第九話 市場(前)
市場は賑やかだった。
行き交う人々。
並ぶ屋台。
見たことのない食べ物や布。
思わず辺りを見回してしまう。
風の神国とは違う。
神族だけじゃない。
色々な人がいた。
私は足を止める。
綺麗な髪飾りだった。
透き通る青い石。
まるで地球みたい……
少しだけ見惚れる。
「欲しいの?」
私は慌てて首を横に振る。
可愛いけど。
装飾品まで買ってもらうのはわがままに思える。
レンは少しだけ髪飾りを見る。
それから。
「ふーん」
そう言って。
別の屋台へ視線を向けた。
自由人である。
◇◇◇
果物。
焼き菓子。
色鮮やかな布。
どれも珍しい。
風の神国にも市場はあった。
けれど。
雰囲気が違う。
主都から離れた。
各国の境界に近いからだろうか。
文化が混じっているからか。
賑やかで。
自由だった。
ふと。
視線を感じる。
振り向く。
知らない人と目が合った。
慌てて逸らされる。
一人ではない。
何人も。
こちらを見ている。
黒髪だからだろうか。
少しだけ居心地が悪い。
◇◇◇
立派な刺繍が施された布が目に入る。
綺麗だった。
思わず近付く。
しばらく見つめる。
それから。
何となく振り返った。
レンがいない。
私は固まった。
もう一度振り返る。
いない。
本当にいない。
肩の上のピンクちゃんを見る。
「ぴぃ?」
お前も気付いてなかったのか。
私は大きくため息を吐いた。
探さなければ。
そう思い歩き出す。
その時だった。
「迷ったのかい?」
男が声を掛けてきた。




