第十六話 問題発言
街道を歩きながら。
私はふと気になっていたことを口にした。
「そういえば。」
「カグツさんって。」
「王様になる前は何をしてたんですか?」
ヴァスキさんが小さく笑う。
「ヒカリさん。」
「この人は意外にも。」
「すごい冒険家だったんですよ。」
ヴァスキさんは大切なことなので繰り返す。
「意外にも、です。」
「なんかトゲを感じるなぁ。」
カグツさんが肩をすくめる。
ヴァスキさんは構わず続けた。
「四神国を巡り。」
「各地の遺跡や生息生物を調査し。」
「文献としてまとめる。」
「時には各地の争いごとを解決し。」
「ここ百年で最も功績を残した冒険家。」
「そう呼ぶ研究者も少なくありません。」
「ほわーーーー!」
「カッコいい!!!!」
思わず目を輝かせる。
流石私の推し! もう最高!!
カグツさんは照れくさそうに頭をかく。
「適当に巡ってたら。」
「結果がついてきただけなんだけどな。」
「……そういうことは。」
「研究者の前では絶対に言わないでください。」
「いつか刺されますよ?」
「怖い怖い。」
カグツさんは苦笑した。
私は少し考える。
「王様になっちゃったから。」
「引退したんですね。」
「……。」
「なんか。」
「神王制度って。」
「夢がある人からしたら。」
「残酷ですね。」
一瞬。
空気が止まる。
レンも。
ヴァスキさんも。
何も言わなかった。
カグツさんだけが。
優しく笑う。
「……ヒカリちゃんは。」
「面白いね。」
「あ。」
「すみません。」
「本人を前にして。」
「構わないよ。」
カグツさんは空を見上げる。
「それに。」
「実は。」
「私は神王じゃないんだよね。」
「……ほ?」
思わず変な声が漏れる。
ヴァスキさんまで足を止めた。
「……。」
「何を、言ってるんですか?」
レンだけは静かにカグツさんを見る。
カグツさんは。
いつものように。
にこっと笑った。
「まぁ。」
「また風のやつが来たら。」
「説明するよ。」
「いやいやいや!」
「待ってください!」
「今の聞き流せる話じゃないですよね!?」
私の叫びだけが。
街道に響き渡った。




