第十八話 古い文献
水の神国へ来て数日。
私は今日もレンに連れ回されていた。
資料館の一角。
古びた机の上。
何冊もの本が積まれている。
「これは?」
本が差し出される。
私は諦めて受け取った。
少し読む。
内容は。
古代の神官による記録らしい。
「えっと」
「北方海域に大型魔物が集まる理由について」
レンの目が輝いた。
嫌な予感しかしない。
「楽しそうなところだよね」
本には。
海竜。
災厄種。
深海種。
そんな文字が並んでいる。
どう考えても危険地帯だ。
「こんな場所、絶対行きたくない……」
「なんで?」
レンは本気で不思議そうだった。
その後は少しだけ自由時間になった。
私は星に関する本を探す。
神話。
神族。
星の伝承。
もしかしたら。
自分について何か分かるかもしれない。
けれど。
決定的なことは見つからなかった。
代わりに目に入ったのは。
『神聖樹周辺の生態系について』
だった。
少しだけ気になって開いてみる。
数ページ後。
私はそっと本を閉じた。
古代種。
神獣。
高濃度神力地帯。
危険指定区域。
神聖樹って。
もっと神秘的な場所じゃないの?
私はため息を吐く。
隣では。
レンが興味津々な顔をしていた。
嫌な予感しかしない。
気付けば。
周囲に人が集まっていた。
学者らしき人たちだった。
皆。
こちらを見ている。
「今の読めたのか?」
「古代文字だぞ?」
「いや、それだけじゃない」
別の学者が口を開く。
「さっきは神語だった」
「その前は獣人族の古文書だ」
私は固まる。
そう言われても。
読めるものは読めるのだ。
「どういうことだ……」
学者たちは困惑していた。
一方で。
レンは全く気にしていない。
「こっちは?」
私は頭を抱えた。
◇◇◇
さらに数時間後。
私は疲れていた。
レンは元気だった。
おかしい。
絶対おかしい。
「みのりある資料が多いね」
本人は満足そうだった。
その時だった。
「失礼」
声がした。
振り返る。
そこには。
中性的な美青年が立っていた。
水色の髪。
整った顔立ち。
穏やかな微笑み。
けれど。
どこか只者ではない雰囲気があった。
青年は私たちを見る。
そして。
少しだけ目を細めた。
「あなた方が」
「古代文字を解読していたお二人ですね」
嫌な予感がした。
ものすごく嫌な予感だ。
……
説教大魔神ヴァスキさんを思い出す。
青年は丁寧に一礼した。
「姫巫女様がお会いしたいそうです」
私は固まった。
レンは。
「今日は無理」
とだけ答えた。




