第七話 分からないことばかり
ヒカリが退室した後。
しばらくして、ヴァスキが口を開いた。
「何か分かりました?」
ヴェルは首元の宝石に触れた。
「……神託の内容を覚えているか」
「神託、ですか?」
小さく息を吐く。
「曖昧な神託など、本来は関わりたくないんだがな」
沈黙。
やがてヴェルは呟く。
「星の欠片、現し世にその姿をあらわす時」
ヴァスキが眉をひそめた。
「……あの少女が星の欠片だと?」
「分からん」
ヴェルは即答した。
「分からないことが多すぎる」
「神託の石が砕けたこと」
「そして、この宝石が反応したこと」
首元の宝石は何事もなかったかのように沈黙している。
「謎しかないですね」
ヴァスキは腕を組んだ。
ヴェルは窓の外へ視線を向ける。
春の風が木々を揺らしていた。
「元の場所へ帰してやれれば、それが一番なんだがな」
ぽつりと漏れた言葉に、ヴァスキは何も返さない。
「どうします?」
しばしの沈黙。
やがてヴェルは静かに答えた。
「……まだ様子見だな」
◇◇◇
よく分からない。
王様に呼ばれて。
手を握られて。
そして帰された。
ひとつだけ分かることは。
近くで見る王様は、とんでもなく綺麗だったということだ。
異性とかそういう話じゃない。
宝石とか。
そういう綺麗なものを見た後みたいな。
夢を見ていたような気さえする。
どうやって部屋へ戻ったのかもよく覚えていない。
気が付けば、私はいつもの部屋にいた。
「おかえりなさい」
聞き慣れた声に顔を上げる。
シュルティさんだった。
「文字がお分かりになるようですし、いくつか本をお持ちしました」
そう言って机の上に本を並べる。
思わず目を見開いた。
久しぶりの本だった。
手に取ってみる。
絵の多い本。
子ども向けの昔話。
難しい本は一冊もない。
きっと私でも読めるように選んでくれたのだろう。
少しだけ胸が温かくなった。
その中で、一冊だけ気になる本があった。
「はじまりのものがたり?」
思わず声に出す。
薄い表紙の絵本だった。




