第二十一話 星の子
私は考えていた。
神託。
未来。
危険。
いまだに頭の中が整理できない。
それでも。
「……では」
私は唇を噛む。
「私は危険ではないのですか?」
少女は少し考えた。
そして。
静かに首を横へ振る。
「その問いに、答えることはできません」
私は目を見開いた。
「え……」
「火は危険です」
少女は穏やかに言う。
「水も」
「嵐も」
「地震も」
青い瞳が私を見る。
「ですが」
「危険であることと」
「存在してはならないことは」
「同じではありません」
私は言葉を失った。
少女は続ける。
「星の子」
聞き慣れない呼び名。
けれど。
不思議と嫌ではなかった。
「貴女の力は」
「火、水、風、地」
「どれにも近しくありません」
「え?」
思わず声が漏れる。
「私たちは」
「自らを介して力を発揮します」
少女は小さな水球を指先へ浮かべた。
「その過程で」
「火となり」
「水となり」
「風となり」
「地となるのです」
水球が静かに消える。
「ですが」
少女は私を見る。
「貴女は……」
神殿が静まり返る。
「そのまま」
「星の力を引き出している」
私は息を呑んだ。
星の力。
どこか現実味のない言葉だった。
けれど。
胸の奥では。
不思議なほど腑に落ちる。
「だから」
少女は静かに言った。
「私たちにも分からないのです」
「分からない?」
「前例がありませんから」
私は俯く。
そして。
あの日を思い出した。
「前に」
「黒い雷みたいな力が出たんです」
少女は黙って聞いている。
「私にも何が起きたのか分からなくて……」
少女は少しだけ目を伏せた。
「私にも分かりません」
私は目を瞬く。
姫巫女なら。
何でも知っていると思っていた。
少女は小さく首を振る。
「未来は見えても」
「分からないことはあります」
そして。
少しだけ微笑んだ。
「少なくとも」
「私が知る四属性の力ではありません」
そして。
ふと話題を変えるように言った。
「風の王は」
「神託などに振り回されるとは思えませんが」
私は顔を上げた。
「え?」
少女は少しだけ楽しそうだった。
「随分と心配されているようですよ」
最後に見たヴェル様を思い出す。
「普段は何の連絡もないのですが」
「珍しく問い合わせがありました」
私は固まる。
「黒髪」
「黒目」
「十代半ばほどの少女」
「その情報を求めていました」
私は言葉を失った。




