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星と呼ばれた少女  作者: さかい
風の神国
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第四話 蝶々

どれくらい泣いていたのだろう。


気付けば息が苦しくなっていた。


涙も鼻水もぐしゃぐしゃで。


きっとひどい顔をしている。


それでも涙は止まらなかった。


帰りたい。


胸の奥が痛い。


苦しい。


寂しい。


怖い。


その時だった。


ふわり。


頬を風が撫でた。


私は涙で滲む視界を上げる。


目の前に小さな蝶がいた。


透き通る羽。


淡い水色の光。


蝶はひらひらと飛び回り、私の周りをゆっくりと舞う。


泣いていることも忘れて。


私はその光を見つめた。


思わず涙が止まる。


「綺麗……」


掠れた声が零れる。


シュルティさんが少しだけ微笑んだ。


「泣き止んでくださって良かったです」


蝶は一匹ではなかった。


もう一匹。


さらにもう一匹。


部屋の中を小さな光が舞う。


まるで夢の中みたいだった。


蝶は風に乗りながら円を描いた。


「神力です。わたくしは風の属性が一番ですが、水にも少しだけ適性があるんですよ」


蝶の羽がきらりと光る。


だから水色なのだろうか。


そんなことを考える余裕が少しだけ戻っていた。


「ファンタジー……」


思わず呟く。


「ふぁんたじー?」


シュルティさんが首を傾げた。


「えっと……物語の中みたいってことです」


「なるほど」


シュルティさんは小さく笑う。


「この国では当たり前のことなのですが」


蝶が私の指先に止まった。


温かくはない。


でも。


冷たくもなかった。


「どうしてこんなことができるんですか」


シュルティさんは蝶を見つめる。


「マナを通じて星から力を引き出すんですよ」


「星から……?」


私は窓の外を見る。


昼間の空に星は見えない。


シュルティさんは当たり前のように頷いた。


「ええ」


私には意味が分からなかった。


でも。


一つだけ分かることがある。


ここは日本じゃない。


私の知っている世界じゃない。


認めたくなかった。


でも。


もう気付いていた。


蝶がふわりと飛び立つ。


その姿を見つめながら。


私はもう一度だけ静かに涙を拭った。


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