第十八話 真実への入り口
どれくらい歩いただろう。
木々が途切れた先に。
石造りの建物が姿を現した。
「……街?」
思わず足を止める。
崩れた城壁。
ひび割れた石畳。
草木に覆われた建物。
かつて街だったことだけが分かる。
「都だよ。」
カグツさんが静かに答えた。
「昔。」
「この国でも指折りに栄えた場所。」
「でも。」
「今は誰も住んでない。」
私は廃墟を見渡す。
「何があったんですか?」
カグツさんは崩れた建物へ視線を向ける。
「ここはね。」
「神国から独立を宣言した都なんだ。」
「独立……?」
「うん。」
「神族だけが恩恵を受ける世界に。」
「異を唱えた人たちがいた。」
「皆が平等に生きられる国を作ろうとした。」
静かな声だった。
誰かを責めるわけでもない。
ただ。
昔話をするように続ける。
「もちろん。」
「神国は認めなかった。」
「武力衝突が起きて。」
「この都は滅びた。」
風が吹く。
崩れた塔の隙間を。
静かに吹き抜けていく。
「そんなことが……。」
「歴史なんて。」
カグツさんは苦笑した。
「案外そんなものだよ。」
私はもう一度。
廃墟を見つめる。
ここにも。
たくさんの人が暮らしていた。
笑って。
泣いて。
誰かを大切に想って。
生きていた。
その全てが。
今は静かな石の街になっている。
「久しぶりになるな。」
聞き慣れた落ち着いた声が響く。
振り返る。
白金の髪が風に揺れていた。
「ヴェル様!」
思わず声が弾む。
ヴェル様は軽く頷くと。
辺りを静かに見渡した。
「初めて訪れましたが。」
「こんな場所を待ち合わせに指定するとは。」
「あなたくらいの発想です。」
カグツさんが笑う。
「人も来ないからね。」
「話をするにはちょうどいい。」
「……確かに。」
ヴェル様は静かに頷いた。
その時だった。
レンが。
何も言わず。
私の前へ一歩だけ出る。
「?」
私は首を傾げる。
ヴェル様は一瞬だけレンへ視線を向ける。
けれど。
何も言わなかった。
「さて。」
カグツさんが手を叩く。
「ここなら。」
「誰に聞かれる心配もない。」
「話そうか。」
「知っている"すべて"を。」
静かな廃都に。
風だけが吹き抜けていた。




