第十六話 湖上都市
透明度の高い湖。
底が見えそうなほど澄んだ水。
太陽の光を受けて。
水面がきらきらと輝いている。
その中央に。
街があった。
白を基調とした建物。
湖の上へ広がる橋。
水路を行き交う小舟。
人々を乗せた船が静かに進んでいく。
思わず息を呑んだ。
「綺麗……」
見たことのない景色だった。
「みてみて、湖の上に街がある!」
「水の神国だからね」
当たり前みたいにレンが言う。
私はもう一度街を見る。
橋の上を歩く人。
船に乗る人。
水辺に並ぶ店。
どこを見ても新鮮だった。
少しだけ。
旅行に来た気分だった。
異世界に来てから。
こんな気持ちになったのは初めてかもしれない。
「フード被って」
私は首を傾げる。
「なんで?」
レンは街へ視線を向けたまま答える。
「この前みたいなのがいたら面倒だから」
私は思わず苦笑する。
市場で絡まれたことを思い出した。
「あれは特殊な例でしょ?」
「そうかな」
レンはあまり納得していないらしい。
「人は多い方が面倒事も増えるよ」
そう言って。
自分のフードを少し深く被った。
私は言われた通りフードを被る。
少しだけ視界が狭くなる。
けれど。
不思議と安心した。
◇◇◇
街へ近付くにつれて。
船の数が増えていく。
大きな船。
小さな船。
荷物を運ぶ船。
人を乗せた船。
様々な船が水路を行き交っていた。
橋の上にも人がいる。
水辺にも人がいる。
風の神国より。
ずっと賑やかな気がした。
「迷子にならないでね」
私はレンを見る。
「それ、レンが言う?」
「?」
首を傾げる。
自覚はないらしい。
「この前も迷子になってたよね?」
「なってないよ」
「なってたよ」
「散歩してただけ」
「それを迷子って言うの」
レンは納得していない顔をしていた。
思わず笑う。
気付けば。
声を出して笑うことにも慣れていた。
湖上都市。
水の神国。
どんな出会いが待っているのだろう。
少しだけ胸が高鳴った。




