第十五話 穏やかな時間
翌朝。
出発の準備を終えた私たちは。
宿の前へ集まっていた。
「レン。」
カグツさんが声を掛ける。
「少し歩こうか。」
コクン。
二人は少し離れた場所へ歩いていく。
私はその背中を眺めていた。
「……あれ?」
「親子時間、してる感じですかねぇ。」
ヴァスキさんが小さく笑う。
「そうですね。」
「久しぶりみたいですから。」
◇◇◇
「レン。」
「すごく成長してるね。」
「……何、急に。」
「いやぁ。」
「会えない時間が長かったのもあるけど。」
「こうして強く、優しく育ってくれて。」
「父上、嬉しいなぁ。」
レンは少しだけカグツさんを見る。
「……マナ。」
「ん?」
「マナがないと。」
「神力、使えないって聞いた。」
一瞬だけ。
カグツさんの表情が静かになる。
「……。」
「どういうこと?」
「うん。」
「ちょっと色々あってね。」
カグツさんは苦笑した。
「近いうちには話さないといけない。」
「でも。」
「ここだと、ちょっと話せないな。」
「そう。」
レンは短く頷く。
少しだけ間が空く。
「……あれ?」
カグツさんが首を傾げる。
「それだけ?」
「話してくれる気はあるんでしょ?」
「なら。」
「急いでない。」
カグツさんは少し驚いたように目を丸くする。
そして。
ふっと笑った。
「そういうところ。」
「本当に大人になったね。」
「……何?」
「いや、何でもないよ。」
◇◇◇
「ヒカリさんって。」
「カグツ様には推しだ何だと騒ぐのに。」
「レンくんには何もないんですか?」
「へ?」
「何ですか、急に。」
「あの二人。」
「そっくりだと思うのですが。」
「レンくんには騒がないので。」
「そっくり……?」
レンを見る。
カグツさんを見る。
もう一度レンを見る。
「十年もしたら。」
「カグツ様の容姿に、大分近づくかと。」
「えぇぇぇ〜〜〜!」
「まっさか〜。」
「今でも。」
「顔の造形自体、よく似ていますよ。」
言われて見比べる。
「……。」
「そうかなぁ?」
「そっくりかと。」
ヴァスキさんは小さくため息をついた。
その様子を見ていたカグツさんが笑う。
「何の話かな?」
「レンくんが将来。」
「カグツ様そっくりになる、という話です。」
「あぁ。」
「それは楽しみだ。」
「……。」
レンは少しだけ嫌そうな顔をしていた。
「じゃ。」
カグツさんが手を叩く。
「そろそろ行こうか。」
私たちは。
次の目的地へ向けて歩き始めた。




