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第十四話 小人村と依頼完了

 

「──ここだな」


 地図が書かれたメモから顔を上げた俺は、小気味よく響く金属音を耳にして頷く。

 封印前でも聞いた事があるが、やはりいつ聞いてもこの音は心地よい。


 あれから、ダスランさんからいくつか情報を貰ったあと、教えてもらった場所へ赴いていた。

 大通りから外れてあるこの店は、ダスランさん曰く知る人ぞ知る店らしい。

 特に、将来が有望な新人冒険者はお世話になる、と豪快な笑顔と共に言っていた。


 そこまで期待をされているのだし、ここで無様な真似はしないようにしなければ。

 俺がバカを晒すと、ここを教えてくれたダスランさんの顔に泥を塗る事になる。

 だから、そうならないように気合を入れ直す。


「よし」


 軽く深呼吸をした俺は、店の看板に描かれたハンマーを一瞥したあと、ダスランさんお勧めの店──鍛冶屋に足を踏み入れた。


 中は外観通り広くなっており、壁には様々な武器が飾られている。

 メジャーな長剣や短剣をはじめ、鎌や鉄槌等少しマイナーな物も勢揃い。

 どれを見ても質の高さは一目瞭然なため、ダスランさんが太鼓判を押した理由に納得した。


「お邪魔します。ダスランさんからの紹介で来たのですが」

「……」


 奥にあるカウンターに座っている店員に声をかけるも、まさかの無反応。

 いや、こちらを見てはいるのだが、声を発しないというか。


 見た目は十代半ばの少女で、茶髪のショートを小さく左右に揺らしている。

 一定間隔で動く頭を見ていると、なんだか振り子を思い出す。


「あのー?」


 近づいて再び声をかけるが、やはり反応がない。

 しかし、側まで行ったおかげで、彼女が無視している理由を理解した。

 単純な話、ただ寝ていただけだったのだ。


「……くるくる」

「ん?」


 虫が鳴くような、囁き声が耳に入る。

 思わず顔を寄せて、目の前の店員の言葉を聞こうと意識を傾けていく。


「……どきどき」

「ドキドキ?」

「……にこにこ」

「に、にこにこ?」

「……うはうは」


 彼女がなにを言っているのか、全く理解ができない。

 恐らく寝言を呟いているのだと思う……思うが、その内容が謎だ。


 どうすればいいのだろうか。

 店員は船を漕いで夢の中で、他に店の人は見当たらない。

 このままでは、無為に時間だけが過ぎてしまう。


 予想だにしない展開で途方に暮れていると、鼻ちょうちんを作っていた店員が震えた。

 ばちん、といった幻聴が聞こえるほど見事にそれは割れ、ゆっくりと瞼を開く。


「……」

「あの、おはようございます?」

「だれ?」

「えっと、ダスランさんの紹介で来た客です」


 俺の言葉に一度頷いた店員は、気だるげな茶目のまま口元を吊り上げる。

 と言っても、ほんの少ししか上がっていないので、ともすれば無表情にも見えるが。


「らっしゃせー、こびとむらへよーこそー」

「小人村?」

「ごちゅーもんはなんでしょー」

「えーっと、武具を見て回ってから決めたいんですけど」

「ちっ」

「え?」


 今、この店員。俺に向かって、舌打ちをしなかっただろうか。

 思わずガン見してしまったが、彼女は眠たげに目を逸らして頬杖をついている。


「どーぞ。ごかってにー」

「ありがとう、ございます」


 気のせいだろう。

 流石に、初対面の人に舌打ちをするというのは、常識的に考えてありえない。

 だから、さっさと決めろやと凄む目付きの店員は、幻覚に違いないはずだ。


 気を取り直した俺は、店内の武具を見ていく。

 とりあえずは軽く眺めていき、気になる武器があったら近寄り、詳しく観察。


 やはり、どの武器も質が素晴らしい。

 俺の時代にあった武器と比べても、造り手の技量に差はさほどないだろう。

 流石に最高峰とはまではいかないが、充分に感嘆に値する出来だ。


「あの、軽く素振りしてもいいですか?」

「したら買えよ」

「え?」

「どーぞー。おかまいなくー」


 なんというか、隠す気があるのかと言えるほど、投げやりな態度だった。

 ダウナー口調とは裏腹に、紡がれる言葉には毒がある。

 正直、イヴァンナさんとは別方向のとっつきにくさだ。


「こんな時、キティーがいたらな」


 ショートソードの素振りをしながら、ここにはいない妖精族に思いを馳せる。

 あのお喋り好きなキティーと、口数が少ない店員を合わせれば、ちょうどいい感じに思える。


「──むっきー! あたしの言う通りにしなさいよっ!」

「……ん?」


 噂をすればなんとやら、とでも言うべきか。

 店の奥から、聞き覚えのある姦しい声が耳に入ってくる。

 思わず店員の方に向くと、彼女は眉間に深いシワを寄せていた。


 なにか、不機嫌になるような事でもあったのか。

 垂れ流されているオーラとでも言えるものが、黒さが篭っているように思える。

 今にも暴力を振るいそうな、そんな危険な雰囲気だ。


 というか、キティーの声が聞こえたという事は、あいつはここにいるのだろう。

 しかも、言葉の内容から、誰かと討論をしているようでもある。

 ……これ、まずくないか?


 慌てて武器を棚に戻し、店員の方へ早足で近づく。

 そして、キティーの事を尋ねるために、意を決して声をかける。


「あの、今声がしませんでしたか?」

「ちっ……さあー?」

「誤魔化さないでください。しましたよね?」

「うぜぇ……しりませんー」

「……そっちがとぼける気なら、こっちにも考えがあります」

「はっ?」


 目を丸くした店員の横を突っ切り、店奥にある扉に手をかける。


「ちょ、おい!」


 背後からの呼び止める声を無視して、勢いよく扉を開く。

 中は鍛冶場になっており、店内よりも熱気が非常に強い。

 鉄鉱石やインゴット、その他の鍛冶道具に、造りかけの武器達。

 そんな想像通りの鍛冶場の真ん中で、キティーが一人の男性と睨み合っていた。


「だーかーらー! ここはあたしに任せて、ミスリル合金を造らせなさいよ!」

「はっ! てめぇみたいなチビ助に、ミスリル合金が造れるわけないだろ」

「だれがチビ助よ! それを言うなら、あんただってむさ苦しいのよ! このひげもじゃじじい!」

「あんだと!? この髭はドワーフとして一流の証なんだぞ。ま、チビ助にはわからねぇと思うがな」

「チビ助言うなー!」


 頬を膨らませたキティーは、男性──ドワーフ目がけてドロップキック。

 しかし、虫のようにあっさり手ではたかれ、目を回しながら地面に激突。


「ちょ──」


 流石にやり過ぎだと思い、駆け寄ろうとしたのだが。

 そんな俺の機先を制するかのように、高速で黒い影が横切った。


 それは驚くべき速さでドワーフの背後に近寄ると、背中に向けて飛び膝蹴り。

 見事にその奇襲は当たり、彼は鍛冶場の奥に吹っ飛んだ。


「このクソ親父! 妖精さんになんて事をしていやがるっ!」

「ナリアてめぇ! 親に手を上げるとはどういう了見だ!」

「うるせぇ! 妖精さんの言うことを聞かないやつなんて、クソ喰らえだ!」

「あんだと!?」


 店員……もとい、ナリアさんと、ドワーフは喧嘩を始めてしまった。

 飛び込むタイミングを失ってしまったため、手持ち無沙汰になった俺は、とりあえずキティーを助け起こそうと近づく。


「いたた……こんな美少女に手を出すなんて、なんて鬼畜なドワーフなのかしら」

「大丈夫か?」

「あら? なんで、あんたがこんな辺鄙なところにいるわけ?」

「辺鄙って……」


 叩かれたからとはいえ、いくらなんでも辛辣ではないだろうか。

 そもそも、鍛冶場に辺鄙さがあるのか知らないが。


 キティー自身も、適当に言っただけなのだろう。

 あっさりと俺から意識を外すと、ニヤニヤしながら鍛冶場隅の鉱石へ飛ぶ。


「てめぇ、チビ助! ワシの鉱石に近づくんじゃねぇ!」

「べーっ! 誰が、あんたみたいなひげもじゃの言うことなんて聞くもんですか!」

「だから──」

「クソ親父は黙ってろっ!」

「──ぐぁぁっ!」


 ……しばらく、場が収まるまで外にいるか。


 疲れでため息を漏らした俺は、喧騒を耳に鍛冶場を出ていくのだった。



 ♦♦♦



「いや、悪ぃな。見苦しいところを見せちまった」

「いえ、こちらの方こそ、うちの妖精族がすみません」

「誰があんたの妖精族なのよ──」

「ははは、ほんとすみません。あとでよく言い聞かせておきますので」

「──もががっ!?」

「お、おう。そうか」


 キティーを掴んで愛想笑いを浮かべると、引き気味に頷かれた。

 どうやら、ドワーフ──恐らく、店長だろう──の方は納得してくれたらしい。これでひとまず、問題は解決した……と思いたかったのだが。


「あの、なにか?」

「べっつにー? なにもないけど?」

「だったら、なんでこっちを睨んでくるんですか?」

「はぁ? 別に睨んでなんてないんですけどー?」

「……さっきと、話し方が随分と違いますね」

「うるせぇな! さっきからグジグジとうぜぇんだよ」


 腕を組んで店内の壁に寄りかかっていたナリアさんは、そう言葉を吐き捨ててそっぽを向いた。

 そんな彼女の態度を見て、ドワーフが眉尻を上げて口を開く。


「ナリア! 客に向かってその言い方はなんだ!」

「あぁ!? 元はと言えば、クソ親父が妖精さんの言う通りにしねぇのが悪いんだろ!」

「なんでワシがチビ助の言うことを聞かなきゃいけねぇんだ!」

「バカか!? ウチらドワーフにとって、妖精族は天が恵んだ幸運の象徴じゃねーか! そんなありがたい存在をぞんざいに扱いやがって……あ、思い出したらまた腹が立ってきた。クソ親父、一発殴らせろ」

「はっ! 誰がてめぇのへぼ攻撃なんて当たるかよ」


 鼻で笑ったドワーフの言葉に、ナリアさんは相当カチンときたらしい。

 額に野太い青筋を浮かばせ、重い威圧感を背負いながら彼へと歩み寄る。


 裂ける口元は先ほどとは違い、大きな弧を描いており、初めの無表情がなんだったのかと思うほど、その表情には感情が色濃く刻まれていた。

 憤怒という、赤色が。


「ぶっ殺す」

「ま、待てナリア。さっきのはワシが悪かったから、その拳を下ろせ」

「拳を下ろして欲しいって? わかったよ。クソ親父の言葉に従ってやる」


 そう告げたナリアさんは、ドワーフの前で拳を地面に振り下ろした。

 すると、生身の人間がやったとは思えない音と共に、店全体が震える。


 これは……体内強化か?

 いや、それにしては魔力の制御が荒い気がする。

 俺達モンスターテイマーが使うような技術ではなく、本能に身を任せた獣のような攻撃。

 恐らく、先天的に身についている、先祖返りの能力かなにかだろう。


 地面に走った亀裂を一瞥したあと、ナリアさんは壮絶な笑みでドワーフを睨む。


「次に妖精さんをぞんざいに扱ったら、これをクソ親父にぶち込むからな」

「わ、わかった」

「わかればいい。……ちっ、ちょっと出てくわ」


 立ち上がって頭を掻いたまま、店をあとにしたナリアさん。

 その姿を見送ったドワーフは、ため息をついてから俺に笑う。


「ナリアがすまんな。昔から、やんちゃな子でな」

「いや、あれをやんちゃで済ませてもいいんですか?」

「はっはっは。慣れれば可愛いもんよ。そういや、自己紹介がまだだったな。ワシはリガルド。この“小人村”を経営しているしがないドワーフだ。お前さんの名前は?」

「自分はアレンと言います。リガルドさんの店には、ダスランさんの紹介で来ました」

「ああ、いい。ワシに敬語なんて使うな、気持ち悪い」


 なら、その言葉に甘えさせてもらおう。

 ドワーフ──リガルドに頷いた俺は、キティーを解放してから話を再開する。


「ぷはぁ! ようやく離したわね。ほんと、いきなりなにするのよ!」

「一応、今回は初心者用の武器の値段を聞きにきたんだけど。あとは、サブ武器で使えそうな短剣辺りの下見もだな」

「ふむ、そうだな。見たところ、お前さんは武芸の心得がありそうだ。となると、普通の鉄製の武器よりは、こっちの方が良さそうだな」

「あれ? あたしのことは無視?」


 カウンターから出て棚の武器に近寄るリガルドに、付いていく。

 彼は薄く赤みがかった長剣を手に取ると、それを俺に渡してくる。


「これには赤銅亀の甲羅を砕いて入れてあるんだが、初心者にはちと重すぎるのが難点な武器だ」

「確かに、一般的な武器より重いな。でも、その分斬れ味も良さそうだけど」

「ねえねえねえ? もしもーし? あたしのこと見えてるー?」

「赤銅亀は鉄と混ぜ合わせると重くなる反面、普通の鉄製品よりも鋭さが増すんだ。お前さんなら、多少重量があっても使いこなせるだろ」

「まあ、使えるとは思う。ちなみに、これはいくら?」

「あたしを無視するなー!」

「いてて、痛てーよ!」


 耳たぶを引っ張ってくるキティーに、俺は抗議しながら捕まえようと手を伸ばす。

 しかし、あっさりと躱され、あっかんべーと煽り顔が返ってきた。


「へへーんだ。二度も同じ手を喰らわないわよ」

「む、ムカつく顔しやがって。とにかく、今は大切な事をしているから、大人しくしててくれ」

「はぁ? なんであたしが、あんたの言うことに従わなきゃいけないわけ? ほら、あたしの退屈を解消するような、なにか面白いことをしなさい」

「あのなぁ……」


 空中でふんぞり返るキティーに呆れていると、リガルドが痛快な笑みを浮かべる。


「ガハハ! 威勢がいいチビ助じゃねーか。そういうの嫌いじゃねぇぜ」

「チビ助じゃない! あたしには、キティーという超可愛い名前があるんだからね。たくっ、これだからひげもじゃドワーフはダメダメなのよ」

「あんだと! さっきも言ったが、これにはちゃんと意味があってだな──」


 また、始まった。

 あって間もないのだが、キティー達の言い合いは既に慣れてしまった。

 懲りないというか、同レベルの喧嘩に辟易するというか。


 人知れずため息を零した俺は、両者の仲裁に入るのだった。



 ♦♦♦



「──あら。おかえり、アレン君」


 冒険者ギルドに戻ってきた俺を見て、アナさんは楽しげな笑顔を向けてきた。

 あれから、小人村で買い物を済ませた俺は、こちらを見ているダスランさんを一瞥してから、アナさんがいる受付の列に並ぶ。


「アナスタシア?」

「だから、私に言わないでってば。文句があるなら、アレン君に言いなさい」

「依頼受注したのはアナさんでしたので、ここに並びましたが……間違っていましたか?」

「間違ってはおりません。おりませんが、その、ですね」


 無表情の中に、残念そうな相貌を滲ませているイヴァンナさん。

 今後ずっと避けられるとは思っていないが、それはできるだけ先延ばしにしたい。


「イヴァンナの悲しさはさて置き。アレン君の答えを見せてもらおうじゃない。貴方が考える、冒険者にとって必要な物は?」

「自分が考える物は──これです」


 手を組んだアナさんに笑みを返した俺は、こちらに近づくダスランさんに手を振る。


「よっ。リガルドとは話せたか?」

「ダスランさんのおかげで、顔を覚えてもらえましたよ」

「そりゃ良かった。……と、いうわけだ。アナちゃん」

「へー。さっき、あんなに楽しそうに話してるかと思ったら、そういう事ね」


 得心がいったという顔で頷くと、アナさんは口元に小さな笑顔を咲かす。


「はい。自分は、ダスランさんの関心(・・)を買いました」

「アレン君が必要だと思ったモノは、先輩冒険者との顔繋ぎ。つまり、顔覚えを良くしてもらうという事」

「どうですか?」


 十中八九大丈夫だとは思うが、まだ完全に安心はできない。

 もしかしたら、物を買っていないので失格です、なんて事を言われる可能性だってある。


 固唾を飲んで答えを待っている中、アナさんがゆっくりと息を吐く。

 そして、俺が受注した依頼書を取り出すと、カウンターにあった判子を押す。


「認めましょう。冒険者ギルドからの依頼──達成よ」

「よしっ!」

「やったじゃねーか、坊主!」


 思わずガッツポーズを取った俺の肩を、笑いながら叩いてくるダスランさん。


「ダスランさんのおかげですよ。来てくれてありがとうございます」

「いーって事よ。オレとしても、有望な若手には粉をかけておきてーしな」

「ふふっ。おめでとう、アレン君。これで、アレン君は正式に冒険者ギルドのメンバーよ」

「おおし! 今日は坊主の加入祝いに、オレが奢ってやる!」

「いえ、お気持ちはありがたいのですが、宿で待ってる人がいるので」


 頭を下げて断ると、頭上から残念そうに頭を掻いた音がした。


「なら、仕方ないか。坊主への祝杯は、次の祝いまで取っておく」

「ありがとうございます。では、急いでいるので自分はこれで」

「はーい。これからもよろしくねー」

「じゃあな、坊主!」


 二人に見送られてギルドをあとにした俺は、駆け足で宿屋に向かう。

 先にキティーが部屋で待っているはずなのだが、しっかりと待機しているだろうか。


 宿の受付でリースさんに今日の分の代金を払い、泊まる部屋を開く。

 そこでは、俺のベッドの上で、寝転びながらお菓子を食べているキティーがいた。


「おー、おかえり。無事に冒険者になれた?」

「……おい、なにを食ってる?」

「あ、これ? あんたに頼まれて冷やしてたらあまりにも美味しそうだったから、つい我慢できずに食べちゃったわ。そういえば、これって……あっ!」

「思い出したか? お前には、また水飴を買ってあげる約束で、ビアンカ用のお菓子を冷やしておくように頼んだよな」


 小人村からの帰り道で、ダスランさんに聞いたお菓子を買っておいたのだが。

 その大切なお菓子は、どこぞの妖精族が食い散らかしていた。


 冷や汗を垂らしていたキティーは、近寄る俺から逃げようと飛ぶ。

 もちろんさせるわけはなく、素早く掴まえる。


「あ、あの、そのね、悪かったとは思ってるわ。あたしだって、楽しみにしていたお菓子を食べられたら、そいつを粉微塵に破壊したくなるもん。でもさ、これは不可抗力というやつじゃない? 目の前に美味しそうなお菓子があったら、誰だって食べるでしょ? それはもはや、人種すら関係ない世界の摂理であるわけで」

「遺言はそれだけか?」

「待って待って手に力を入れないで潰れちゃう潰れちゃうから美少女妖精族から出ちゃいけないものが出ちゃうから!」


 戯言をのたまうキティーに微笑むと、嬉しそうな顔が返ってきた。


「なあ、キティー」

「わかってくれたのね! やっぱり、あんたはそこらの人間と違うと思ってたのよね。あたしの慧眼はもちろんだけど、あんた自身も中々見どころが──」

「悪い子にはお仕置き。これって、当然だよな?」

「──待ってごめんなさい謝るからあああああ!」

「ふんっ!」

「みぎゃあああああああ!?」


 こうして、キティーにお仕置きを済ませた俺は、無駄になったお菓子に肩を落とすのだった。






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