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星と呼ばれた少女  作者: さかい
水の神国
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第十七話 名前を呼ばない人


水の神国へ来て数日。


私は今。


古書店の床に座っていた。


「これ読める?」


こくん


「こっちは?」


こくん


「これも?」


こ……


私は本を閉じた。


「……ねぇ」


「?」


「私、翻訳機じゃないんだけど」


レンは首を傾げた。


「読めるよね?」


「読めるけど!」


思わず声が大きくなる。


レンは不思議そうな顔をした。


納得していないらしい。


納得していないのはこっちだ。


◇◇◇


最初は観光のつもりだった。


本屋がある。


そう聞いて。


レンが行きたいと言ったのだ。


一軒だけだと思っていた。


甘かった。


本屋。


古書店。


資料館。


気付けば一日中歩き回っている。


そして。


その度に。


「これ読める?」


が飛んでくる。


「レン」


「なに?」


「なんでそんなに本が好きなの?」


レンは少し考えた。


「面白いから」


私は呆れる。


レンは本当に何でも読んでいた。


歴史。


神話。


地理。


薬草。


料理。


芸術。


政治。


そして。


「魔物図鑑?」


思わず声に出る。


レンが頷いた。


「好きなの?」


「うん」


本を受け取る。


開いてみる。


『北方海域に棲息する災厄種』


そんな文字が見えた。


嫌な予感しかしない。


「……なんで?」


「すごく強いらしい」


やっぱり。


「戦いたいの?」


「うん」


当然みたいに言う。


私は本を閉じた。


この人。


やっぱりちょっとおかしい。


◇◇◇


店を出る。


夕暮れだった。


運河が夕日に染まっている。


「楽しかった?」


「うん」


レンは満足そうだった。


腕には本が抱えられている。


何冊買ったんだろう。


考えたくない。


ふと思い出す。


「あれ?」


「?」


「そういえばさ」


少し迷う。


けれど。


聞いてみた。


「レンって、私の名前、呼ばないよね」


レンが瞬きをする。


「そう?」


「そうだよ」


言ってから。


少しだけ後悔した。


なんでそんなこと聞いたんだろう。


自分でも分からない。


レンは少し考える。


それから。


「呼んでほしいの?」


心臓が跳ねた。


「ふぇっ?」


思わず変な声が出る。


レンは本気だった。


本気で聞いている顔だった。


「あ…いや、その」


私は言葉に詰まる。


違う。


違わない。


でも。


そういう話じゃなくて。


なんて言えばいいんだろう。


「べ…別に」


「そう」


そして。


何事もなかったみたいに歩き出した。


私はその背中を見る。


……終わり?


終わりなの?


なんだか負けた気がした。


「どうしたの?」


レンが振り返る。


私は慌てて首を振った。


「なんでもない!」


そう答えて。


少しだけ早足で追いかけた。


50話までお付き合いいただき、本当にありがとうございます!


気付けばもう50話…


ここまでヒカリたちの旅を見守ってくださった皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。


今回は50話記念ということで、少しでも「あまずっぱーーーーーい!」と思っていただけたら嬉しいです(笑)


もし作品を気に入っていただけましたら、ブックマークや評価をいただけると今後の励みになります。


これからもヒカリたちの旅を見守っていただけたら嬉しいです。

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