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星と呼ばれた少女  作者: さかい
水の神国
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第四十一話 次なる目的地


どれくらい飛んだのだろう。


気付けば。


辺りは少しずつ明るくなりはじめていた。


眼下に広がる森。


遠くに見える山々。


見覚えのない景色だった。


竜がゆっくりと高度を下げる。


やがて。


大地へ降り立った。


私はへなへなと座り込む。


足が震えていた。


「し、死ぬかと思った……」


3回は死んだ気がする。


レンは平然としている。


何なのこの子。


「どうしたものか……」


低い声が降ってくる。


私は思わず睨み上げた。


その時だった。


黒い竜の身体が光に包まれる。


「え?」


思わず目を瞬く。


巨大な身体が縮む。


黒い鱗が消える。


翼が消える。


そして。


そこに立っていたのは。


見覚えのある人物だった。


「……まったく」


深いため息。


呆れたような声。


聞き覚えしかない。


「大変なことになりましたね」


私は固まった。


見間違えるはずがない。


聞き間違えるはずもない。


そこにいたのは。


黒髪の青年。


金色の瞳に。


エキゾチックな顔立ち。


「……っ?」


数秒。


思考が止まる。


そして。


ようやく理解した。


「ヴァスキ、さん?」


青年は眉をひそめた。


「他に誰がいるんですか」


その言葉に。


私は頭を抱えた。


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


森に叫び声が響いた。


ヴァスキさんは露骨に嫌そうな顔をする。


「うるさいですね」


「だって!」


私は指を突き付ける。


「竜!」


「はい」


「おっきかった!」


「そうですね」


「何で言わないんですか!?」


ヴァスキさんは心底不思議そうな顔をした。


「聞かれませんでしたので」


私は絶句した。


隣で。


レンが目を輝かせていた。


「強い」


ぽつりと呟く。


ヴァスキさんが視線だけ向けた。


「?」


レンはヴァスキさんを見上げる。


真っ直ぐに。


興味深そうに。


「全く勝てそうにないな、今は」


即答だった。


私は思わず目を丸くする。


ヴァスキさんは僅かに目を細めた。


「今は、ですか」


「うん」


レンは迷わず頷く。


その様子に。


ヴァスキさんは小さく息を吐いた。


「随分と向上心があることで…」


少しだけ空気が和らいだ気がした。


私は夜空を見上げる。


姫巫女様。


アズルさん。


そして。


ヴェル様。


胸が少しだけ痛んだ。


「どこに行けばいいのかな……」


ぽつりと呟く。


すると。


ヴァスキさんが腕を組んだ。


「火の神国に行きましょう」


私は目を瞬く。


「火の神国?」


「ええ」


金色の瞳が細められる。


「あの方なら」


「何か知っているかもしれませんからね」


私は首を傾げる。


すると。


隣でレンが頷いた。


「うん」


当たり前のように。


「僕も父上に会わないといけないところだったしね」


私は固まった。


レンは平然としている。


まるで。


明日買い物へ行くくらいの気軽さだった。


「……父上」


思わず呟く。


そうだった。


レンのお父さんは。


火の神王だった。


「何?」


レンが首を傾げる。


私は頭を抱えた。


そういえば。


この子。


王子だった。


空はすっかり青々としている。


次の旅も。


どうやら平穏とは程遠そうだった。


――水の神国編・完

ここまで水の神国編を読んでいただき、本当にありがとうございました!


レンとの出会い。


少しずつ見え始める物語の真実。


姫巫女様との別れ、ヴェル様との再会。


そして、ヴァスキさんの思わぬ正体。


水の神国編では、たくさんの出来事を描いてきました。


少しでも楽しんでいただけていたら、とても嬉しいです。


次回からは、いよいよ火の神国編が始まります!


新たな神王「父上さん」も登場し、物語もさらに大きく動き始めます。


もし作品を気に入っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります。


これからも『星と呼ばれた少女』をよろしくお願いいたします。


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