第二十話 求めるもの
「さぁ」
「貴女は何を求めにいらして?」
私は言葉に詰まった。
何を求めて。
そう言われても。
分からない。
帰りたいのか。
自分を知りたいのか。
この世界で生きたいのか。
何一つ。
答えを持っていなかった。
「えっと……」
恐る恐る口を開く。
「聞きたいことはあるのですが」
少女が微笑む。
「はい」
「そもそも私たち」
「姫巫女様に呼ばれて来たのですよね?」
少女がくすりと笑う。
「そうですね」
「呼んだのは私です」
私は少しだけ安心した。
良かった。
話が通じる。
「では」
「どうして私たちを?」
少女は少しだけ目を細めた。
「生を受けて五百年ほどになりますが」
さらりと言われた言葉に固まる。
五百年。
本当にお婆さんだったのか…。
「私の最期の時は近いのです」
今度は別の意味で固まった。
最期。
あまりにも突然だった。
けれど。
少女の表情は穏やかなままだった。
「そして」
青い瞳が私たちを見る。
「最期の時に」
「あなたがた二人がいました」
神殿が静まり返る。
私は隣を見る。
レンも珍しく黙っていた。
「どういう、意味ですか?」
少女は小さく首を傾げた。
「分かりません」
思わず目を瞬く。
「分からないんですか?」
少女は穏やかに答えた。
「見えたからといって」
「必ずそうなるとは限りません」
私は少し考える。
聞きたいことがあった。
「姫巫女様」
「はい」
「風の神国で」
気付けば言葉が零れていた。
「神託があって」
「私は危険かもしれないって」
声が少し震える。
「もしもの時は」
「消さないといけないって」
少女は静かに聞いていた。
否定もしない。
肯定もしない。
ただ待っている。
「私は……」
拳を握る。
「危険なんでしょうか」
沈黙が落ちた。
やがて。
ゆっくりと口を開く。
「風の神国における神託」
その声は穏やかだった。
「近い過去」
「かの国では神託により」
「王が自らの思想以外を排斥しようとしたことがあります」
私は目を見開く。
「そもそも神託とは」
「私の先読みに似たものです」
少女は静かに続ける。
「無数に存在する未来」
「そのひとかけを見ているに過ぎません」
私は息を呑んだ。
「ひとかけ……」
「はい」
そして。
窓の向こうの湖へ視線を向けた。
「未来は」
「見る者によっても」
「選ぶ者によっても」
「形を変えるのです」
少女はそう言って。
静かに微笑んだ。




