第七話 鳥様
「……見つからないのか?」
静かな声だった。
けれど。
部屋の空気は重い。
ヴァスキは頭を下げた。
「申し訳ございません」
「現在、手掛かりは何も」
ヴェルは目を閉じる。
責めているわけではない。
それでも。
焦りだけが募っていく。
「冒険者や旅人たちにも伝えてくれ」
「他の国にもだ」
「少しでも情報が欲しい」
「承知しました」
ヴァスキは深く頭を下げた。
部屋に沈黙が落ちる。
やがて。
ヴェルは小さく息を吐いた。
「……神託、か」
その言葉に。
ヴァスキの肩が僅かに揺れる。
神託。
星の欠片。
神々の時代が終わる頃に現れる存在。
それが真実なら。
ヒカリがいない方が良いのかもしれない。
けれど。
ヴェルは静かに目を伏せた。
「ただ」
脳裏に浮かぶのは。
よく笑う少女だった。
焼き菓子を食べて。
図書館で本を読んで。
誰かのために泣ける。
優しい少女。
「どうか酷い目に遭っていないでおくれ……」
誰に聞かせるでもない。
小さな呟きだった。
◇◇◇
一方その頃。
「ぴぃ!」
桃色の小鳥が勢いよく飛び立った。
レンが頷く。
どうやら分かるらしい。
レンは迷いなく進む。
私は後を追った。
歩く。
……歩く。
しばらくして。
レンが立ち止まった。
嫌な予感がした。
レンは辺りを見回す。
右を見る。
左を見る。
空を見る。
そして。
首を傾げた。
「あれ?」
嫌な予感が当たった。
レンはもう一度周囲を見回す。
「?」
私は固まる。
まさかとは思うけど。
レンは真剣な顔で呟いた。
「どっちかな」
私は空を見上げた。
助けてほしい。
色々な意味で。
「ぴぃ!」
桃色の小鳥が鳴く。
そして。
ある方向へ飛んでいった。
レンは頷く。
「あっちだって」
当然のように歩き出す。
私は鳥を見る。
レンを見る。
もう一度鳥を見る。
本当に。
鳥任せだった。
◇◇◇
夕方。
街道脇で休憩することになった。
レンは木にもたれ掛かっている。
桃色の小鳥は私の膝の上。
「ぴぃ」
得意そうだった。
今日一番仕事をしたのはこの子だ。
私はそっと頭を撫でる。
「ぴぃ♪」
嬉しそうな声。
レンがこちらを見た。
「そいつ、僕以外に懐かないのにな……」
私は小鳥を見る。
桃色の羽。
丸い瞳。
小さな体。
どう見ても普通の鳥だった。
……見たことのない鳥だけど。
「ぴぃ!」
胸を張るように鳴く。
ユウリさん。
貴方は正しかった。
道は。
鳥様に任せるべきだった。
40話までお付き合いいただきありがとうございます!
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