第十四話 腹が減っては何とやら
宿へ戻る頃には。
すっかり日も暮れていた。
部屋へ入ると。
誰からともなく椅子へ腰を下ろす。
「さて。」
カグツさんが軽く手を叩いた。
「一回整理しようか。」
全員の視線が集まる。
「今日分かったことは三つ。」
指を一本立てる。
「一つ。」
「死者は誰かに操られている可能性が高い。」
ヴァスキさんが頷く。
「ただ。」
「器という言葉が気になりました。」
「操るというより。」
「"何か"を入れるという方が近いのかもしれません。」
「そうだね。」
二本目の指を立てる。
「二つ。」
「死者を操る能力と。」
「転移する能力。」
「これは別だろう。」
「同一人物とは思えません。」
ヴァスキさんが静かに続ける。
「少なくとも。」
「今日現れた青年だけでは説明がつきません。」
私は思わず呟く。
「じゃあ。」
「敵は一人じゃない……?」
「おそらく二人以上はいるだろうね。」
カグツさんは頷いた。
三本目の指を立てる。
「そして三つ。」
「向こうは。」
「私たちの存在を知った。」
部屋が静まり返る。
確かに。
もう隠れて調べることはできない。
「つまり。」
「向こうも動く。」
カグツさんはそう締めくくった。
「私たちより先に。」
「証拠を消そうとするかもしれない。」
私は思わず身を乗り出す。
「じゃあ。」
「急がないと。」
「そういうこと。」
カグツさんは笑った。
「だから明日からは。」
「少し忙しくなるよ。」
その時だった。
ぐぅぅぅ……
静かな部屋へ。
大きなお腹の音が響く。
「…………。」
全員の視線が私へ集まる。
「ち、違います!」
「えっと!」
「は、腹が減っては何とやら、です!!」
慌てる私を見て。
カグツさんが吹き出した。
「あはは!」
「確かに忙しくなる前に。」
「まずは夕飯だな。」
張り詰めていた空気が。
少しだけ和らいだ。
でも。
胸の奥に残った不安だけは。
消えることはなかった。




