第二十二話 繋がりはじめたカケラたち
ヴェル様は静かに目を閉じた。
「過去に例のない王の誕生。」
「……そういうことだったのか。」
小さく息を吐く。
静かな声だった。
「……ヒカリ。」
「私は。」
「先代の風の神王を。」
「この手で討った。」
私は息を呑む。
「全ての始まりは。」
「神託。」
「あるいは。」
「神託に振り回された結果、と言うべきか。」
ヴェル様はゆっくりと語り始めた。
「先代の神具は。」
「過去を見る力を持っていた。」
「その力で。」
「数え切れないほどの歴史と。」
「数え切れないほどの真実を知ったのかも知れない。」
一瞬だけ言葉を切る。
「そして。」
「壊れた。」
静かな風が吹く。
「建国の時代から伝わる。」
「聖石へ刻まれていた神託。」
「その言葉が。」
「全ての始まりだ。」
ヴェル様は静かに目を閉じる。
まるで。
その一文を思い出すように。
『時至りて。』
『神の世は終焉へと向かわん。』
『星の欠片。』
『現し世にその姿を現す時。』
『欠片と神具を揃え。』
『神聖樹のもとにて。』
『選ぶがよい。』
『失われし神代を呼び戻すもよし。』
『新たな世界をひらくもよし。』
静寂が訪れる。
「……もっとも。」
「この神託が、本当に建国当時のものなのか。」
「言葉が正しく伝えられているのか。」
「それすら、私にも分かっていない。」
「だが。」
「風の神国は数百年もの間、この神託を信じ。」
「その答えを追い続けてきた。」
一度。
ヴェル様は遠くを見つめる。
「先王が。」
「何を見て。」
「何故。」
「あのように変わってしまったのか。」
「それは、私にも分からない。」
「だが。」
「先王は語っていた。」
「神族が滅びようとしているのは。」
「神族以外の種族が増えたからだと。」
「神への祈りが足りないからだと。」
静かな風が吹く。
「世界を変えるには。」
「神国を一つにするしかない。」
「そう。」
「考えるようになった。」
カグツさんが静かに頷く。
「……それは。」
「初耳だったな。」
「圧政。」
「信仰を強いるようになったことは聞いていた。」
「意見書も送ったよ。」
「……まぁ。」
「聞き入れてはもらえなかったけどね。」
ヴェル様は静かに目を伏せる。
「私は。」
「風の神国に生きる民に。」
「これ以上、犠牲になってほしくなかった。」
「だから。」
「先王を討った。」
静寂が流れる。
「先王は星の欠片を探し。」
「神聖樹のもとで。」
「新たな時代を創るのだと言っていた。」
そう言うと。
ヴェル様は胸元の神具へ静かに触れた。
「この神具も。」
「ヒカリ。」
「貴女へ反応したことがあるのだよ。」
私は思わず胸元を見る。
風の神国で。
確かに神具は光った。
「何が、星の欠片なのか。」
「確信はない。」
「だが。」
「ヒカリ。」
「貴女が。」
「その『星の欠片』なのだと。」
「私は思った。」
ヴェル様は真っ直ぐ私を見つめる。
「それが風の神国で。」
「話せていなかったことだ。」
私は。
言葉を失っていた。
胸の奥が。
ざわりと波立つ。
少しずつ。
今までの出来事が。
一つの線で繋がり始めていた。




