第十九話 真実への入り口2
静かな風が吹き抜ける。
廃都には。
私たち以外、誰もいなかった。
カグツさんがゆっくりと口を開く。
「神王って。」
「何だと思う?」
突然の問いだった。
私は首を傾げる。
「この国で一番偉い人……ですか?」
カグツさんは苦笑した。
「まぁ、それも正しい認識だね。」
一拍置く。
「少し考えてみてほしい。」
「神王って。」
「"誰に"よって。」
「"誰が"選ばれているんだろう、ね。」
誰も答えない。
考えたこともなかった。
「私たち神族は。」
「それを当たり前として受け継いできた。」
「歴史をどれだけ遡っても。」
「始まりは見えてこない。」
「それほど古い仕組みなんだ。」
カグツさんは崩れた都を見渡す。
「王が死ねば。」
「新たな王が生まれる。」
「終わりがない。」
「それが。」
「この国の"安定"だった。」
静かな声が続く。
「この仕組みによって。」
「私たちは、ある程度の平穏を保ってきた。」
「それもまた事実。」
「だから、誰も疑わなかった。」
「疑う必要もなかったのかもしれない。」
風が吹く。
草木が静かに揺れる。
「ただね。」
「長い歴史の中で徐々に異変が見え始めた。」
カグツさんの表情が少しだけ引き締まる。
「神族の数。」
「そして。」
「神力の低下。」
「私たちは。」
「少しずつ数を減らしている。」
「実を言えば。」
「全盛期と比べると。」
「今は三分の一ほどしか残っていない。」
思わず息を呑む。
「純粋な神族。」
「そして。」
「王が死ぬこと。」
「それが。」
「新たな神王が生まれる条件だった。」
一瞬だけ。
カグツさんの視線がレンへ向く。
「でも。」
「その当たり前が。」
「私の目の前で崩れたんだよ。」
その時だった。
「ピィ。」
肩に止まっていたピンクちゃんが。
私の右手首を小さなくちばしでつつく。
こん。
次の瞬間。
腕輪が淡く青く輝いた。
「え?」
同時に。
ピンクちゃんの身体も柔らかな光に包まれる。
「ピンクちゃん?」
小鳥は何事もなかったように首を傾げる。
けれど。
腕輪と共鳴するように。
その光はゆっくりと瞬いていた。
ヴェル様が静かに目を細める。
「共鳴……。」
カグツさんは小鳥を見つめ。
どこか感心したように笑う。
「その子が、火の神国の神具だよ。」
「えぇぇぇぇっ!?」
思わず腕輪を見る。
「ピンクちゃんが……。」
「神具?」
信じられずにいると。
隣から手が伸びた。
レンだった。
何気なく。
私の右手首へ触れる。
その瞬間。
腕輪が再び淡く輝いた。
「え?」
青い光は静かに揺れ。
やがて消えていく。
レンは自分の手を見る。
「……。」
静かな沈黙が流れる。
やがて。
カグツさんがレンを見る。
「……レン。」
「次は。」
「君が生まれた日の話をしよう。」




