第二十五話 隠し味は秘密なのである
レンは。
私とヴェル様の間へ。
当然のように座り込んだ。
そのまま静かに焚き火を眺めている。
隣を見る。
むむ。
なんとも長い睫毛。
閉じた瞼に影が落ちている。
鼻筋も綺麗だし。
なんだかなぁ。
その向こうには。
ハイビームの如く神々しいヴェル様。
……うん。あれは別枠。
眩しい。
ふと、思った。
……あれ?
もしかして私。
今ハーレム状態というやつでは?
推しメン。
カグツさん。
スパルタ担当。
ヴァスキさん。
天然。
レン。
ハイビーム。
ヴェル様。
……うん。
皆、かっこいい。
目にいいんだか、悪いんだか、よく分からない。
「レン。」
「……?」
「睫毛、長いね。」
レンは少しだけ首を傾げる。
「……睫毛?」
「うん。」
「あ、ちょっと立って。」
レンは特に気にする様子もなく。
すっと立ち上がった。
「あーーーーっ!」
「背!すごく高くなってる!」
「いつの間に!?」
毎日一緒にいたから。
全然気が付かなかった。
思わず見上げる。
前よりずっと高い。
「……そう?」
「そうだよ!絶対伸びてる!」
レンは自分の身体を見下ろし。
不思議そうに首を傾げるだけだった。
「ほらほら。」
「君たち。」
「とびっきり美味しいご飯ができたから。」
「食べるよ〜。」
鍋を抱えたカグツさんが。
笑顔で手を振る。
湯気と一緒に。
食欲をそそる香りが漂ってきた。
「美味しい……!」
一口食べると。
思わず声が漏れる。
どこか。
カレーによく似た味。
身体の芯まで温まっていく。
「へぇ〜。」
「これ、何を使ってるんですか?」
カグツさんは木のスプーンを口へ運び。
「……うん。」
「まぁ。」
「色々だね。」
一瞬。
間があった。
「……なんですかその間。」
「怖い。」
思わず身構える。
カグツさんは楽しそうに笑う。
「大丈夫。」
「ちゃんと食べられるものだから。」
「その言い方が一番怖いです!」
思わずツッコミを入れると。
カグツさんは声を上げて笑った。
ヴェル様も。
静かに口元を緩める。
レンは。
そんなやり取りなど気にもせず。
黙々と食べ続けていた。
焚き火が揺れる。
笑い声が響く。
世界には。
まだ分からないことばかりだけれど。
今だけは。
この穏やかな時間を。
大切にしたいと思った。




