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星と呼ばれた少女  作者: さかい
火の神国
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第五話 ムシキライ


 ヴァスキさんが手にしていたのは。


 よくしなる枝だった。


 ぺしん。


「わわっ」


 ぺしん。


「う……」


 痛くはない。


 痛くはないんだけど。


 ……イラっとする。


 しかも。


 微妙に葉っぱまで付いている。


 それがまた癪だった。


(誰!?)


(このびよんびよんの枝を拾ったやつ!)


(木の場所を教えなさい!)


(ピンクちゃんに燃やさせてやるんだから!)


「余計なことを考えていますね」


「えっ」


 ぺしん。


「わたっ!」


「今のは避けられましたよ」


「今のは心を読まれたことに驚いたんです!」


 ヴァスキさんは小さくため息をつく。


「……言葉に出ていました」


「……」


「え?」


 私はゆっくり自分の口元へ手を当てる。


「全部ですか?」


「全部です」


「…………」


 穴があったら入りたかった。


◇◇◇


「当たらないようにするには」


 ヴァスキさんは枝を軽く揺らした。


「避けるか」


「防ぐかです」


 分かる。


 分かるんだけど。


 ぺしん。


(だめ)


(イライラする)


 ぺしん。


(へし折ってやる)


 そんなイメージの方が、よっぽど湧いてくる。


「攻撃ではありませんよ」


 ヴァスキさんが静かに言う。


「ヒカリさん」


「守ることを考えてください」


 守る。


 守るって。


 どうやって。


 ぺしん。


 ストレスで叫びそう。


◇◇◇


「代わるよ」


 レンが立ち上がった。


 ヴァスキさんから枝を受け取る。


 そして。


 どこからか、よく似た枝をもう一本持ってきた。


「……何、この嫌な予感」


「行くよ」


「ちょっと待って!」


 思わず後ずさる。


「何か隠してない!?」


「本気で叩いたりしたら、枝でも血を見そうで嫌!」


「本気なんか出さないよ」


 レンはいつもの調子だった。


 でも。


 絶対に。


「何、なんか隠してるでしょ!」


「……隠す?」


 レンは不思議そうに首を傾げる。


「見えてるでしょ?」


「は?」


「見え――」


 枝先を見た。


「…………」


 うねうね。


 枝の先で。


 毛虫が元気よく動いていた。


「ちょ!!!!」


「やだぁぁぁぁぁ!!!!!」


「ありえない!!!!!!」


 思わず全力で飛び退く。


 レンは枝を軽く振る。


 ビュンッ。


「ほら」


「手加減してあげるから、出しなよ」


「何その『出しなよ』って!!」


「しかも今、枝を振る音まで違ったし!」


「ヴァスキさんに代わって!」


「いやーーーーーーーーー!!」


 その瞬間だった。


 ぽわん。


 私の目の前へ、白い光がふわりと広がる。


 レンの枝が。


 ぴたりと止まった。


「あれ……?」


 ゆっくり目を開ける。


 毛虫は。


 届いていなかった。


「当たらない」


 レンが小さく呟く。


 ヴァスキさんは静かに頷いた。


「ええ」


「出ましたね」


 私はほっと息を吐く。


 その直後だった。


「よかったね」


 レンが笑う。


 私はにっこり笑い返した。


 そして。


 ぱぁんっ。


 レンの肩を叩く。


「……手伝ってあげたのに」


「毛虫なんて反則でしょ!」


「ちゃんと手加減したよ?」


「そこじゃないの!」


 思わずもう一度、ぺしっと肩を叩く。


 レンは本当に分かっていなさそうだった。


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