第二十話 キミが生まれた日
カグツさんは少しだけ空を見上げた。
「妻はね。」
「神族じゃなかった。」
私たちはじっと耳を傾ける。
「ヒトだったんだ。」
「正式な生まれも。」
「どこの出身かも分からなかった。」
「ヒトでありながら神力を持っていたから。」
「もしかしたら。」
「先祖を辿れば神族がいたのかもしれない。」
「でも。」
「本人は血筋なんて全然気にしてなかった。」
「だから、私も調べようとは思わなかったよ。」
カグツさんは懐かしそうに笑う。
「一緒にいるとね。」
「とても心地よかった。」
少しだけ遠くを見る。
「……あ。」
「レンの生まれた時の話だったね。」
苦笑する。
「花の季節だった。」
「命が芽吹く。」
「そんな日に。」
「君は生まれた。」
その笑みが。
ゆっくりと消える。
「あの日。」
「彼女の側を離れなければ良かった。」
静かな声だった。
「身重だった彼女は。」
「襲撃を受けた。」
「お腹を庇いながら。」
「どうにか。」
「私のところまで辿り着いた。」
誰も言葉を発しない。
「そして。」
「私の目の前で。」
「君を産み。」
「星へ還った。」
カグツさんは静かに目を閉じる。
『この子を、お願い。』
『一緒にいられなくて、ごめんなさい。』
『愛してるわ。』
私と息子に。
その言葉だけを残して。
静かに息を引き取った。
「抱き上げた君は。」
「とても小さくて。」
「壊れてしまうんじゃないかと思ったよ。」
少しだけ笑う。
「軽かったなぁ。」
「妻を失ったばかりだったのに。」
「不思議なくらい。」
「愛おしかった。」
「その瞬間だった。」
カグツさんは静かに視線を落とす。
「私の神具は光を失い。」
「君へ受け継がれた。」
「王の私は、まだ生きていた。」
「キミは純粋な神族でもない。」
「それなのに。」
「新たな王が生まれた。」
静かな沈黙が流れる。
そして。
カグツさんは、ふっと苦笑した。
「……まぁ。」
「神具が小鳥だったのには。」
「私も驚いたよ。」




