスが変態性の塊過ぎて・・・。僕の管理不届きですね。すいません、僕のせいで・・・・」
「ち、違います!キルエル君のせいじゃないです!・・・じ、ジォス様はそんな軽率なクソ野郎じゃないです!!ジォス様は確かに変態だし、人間モドキの成れの果てみたいな思考回路でぶっちゃけ意味分からないし、キルエル君の服の臭いを全裸で抱いて嗅いd、・・・・・あ」
「・・・・・・・・ゑ?」
「・・・・・・・・・やべ」
「・・・・・・・・・・何だこの地獄」
多分ジォスの言われようを弁解しようとしたのだろうロビンの口から爆弾が飛び出た。勿論、まさかそんなことがと思ってすらいなかったため、全員フリーズした。アンプログリッツはギリギリ真面な答えが出たが、ソレでも作業の手は止まっており、目は口笛を吹くジォスに集中している。
僕はちょっと「お前マジかよ」という言葉しか思いつかなかった。ヤバすぎてどう言えば最適解なのかが分からない。絶句とはまさにこのこと。ZECKUって書くと秘密結社のコードみたいで格好いい。・・・よし、何にも思いつかないな!
だがしかし、このまま放置と言う訳にもいかないので、僕はとりあえず何か言いたそうなロビンを手で制して、新しい話題をカオス空間にぶち込んで空気清浄を行うことにする。ついでに誰か王水持って来い。このカビはカビハイターくらいじゃ倒れん。
「とりまジォスは後でしばき散らかし倒すってことで、次の話に行こうか・・・」
「服、どうします?」
「燃やしておいてください。ついでにソコの変態も焼いておいてください」
「燃やすなら俺は今後何でナニをすれb「いいから黙ろうか」・・・・はい」
「服の件はもう仕方ないとして、僕が聞きたいのはソコに居るアンプログリッツだ」
「――!?」
僕が目を向けた先には驚いた顔で固まるアンプログリッツが居た。
話のタネになるとは思っていなかったのだろう、アンプログリッツは「我?」と小声で呟く。
「ジォス、何故彼が此処に居る?―ある程度の予想は立てているが、ジォスの事だ。僕には予測不可能な理由で連れ込んだんだろう?」
僕の問いにジォスは首を振る。
「やー、大体キルエルの想像で合ってるぞ」
「・・・アンプログリッツが一人でうろついてるところにジォス襲撃、そのノリにアンプログリッツがノってしまった結果コレだと思うんだが、合ってるかい?」
「そのノリで『百鬼夜行』への加入も終わらせたがな」
「やっぱりか・・・・」
僕はがっくりと肩を落とす。確かに、アンプログリッツは貴重な戦力だ。仲間になった瞬間から育成無しでも十分環境で戦える力を持ってるんだから、そりゃもう僕らにとっちゃ希望の光である。だが、だ。
コイツは強いと言っても、作中第2位の癖の強い奴だ。別の意味で暴れ馬過ぎて、仲間にする過程が大変すぎる上、的確に返事しないと好感度が下がると言う始末。しかも手に入れたは手に入れたでその後も大変。会話は難しいし、意味分からん単語を急に唱えだすから常時パーティに入れるには代償が重すぎるキャラである。
そんなキャラがこのパーティに入ったらどうなるか。
答えは一目瞭然だ。
カオスがカオスになる。2chご飯スレに例えるなら、ヨメマズからキチ一家にジョブチェンジ。嫁も飯もマズイどころか、義両親まで事故物件と言う地獄。ただでさえマズイハンバーグが遂に引いちゃいけない糸まで引き、カレーライスに金魚が混ざり始める。
だから僕は口を開く。幾ら強くても、現場に来なさそうなやつはダメだ。
「ジォス、何処で拾って来たんだ。元の所に返してらっしゃい!」
「我は返品不可だぞ」
「そうだぞ。キルエル、諦めろ」
「ボクとしてはキルエル君の味方をするべきだけど、その、見た目良い人だし、読芯術で覗いてもキルエル君には協力的、というか尊敬してる?慕ってる?畏怖してる?感じだから消去法でコッチ側」
「えぇぇぇ・・・・」
まさかの三人が反対意見だった。ロビンまでもがアッチ側である。
「マジかよ・・・・・」
僕はコレでも『百鬼夜行』の団長なんだぞ?追加人員について制限を設けたっていいはずだ。・・・でも僕は自分に変な権利が与えられたらダメな方向に目覚めるタイプの人だから、やっぱ要らないな。
何とも言えない感覚に僕が溜息を吐くと、そっと目の前に手が出てきた。
やけに金属質で、先端未来的な腕だった。
顔を上げた先には包帯で右目を隠した、渦巻く黒髪が特徴的な中二病もといアンプログリッツが居た。
「―――と言うわけだ。話には聞いていたが長の読みには流石の我も感服した。――此処に居るべきだと、我が魂が叫んでいる。・・・・コレも何かの縁だ。何か用があれば我は無償で我を使うがいい。我が長、キルエル=ヴェルモンドよ」
尊敬と畏怖を込めた強い目に、僕は多少の抵抗を覚えながらも左手を差し出す。
「―――あぁ、よろしく頼む」




