第十三話 約束
カグツさんは。
遺族の方々一人ひとりと向き合った。
亡くなられた方の身体を取り戻せなかったこと。
犯人は必ず見つけ出し、裁くこと。
そして。
二度と同じことを起こさせないと。
静かに。
けれど、一つひとつ丁寧に言葉を紡いでいく。
誰も責めなかった。
誰も怒鳴らなかった。
ただ。
泣いている人たちの話を。
最後まで聞いていた。
カグツさんは。
穏やかな眼差しで、一人ひとりを見つめる。
「その人が生きた証を。」
「あなた方が忘れなければ、それでいい。」
その言葉に。
誰かが静かに涙を流した。
私も。
胸が締め付けられる。
──いなくなった人は。
その人を知る人たちの中にしか、いない。
その言葉だけが。
いつまでも心に残っていた。
◇◇◇
宿へ戻る道。
夕焼けが街を赤く染めていた。
私は。
さっきのカグツさんの言葉を思い返していた。
「ねぇ。」
隣を歩くレンを見上げる。
「もし。」
「私がいなくなったら。」
「レンは覚えていてくれる?」
レンの足が止まった。
「……嫌だ。」
「え?」
思わず聞き返す。
「な、何でよ!」
「そこは忘れない、とか言うところでしょう!」
レンは少しだけ考えてから答える。
「……いなくなったら。」
「探すから、いい。」
思わず笑ってしまう。
「……ふふ。」
「そういうことじゃないんだけどな〜。」
でも。
それがレンらしい。
「うん。」
「いなくなったら、探してね。」
「はい、約束。」
私は小指を差し出した。
「?」
レンは不思議そうに首を傾げる。
「ほら。」
「小指、出して。」
レンは言われるまま、小指を立てた。
私はその小指に、自分の小指を絡める。
「こうやって。」
「指を結ぶの。」
レンは絡まった小指をじっと見つめた。
「……これ、何?」
「約束はちゃんと守ります、っていう、おまじない。」
「おまじない……。」
「うん。」
「約束ね。」
レンは少しだけ目を細める。
絡まった小指を見つめたまま。
「……約束。」
その一言が。
何だか、とても嬉しかった。
夕焼けの空の下。
赤く染まった二人の小指は。
しっかりと結ばれたのだった。
ヴァスキ「何ですかね……あれ。」
「何か儀式的なものなのでしょうか……」
カグツ「うんうん。」
「君のそういうところが、私は大好きだよ。」
ヴァスキ「何かご存じなのですか?」
カグツ「あれはね、約束を破ったら指を寄越せというものだね」
ヴァスキ「……なんと恐ろしいことを」
カグツ「……悪い。それは嘘だよ。」
……あながち間違いでもない。




