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星と呼ばれた少女  作者: さかい
風の神国
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第五話 異世界

あれから、一週間が過ぎた。


少しだけ気持ちが落ち着いて気付いたこともある。


私は今、保護されている。


そして同時に、監視もされている。


部屋と浴場。


散歩のための庭園。


行ける場所はそのくらいだった。


神殿の外へ出ることは許されていない。


空から落ちてきて、神託の石を壊した謎の少女。


私が逆の立場でも警戒する。


それでも、不満はなかった。


食事もある。


眠る場所もある。


だから今は、それで十分だった。


「ヒカリさん」


聞き慣れた声に振り返る。


庭園の入口にシュルティさんが立っていた。


淡い栗色の髪が風に揺れている。


「今日は風が気持ちいいですよ」


「はい」


私は頷いてシュルティさんの後を歩き出した。


庭園はそれほど広くない。


けれど季節の花が咲き、手入れも行き届いていた。


風が吹くたびに花々が揺れる。


その光景を眺めながら歩いていると、心が落ち着く。


「ここって、どんな世界なんですか?」


ふと思っていたことを口にした。


シュルティさんは少し考えるように空を見上げる。


「この世界には四つの国があります」


シュルティさんは指を一本立てた。


「風」


次に二本目。


「火」


三本目。


「水」


そして四本目。


「地」


「その四つの神国で世界は成り立っているのですよ」


私は瞬きをした。


「四つだけですか?」


「はい」


四つしかない世界。


そんなもの聞いたことがなかった。


「なんだかゲームみたいですね」


「げーむ?」


「あっ」


またやってしまった。


ファンタジーと同じだ。


私の知っている言葉は、時々通じない。


「えーと、遊びみたいなものです」


「なるほど」


シュルティさんは頷いた。


でも本当に不思議だった。


会話はできる。


問題なく通じる。


それなのに。


日本語という言葉は知らない。


ゲームも知らない。


以前、紙とペンを借りて自分の名前を書いたことがある。


高橋ヒカリ。


私にとって当たり前の文字。


けれど誰も読めなかった。


反対に、この世界の文字は読める。


本も読める。


なのに。


書こうとすると全く書けなかった。


形は分かる。


意味も分かる。


それなのに書けない。


考えれば考えるほど不思議だった。


風が吹く。


花びらが空へ舞い上がった。


私はそれを目で追う。


そして小さく息を吐いた。


もしかすると。


本当に。


ここは私の知っている世界ではないのかもしれない。


異世界。


アニメや漫画の中だけの話だと思っていた。


けれど。


今の私は、その中にいる。


蝶のように舞う花びらを見上げながら。


私は静かに目を閉じた。


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