第六話 旅立ち
出発までの二日間はあっという間だった。
まず。
服を買った。
女将さんと一緒に。
柔らかな生成り色の生地。
胸元や裾には赤やオレンジの糸で模様が縫い込まれている。
ゆったりとしたスカート風のズボン。
腰には帯のような布を結ぶらしい。
そして。
フード付きのケープ。
「似合ってるじゃない」
女将さんが満足そうに頷く。
私は少しだけ落ち着かなかった。
鏡を見る。
そこには。
知らない服を着た自分がいた。
新しい場所へ向かうんだと思った。
◇◇◇
出発の日。
朝は少し冷え込んでいた。
宿の前には女将さんとユウリさんがいた。
レンもいる。
足元には桃色の小鳥。
「気を付けるのよ」
女将さんが包みを差し出す。
食べ物だろうか。
私は思わず頭を下げた。
「主都までは街道沿いです」
ユウリさんが穏やかに言う。
「道に迷うことはないと思いますが……」
そこで言葉を切る。
視線はレンへ向いていた。
「レン様」
「うん」
「道は鳥様に任せてください」
「うん」
ユウリさんが遠い目をした。
私は何となく不安になる。
(鳥様……? ピンクちゃんのこと?)
なぜ、鳥に道を任せる……?
◇◇◇
そして。
いよいよ出発という時だった。
私はレンを見る。
それから。
ユウリさんを見る。
何度か繰り返す。
「ああ」
レンが頷いた。
伝わったらしい。
「ユウリは来ないよ」
私は固まった。
来ない……?
来ないの?
本当に?
という意味だ。
「まだ治ってないからね」
レンは当然のように言った。
「弱いし」
ユウリさんが苦笑する。
女将さんも苦笑する。
「それに」
レンは続ける。
「ここで大切なもの見つけたみたいだし」
今度は。
ユウリさんが固まった。
女将さんも固まる。
二人の赤くなった顔を見て。
私は何となく察した。
たぶん。
リア充め。
「じゃあ行こう」
レンは歩き出した。
迷いのない足取りだった。
私は一度だけ振り返る。
女将さんが手を振っている。
ユウリさんも笑っていた。
私は深く頭を下げる。
そして。
前を向いた。
レン。
私。
ピンクちゃん。
二人と一羽。
本当にそれだけだった。
……大丈夫かな。
色々な意味で。
少しだけ不安になりながら。
私は歩き始めた。




