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星と呼ばれた少女  作者: さかい
水の神国
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第二十四話 多重世界論

「なぜ」


「私なのでしょうか」


青年は静かに頭を下げた。


姫巫女は窓の外を見ている。


花火の光が湖面を照らしていた。


「もっと適任がいるはずです」


「私より優秀な者も」


「私より慕われている者もおります」


姫巫女は小さく笑う。


「私が選ぶわけではありませんもの」


青年が顔を上げた。


「次の神王を決めるのは」


「神と呼ばれる意志か」


「あるいは運命か」


穏やかな声だった。


「でも」


姫巫女は振り返る。


青い瞳が青年を見つめた。


「私が選ぶなら」


「きっと貴方だったわ」


青年は言葉を失う。


姫巫女は続けた。


「星の子たちを」


「お願いできますか」


その言葉に。


青年は目を伏せた。


「……私で良いのなら」


姫巫女は楽しそうに笑う。


「実際に会ったら」


「好きになってしまいましたの」


「きっと」


「貴方も好きになれるわ」


窓の外。


花火が夜空に咲く。


姫巫女はそれを見上げた。


「五百年」


「長く生きすぎました」


どこか寂しそうな声だった。


「私の後を継がせてしまうのは」


「少し酷ね」


そして。


夜空の向こうを見つめる。


「忘れないで」


「星とともに」


「貴方のそばにいることを」


◇◇◇


私は資料館に来ていた。


もちろん。


レンに連行されたのだ。


「こっち」


「まだ見てない」


「まだあるの!?」


思わず叫ぶ。


レンは平然としていた。


絶対に楽しんでいる。


そして。


使者だった青年が現れる。


「お二人とも」


「また資料館ですか」


「主にこの人です」


私は即答した。


青年は小さく笑う。


「……実際にお会いしてみると」


「想像と違うものですね」


その表情はどこか楽しそうだった。


やがて。


彼は一冊の本を取り出す。


「ヒカリさんは」


「他世界についてお探しなのですよね?」


私は固まった。


「え?」


青年は本を開く。


「多重世界論」


「非常に難しい概念ですが」


そこから始まった話は。


私の想像を遥かに超えていた。


世界は一つではないかもしれない。


時間も一定ではないかもしれない。


もしそうなら。


私は帰れるのだろうか。


青年は本を閉じる。


そして静かに私を見た。


「それに……」


青い瞳が私を見つめる。


「貴方の神力は……」


私は思わず身構えた。


青年は僅かに眉を寄せる。


「星に似ている」


そして。


小さく首を振った。


「いえ」


「同じ、と言った方が近いのでしょうか」


心臓が跳ねる。


青年は静かに続けた。


「ずっと不思議だったのです」


「この世界ですら、地域によって水の性質は異なる」


「神力も同じです」


「魂と同じだからこそ」


「必ず個性がある」


そして。


ゆっくりと顔を上げる。


「貴方は」


青い瞳が真っ直ぐ私を射抜く。


「本当に異世界から来たのでしょうか」


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